あみ子はちょっと風変わりな女の子。

優しいお父さん、いっしょに遊んでくれるお兄ちゃん、

書道教室の先生でお腹には赤ちゃんがいるお母さん、

憧れの同級生のり君、

たくさんの人に見守られながら元気いっぱいに過ごしていた。

 

だが、彼女のあまりに純粋無垢な行動は、周囲の人たちを否応なく変えていくことになる。

誕生日にもらった電池切れのトランシーバーに話しかけるあみ子。

「応答せよ、応答せよ。こちらあみ子」―――。

奇妙で滑稽で、でもどこか愛おしい人間たちのありようが生き生きと描かれていく。

 

 

 

 

 

公式サイトの"あらすじ"には、いい風に書いてあります

 

「こちらあみ子」は、

明示はされていませんが“発達障害”と思しきあみ子の、

「純粋無垢な行動」が原因で、

「周囲の人たちを否応なく変え」た結果、

あみ子が虐待され、いじめられ、

最後には親から捨てられる、

彼女の小学校高学年から中学1年までのお話です

 

もしくは、壊れていくあみ子一家の話です

 

そして、それでも「大丈夫じゃ」と笑ってしまうあみ子を、

観客がどう見るのか、問われる作品のようです

 

 

 

 

 

広島県の瀬戸内海に面した町に住むあみ子一家

親子初対面の様子、お母さんは後妻です

 

仲良し兄妹

兄孝太は妹のヤングケアラーと言えるかもしれせん

母が壊れたその後、兄は不良に走り家出しました

 

 

赤い帽子の男の子はのり君

のり君は母に言われて変な子どものあみ子の相手をします

あみ子はのり君が大好きです

 

 

 

一瞬だけ、あみ子に優しい表情を見せたお母さん

 

自宅で書道教室を営む母

あみ子の扱いに手を焼いた結果なのか、

その態度は冷淡を通り越し、時に敵意さえ見せ、

明らかにワザと家族の前でもあみ子に意地悪をします


 

そんな母も、死産直後はあみ子に優しくなれるのですが、

しかし、あみ子が庭に赤ちゃんのお墓を作ってあげたことから、

心が壊れ寝たきりのようになってしまいます

 

 

 

よく言えば、優しい父親

何もかも諦めているのか

 

あみ子の誕生日

プレゼントの"写るんです"で家族写真を撮ろうとするあみ子

それをあみ子のせいにして邪魔する母

母の手料理を拒否して、プレゼントのお菓子を食べるあみ子

それらの小さな、だけど重要ないざこざをスルーして、

ただご飯を美味い美味いと食べるだけの父

 

息子がグレて煙草を吸っても、火事に気をつけてと言う

息子が家出し退学になっても父が何か対応した様子もありません

 

結局、父は妻を取りました

嘘をついて転校させたあみ子を祖母の家に置き去りにして、

自宅に、妻のもとに帰ってしまいます

 

 

 

あみ子は学校では自由気ままに行動していました

そんなあみ子も母が元気な頃、兄が家にいた頃は、

二人の言うことをそれなりに聞いていました

時に衝突はあっても、母には彼女なりに気を遣ってもいました

 

 

母が病み兄が家出し、あみ子が中学生になった頃、

もうあみ子の面倒をみる人はいなくなりました

仕事と妻の面倒をみることで手一杯の疲れた父は、

惣菜を買ってきて一緒にあみ子と夕ご飯を食べるだけ

 

学校のトイレで小突かれ、上履きは捨てられた

風呂にも入らず、どこでも裸足でペタペタ歩くあみ子

 

 

あみ子はベランダからいつも聞こえる物音に、

オバケがいる、と父に訴えます

死産した赤ちゃんの霊だ、と

父にはあみ子の相手をする余裕はありません

 

 

だからあみ子は、

「オバケなんてないさ」と元気よく歌うしかありません

すると、オバケのような歴代の校長先生や音楽室の大作曲家、

"トイレの花子さん"と友だちになりました

 

 

音に敏感なあみ子を助けに来てくれたのは家出した兄

トランシーバーで必死に怖いと呼びかけるあみ子の前に、

タイミングよく現れ、オバケの音の原因、

ベランダに巣食う鳩を追い払い、巣を投げ捨てて、

またバイクに乗って家を出て行きました

 

そういえば、時々家の近所でバイクの音が聞こえていました

 

 

 

あみ子は、

小学校の時から好きだった“のり君”に鼻が折れる程殴られました

あみ子の相手をしていたのり君も我慢の限界でした

血だらけでも無表情のあみ子は、誰にやられたかも話しません

 

 

母の習字教室に来ていた坊主頭

あみ子を気にかけ、ちょっかいを出していた男の子

しかし、あみ子には顔も覚えてもらっていません

 

あみ子の傷も癒え、転校が決まり学校を去る最後の日、

坊主頭にあみ子は自分の気持ち悪いところを教えて、と頼みます

のり君に殴られてあみ子は深く傷ついていたのです

しかし、坊主頭は「それはワシの秘密じゃ」と言って去って行き

ました

彼の思いやりなのでしょう

 

 

 

あみ子は父親に捨てられました

 

父親に捨てられたその翌早朝、

パジャマ姿で瀬戸内海の浜辺に立つあみ子

 

膝まで海に浸かったあみ子の前に、

小舟に乗ったあのオバケたちが現れ、おいでおいでをします

 

しかし、あみ子はサヨナラという風に手を振り続け、

オバケたちもサヨナラすると沖に消えて行きます

 

画面の外から大人の声が

「まだ冷たいじゃろう?」

あみ子は振り返るとニカッと笑い答えます

「大丈夫じゃ」

 

 

 

エンドクレジットでも、

まだあみ子のトランシーバーに呼びかける声がします

 

母に意地悪された"写るんです"は、

断固として捨てたあみ子ですが、

トランシーバーを一つだけ祖母の家に持ってきました

片われは行方不明です

 

 

「こちらあみ子、こちらあみ子」

「応答せよ」

「お〜い、もしも〜し」

 

オバケの音を退治してくれた兄に呼びかけているのでしょうか

 

あちらの世界には渡らなかったあみ子の、

「大丈夫じゃ」とは、

兄がどこかで見ていてくれる、という思いからなのでしょうか

 

 

こちらの世界は本当に「大丈夫」なのか

あみ子の呼びかけは本当に誰かに届くのでしょうか?

 

あみ子の笑顔が消えなければいいのですが