11月に公開されたNetflixオリジナル映画です

 

時は1862年。

過去の悲しみにとらわれた英国人看護師が、ある調査でアイルランドの人里離れた村へ。

そこには、一切食事をしていないはずなのに奇跡的に生き続けている少女がいた。

 

 

 

大飢饉後のアイルランドの片田舎の出来事

アナは、9歳の時から実の兄と、妹として妻として愛し合っていました

それは神聖でない結婚です

 

その兄が病で亡くなると、

母親ロザリーンはアナのせいで兄は死んだと言い出します

死んだ後、永遠に地獄の業火に焼かれる

ロザリーンは地獄の息子を救うため、

キリスト教の教えに従って、

密かにアナに断食を、緩やかな死を強いたのです

 

 

11歳の誕生日から4ヶ月間食事を摂っていない、というアナ

虚弱な感じではありますが、健康そうです

アナは奇跡の娘として噂が広まり、

彼女の貧しい家には、

生ける聖人に会おうと、訪問客が連日のようにやってくるようになりました

 

 

英国人の看護師のエリザベス・ライトは心に闇を抱えています

生後3週間と2日で子供を亡くし、夫は程なく蒸発

就寝前、小さな小さな赤ちゃんの靴を眺め、アヘンチンキをひと匙飲み、指先を針で刺してその指をしゃぶりながら眠りに落ちるのです

 

 

アナの住む村では、

奇跡を信じたい聖職者や未知の科学的発見を夢見る医者などで構成された委員会が、

クリミア戦争に従軍したプロの看護師エリザベスをロンドンから呼び寄せ、

修道女と共に二人で14日間アナを交代で観察するよう命じます

 

エリザベスに部屋を提供する宿屋の主人は、委員会に陪席しています

彼だけが、茶番を暴け、とエリザベスに指示します

 

 

アナとエリザベスは次第に打ち解けあっていきます

お互いの呼び名を付けたり散歩をしたり

 

一方で、エリザベスは厳格に観察し看護記録もきちんと取ります

アナと全ての人との接触を断ち、家族さえも遠ざけました

すると、アナはどんどん衰弱していきます

歯が抜け、とうとう車椅子が必要になるほど

 

エリザベスは、

この村の出身で、身内を全て飢饉で亡くしている新聞記者のウィルと親しくなります

何とかアナを助けたいエリザベスは、

アナとウィルを引き合わせたりもしました

 

 

アナに食事を摂らせたい、必死にアナを説得するエリザベス

彼女は遂にアナと兄の関係や断食の秘密を聞き出します

 

アナは兄を救うために死ぬつもりでした

 

 

エリザベスは、委員会に訴えます

朝晩の祈りの時、母親が口移しでアナにこっそり食べ物を与えていた、観察の必要はない、少女を助けるべき

しかし、もう一人の観察者、修道女は忖度するようにそんな様子は見ていない、と言い、

アナは「天からマナ」を与えられただけ、と言います

アナに「よく言った」と満足げな委員会

 

 

自分達の土地に聖人の出現を望んでいるらしい委員会は、

エリザベスの言葉を拒絶、

引き続き、観察のみを続けるよう命令し、

明晩、アナのために荘厳ミサを執り行うとしました

 

どうやら見殺しにするつもりのようです

 

 

委員会の命令に「死ぬまで看護します」と答えたエリザベスですが、彼女は密かに決意します

誘拐になると渋るウィルを説得し、

アイルランドの首都ダブリンにアナを送り出す手筈を整えます

 

 

翌日、

身動き出来ず朦朧とするアナを残し、家族はミサに出かけます

エリザベスは、アナに、

アナとして死んだ後、目が覚めたら9歳のナンとして生きることを約束させ、家からおぶって連れ出します

 

アナのお気に入り、奇跡の泉でナンは意識を取り戻しミルクに浸したパンの欠片を口にします

 

一人家に戻ったエリザベスはアナの看取りの看護記録を書くと、

アヘンチンキの瓶を踏み壊し、赤ちゃんの靴もろとも、

アナの家に放火しました

 

 

翌日、火傷だらけでボロボロのエリザベスは、

呆然とする委員会の前に偽りの看取りの看護記録を差し出し、

アナを蘇生しようとして誤って火事を出した、と報告します

 

深夜の大雨で死体も見つからない、という火事

エリザベスを咎めようとした委員会は、

自分達の不作為の責任に気付いたようです

 

 

宿屋の妻は、男どもがアナを殺したと憤っています

ナンが救出される様子を密かに見ていた修道女は、

火傷の手当てをしながらこっそり尋ねます

 

「新しい世界に行けた?行けると約束して」

「約束する」エリザベスは小さく何度も頷きます

 

 

ダブリンで合流したエリザベスとナン、そしてウィル

 

3人はチェシャーという新しい家族になって、

オーストラリアへ向かう船に乗り込みます

 

 

 

 

この映画は大きなスタジオのセットの外観から始まり、

この物語を信じて欲しい、というナレーションが入ります

 

映画のラストはまたセットで、このナレーションは、

キティという役を演じた女優の声と分かりますが、

キティは劇中もカメラを見据えて心の中で語りかけてきます

不作為による子供の死が英国中で起きている、

と報じる新聞を、聞く者もいない畑で朗読するのもキティです

 

まるで、この19世紀の、2百年近くも前の事件が、

過去の物語ではない、と言っているかのように、

私には思えます

 

 

特に、行政の不作為による宗教2世の生々しい被害の話が、今、聞こえているからかもしれませんが

 

 

 

カルト的なものだけではなく、

世界には子供の労働、兵士、などの問題もあります

 

 

ハッピーエンド的なラストですが、

旅立つ3人の硬い表情が妙に気になる映画ではありました