今から半世紀近く前、たった一度だけ、

父親から買い与えられた3枚のクラシックレコードの1枚

バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル

「展覧会の絵(ラベル編曲)」「ボレロ」のカップリング

 

 

 

父親はクラシックファンなんかじゃなくて、

田舎のレコード屋さんの20代の娘さんが選んでくれました

 

他には、ボスコフスキー指揮ウィーン・フィルのウィンナ・ワルツ集と、

チャイコフスキーのピアノ協奏曲、ピアノはアメリカのクラシック界のヒーローだったクライバーン(第1回チャイコフスキーコンクール優勝者)

 

 

今思えば、クラシックなんか聴いたことのない人間に、

当時の私は高中正義なんかが好きだったんですけど、

ナイスなレコード選択をして頂いたもんです

 

 

 

 

 

 

 

 

音楽界の伝説的存在であるレナード・バーンスタインとフェリシア・モンテアレグレ・コーン・バーンスタインがともに歩んだ生涯を振り返る。紆余(うよ)曲折に満ちた、大胆かつ情熱的な愛の物語。

 

ブラッドリー・クーパーが監督・共同脚本・製作・主演を務め、キャリー・マリガンと共演した、心に響くラブストーリー。


 

 

 

スター指揮者で作曲家で教育者でもあった、

アメリカのクラシック界最強ヒーローとその妻を描いた本作は、

 

 

カラー、ワイド画面で晩年のレナード・バーンスタインが亡き妻を語る(テレビ番組の収録?)シーンから始まります

 

 

そして一転、モノクロ、スタンダード画面が続きます

 

1943年、

25歳のユダヤ人青年レナード(レニー)は電話で起こされ、

(彼のベッドには裸のBFが)

ブルーノ・ワルターの代役で指揮者を務め大成功を収め、

彼の音楽家人生は走り始めました

 

 

 

とあるパーティーで、

レニーは妹のシャーリーから舞台女優の卵のフェリシアを紹介されます

 

カッコ良くて、明るくて、誰からも好かれる、

才能に満ち溢れた若手音楽家レナードと、

チリ出身の美人女優フェリシアのカップル

 

幸せな未来しか見えないはずでした

 

 

しかし、無邪気に元彼にフェリシアを紹介し、

一方で音楽とは無縁で息子に冷淡な父を憎むレニー

 

何かヤバそうな夫を選んだフェリシアです

 

 

互いに妻も子もある一見豊かな人生を選択したはずなのに、

かつてのBFと悲しそうに見つめ合う中年に差し掛かったレニー

 

そんな夫を受け入れ、支えようと心を砕くフェリシア

 

そんな兄と承知で結婚したのでしょ、と素っ気ないシャーリー

 

 

本作では触れていませんが、

バーンスタイン兄妹の近親相姦的関係について、

何か読んだ覚えがあります

 

どこまでが事実かは分かりませんが

 

 

 

バーンスタインがバイセクシュアルだったこと、

年配になっても青年好きだったことも、

何となく知っていました

 

 

奥さんのフェリシアについては、

私は何も、名前さえも知りませんでした

 

本作では、結婚してからの女優としてのキャリアについてはほとんど描かれていないフェリシア

 

男癖の悪い(しかも隠そうともしない)夫に苛立ちを覚えながらも、何とか家族を守ろうとする健気な良妻賢母として頑張っていたようです

 

 

1970年代、

フェリシアの我慢が限界に達しそうな頃、

子供達が成長し手を離れ出した頃、

マーラーの5番アダージェットが流れて、

モノクロ画面はカラーになります

 

 

バーンスタインの長女もタングルウッドの音楽祭に行ける

無邪気に喜んでいた彼女は、そこで聞くゴシップ話から、

大好きな父の違う側面を知ることに

 

子供達の前ではその性癖(?)は隠せ、とフェリシアは忠告しますゴシップ話は、レニーの才能に嫉妬した人間が流したもの、と苦しい言い訳を長女にするレニー

 

納得、してないよね

 

 

若い音楽家で新しいレニーのBFを見るフェリシアの目

そこに流れる「ウエストサイド物語」のあの音楽

怖いです

 

 

家族と過ごす別荘にBFも呼ぶ無分別なレニー

そこで完成したミサ曲の初演

劇場のバルコニー席で隣にフェリシアがいるのに、

BFとしっかり手を握り合うレニー

 

「自分を否定する人を受け入れて愛する」ことに疲れたフェリシアはレニーに別れを告げました

 

 

自由を宣言し、パーティーと麻薬に耽溺するレニー

一方で、妻に会いたいと長女に愚痴るレニー

 

本格的に女優業に復帰し張り切っている筈のフェリシア

フェリシアは素敵な男性とデートしようとするも、

彼もゲイでした

 

結局は、二人共に、妻を夫を求めていました

 

ここら辺になると共依存だったのか、となりますね

 

 

大聖堂でのコンサート

バーンスタインの指揮するマーラーの交響曲2番「復活」のフィナーレ

 

 

ステージ横に佇むフェリシア

 

戻って来てくれたフェリシアに感謝の熱烈なキスと抱擁のレニー

 

 

マーラーってあまり好きでない私ですが、ここは泣きました

 

このシーンの元ネタと思しき演奏です

 

 

 

しかし、次のシーン

病院の診察台、フェリシアの診断結果を聞く二人

 

フェリシアは乳癌と診断されます

 

別荘での療養生活

抗がん剤治療で脱毛し苦痛に耐えるフェリシア

支える家族

 

フェリシアは56歳で1978年に亡くなってしまいます

 

 

 

家族はレニーの運転する車で別荘から出て行きます

 

 

そして時は移り、ワイド画面に

 

タングルウッドで汗だくの若手指揮者に指導するレニーは既に白髪です

夜のクラブ?

件の若手指揮者と踊り大騒ぎする、

そして天に向かって両手をあげて恍惚の表情のレニー

 

寂しそうです

 

 

シーンは最初に戻り、

レナード・バーンスタインは、

妻の言葉を噛み締めるようにカメラに向かって語ります

 

 

 

 

題名、特に副題に騙されました

 

「心に響くラブストーリー」は大嘘です

 

 

これは相当にキツい家族ドラマでした

 

成程、アカデミー賞の声も掛かるわけです

 

 

お勧めしますが、

結構気持ちを持っていかれます

 

ご注意下さい

 

 

 

常にタバコを手放さないバーンスタインは、

1990年、肺癌で亡くなりました

享年72歳

ちょっと早かったですね