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第一次世界大戦(1914~1918)中の欧州。

祖国ドイツのために戦おうと同級生たちと1917年の西部戦線へ赴いた17歳のパウル。

だがその高揚感と志は、

最前線の凄惨な現実を前に打ち砕かれることに。

 

 

原作を読んだのは、中高生ぐらいだったでしょうか?

父親の本棚から借りたようです

 

反戦文学を読んだつもりでしたが、巻末の解説に「反戦」ではないとあって、「へっ?」と思ったことを覚えております

 

今思えば、

本書の発売が1955年、太平洋戦争敗戦後10年目

1953年朝鮮戦争終結、1954年自衛隊法施行、そんな時代

その内容は、当時の解説者の意識では「反戦」というには生温く感じたのでしょうか?

もちろん私はそんな時代の空気感など知りませんが

 

因みに、

1898年生まれの作者レマルクの体験をもとに書かれ、

1928年に発表された本書は、

ナチスからの迫害で焚書され、

レマルクは最終的にはドイツ国籍を剥奪され、

米国への亡命を余儀なくされました

 

戦争政策を遂行しようとするヒトラーには、

まことに許しがたい反戦、反独小説だったのでしょう

 

 

映画は、

こう着状態の西部戦線(フランス東部・ブルゴーニュで互いに近距離で塹壕を掘って睨み合う)が舞台

 

無責任に教師に煽られて志願させられ、

戦死者から剥ぎ取り再利用した軍服を、

そうとは知らず支給されたドイツ帝国の高校生の志願兵たち

意気揚々と出兵した彼らが知る戦争の現実

 

兵士は消耗品

上官の命令で、塹壕を飛び出し、突撃し、呆気なく死んでいく

撃たれ、刺され、火炎放射器に焼かれ、戦車に踏み潰され、

毒ガスがまかれた後の死体

 

認識票と軍服を回収し、

死体はそこいらに掘った穴にまとめて埋葬されます

棺の上に無造作に撒かれる石灰

 

 

高校生仲良し4人組や、

面倒見の良かった先輩古参兵も、

最終的には皆死んでしまいました

 

 

主人公のパウルは、

母親の干渉から逃げるためサインを偽造して志願

戦場で18ヶ月過ごした彼の顔貌は激変しています

 

美しい自然と惨たらしい死体

泥だらけの塹壕

照明弾が映し出す幻想的な影

虚無そのもののようなパウル

 

敗色は濃厚なのに、職業軍人のメンツのために長引く戦争

無駄に死んでいく兵士

 

将軍は後方の安全な館で優雅に食事を摂りワイングラスを傾け、

停戦は社会民主主義者=売国奴の仕業と苛立つ

 

ドイツ皇帝が退位しフランスとの停戦合意の調印後に、

あと15分で戦争が終わるタイミングで、

将軍は全軍に突撃命令を出します

 

パウルはフランス軍の塹壕に飛び込み、銃剣で刺殺されました

そして停戦の合図

 

パウルが面倒をみた新兵が死体から認識票を回収してまわります

 

パウルの死体を発見した新兵、悲しそうに認識票を回収し、

パウルの手に巻かれた同級生フランツの遺品、

フランス人の女の子からもらったスカーフ、

そのスカーフを新兵はそっと自分の首に巻きました

 

 

 

作品賞、国際長編映画賞など9部門でアカデミー賞にノミネートされた本作

同じく作品賞にノミネートされた「トップガン マーベリック」とは対極にあるような作品です

 

3月12日、アカデミー会員はどんな評価を下すのでしょうか