皮肉がよく効いたコメディ映画「アメリカン・フィクション」

このポスタービジュアルが秀逸です

 

 


純文学の作家で、

LAの大学でアメリカ南部文学のクラスを持つ黒人のモンク

いつも不機嫌そう

 

20世紀中頃の短編小説“ARTIFICIAL NIGGER”を題材に講義を始めると、“NIGGER"は不愉快で聞きたくない、

などと馬鹿なことを言う白人学生にうんざりさせられ、

 

「作品について論じろ」と怒鳴ったモンクは、

大学を“休職“になり、やむなく実家のあるボストンに帰るはめに

 

 

 

出席したボストンのブックフェアは閑古鳥で、

モンクの新作は出版を断られた

 

 

隣のブックフェアでは、

評判の黒人女流作家シンタラ・ゴールデンが、

 

自著から底辺黒人のリアルっぽい会話部分を朗読し、

拍手喝采を浴びていた

 

 

疎遠だった認知症の母の面倒をみていた姉が急死する

母の認知症は進行している

 

 

自棄になったモンクは、シンタラの書くような、

底辺の黒人たち、ダメ親父、ラッパー、コカイン、最後に警官に殺される

しかしよく売れそうなステレオタイプの黒人の本、

 

底辺黒人のリアルなドラマを読み、共感して、

差別を否定する、いい白人っぽい気になれる、

いわば白人の免罪符のような本、

 

を偽名で書き上げ、出版社に送る

 

 

こんなゴミみたいな本が欲しいのか!

出版界を皮肉るつもりで書いたのに、

これが出版社に大受けで、映画化の話まで

数百万ドルを手に出来る

 

こんな本は出したくない、

でも、母を24時間介護のいい施設に入れたい

 

背に腹は変えられず、

“指名手配中の黒人、スタッグ・R・リー”が書いた、

"FUCK"は出版され、大ベストセラーになってしまう

 

「こんな世間に迎合した本が売れるとは」

怒りを募らせたモンクは・・・

 

 

というお話に、

更に、バラバラになってしまった実家家族の再生の話も巧みに織り込まれた本作は、

“FUCK"の映画化とは別に、ここまでの騒動がまた別の映画の題材だった、とオチがついた、

なかなかに手が込んだ作りです

 

 

とても面白い映画です

繰り返し観たくなります

ということで、1日のうちに2回観ました

ただ、

2回目は冒頭から再生をとめて、色々ネットで調べて、

それでも私には全然理解できていないんだろうなあ、

としみじみ思うことになります

 

 

文学賞の審査員に黒人のモンクを選んで、多様性に配慮したつもりの白人、

結局は「多数決」という数の暴力で、白人の意思が通ってしまう現実、

白人にはそれが民主主義に見えている、という悲劇

 

「アメリカン・フィクション」は第96回アカデミー賞で作品賞と主演男優賞、助演男優賞、脚色賞、作曲賞の5部門にノミネートされていますが、

アカデミー協会、いやハリウッドそのものまでも皮肉っているのでは、と思わされる作品でした

 

マーベルのあの黒人が大活躍する作品にも、

怒ってるよね

 

 

 

それにしても、あのラストのハンドサイン、何だった?