大阪の下町で平穏に暮らす原田智と中学生の娘・楓。

「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」。

いつもの冗談だと思い、相手にしない楓。

 

しかし、その翌朝、智は煙のように姿を消す。
 

ひとり残された楓は孤独と不安を押し殺し、父をさがし始めるが、警察でも「大人の失踪は結末が決まっている」と相手にもされない。

それでも必死に手掛かりを求めていくと、日雇い現場に父の名前があることを知る。

「お父ちゃん!」だが、その声に振り向いたのはまったく知らない若い男だった。


失意に打ちひしがれる中、無造作に貼られた「連続殺人犯」の指名手配チラシを見る楓。

そこには日雇い現場で振り向いた若い男の顔写真があった――。

 

 

スローモーションで映し出される、

トンカチを振り回す、

まるで殺陣か型のような練習をする男の姿で始まる本作

 

何の前情報もなく、WOWOWで初めて観ました

てっきり、

気の強い女子中学生vs連続殺人犯=無理のある展開ですが、

のような話かと思いましたら、全然違いました

 

 

原田智

の妻公子はALSを発症

ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、

段々身体が動かせなくなり死に至る辛い難病です

 

死にたい、と繰り返す公子

公子の自殺未遂をじっと眺めていた智

 

そんな智の気持ちを見透かしたように声をかけてきた介護施設の職員、山内照巳

山内は智の経営する卓球場で自殺に見せかけて公子を殺し、

その後になって、「これは有料コンテンツでしょう」と嘯き、

手数料を要求します

山内は、人助けのふりをした快楽殺人者でした

 

更に、山内は智を嘱託殺人=殺人ビジネスに誘い込みます

智は自殺サイトで対象者にアプローチしていきました

 

 

山内の杜撰な死体処理から連続殺人事件が発覚

彼は報奨金300万円の指名手配犯となります

 

山内が捕まれば自分も共犯者になってしまう

 

智は山内を殺し、報奨金も手にしよう、と一計を案じ、

自ら姿を隠しました

 

 

しかし、父を探す中学生の楓、

万引きした父をスーパーに引き取りに行くような、

どちらが保護者か分からないような楓の行動力が、

事件の真相を暴いていきます

 

 

 

智は計画通り山内を金槌で殴り殺し、自分は刺殺されかけた被害者を装い、いくばくかの金も手に入れたようです

 

しかし、また金が欲しくなり、

自殺サイトのアカウントを使った智

 

父が山内に奪われた(実は手渡した)スマホを山内から取り返していた楓は、

智に疑いの目を向けていました

楓は、父のアカウントに自殺志願者を装い返信します

 

 

ラスト、卓球場で長いラリーをしながら父を追い詰める楓

パトカーのサイレンが聞こえます

「迎えに来たで」と楓が言います

 

 

 

謎の残るラストです

父は本当に警察に捕まったのか?

 

 

父が行方不明になり、

児童養護施設から迎えに来たシスターに唾を吐きかけた楓です

人殺しの父でもいないよりはマシ、と考えても不思議ではありません

そもそも楓は、父が殺人を犯したことは知りません

自殺サイトの運営はしていても、山内にやらされていたこと、

と、あえて思い込むことも可能ですね

 

それぐらいの打算的な行動も出来そうな、

ある意味頭のいい娘、楓です

 

 

 

 

本作で描かれる山内の連続殺人事件は、

いろいろな現実の事件を思い起こさせました

 

やまゆり園事件

 

座間の嘱託殺人を装った快楽殺人事件

 

130万円の報酬を受け取った医師によるALS患者嘱託殺人事件

 

 

その他、コスパ的発想で、透析を否定する考え方

公立福生病院のように透析が必要な患者が、透析を辞退する方向に医師に誘導された例もありますね

 

 

私は、安楽死、尊厳死論に懐疑的です

安易な安楽死を肯定する考え方、そのすぐ近くに上記のような事件がいるような気がします

 

 

尊厳死が合法化されたオランダでは、

年々尊厳死が増加する一方で、緩和ケアが崩壊

昏睡、認知症、本人の意思が確認出来ない安楽死も増えているそうです

 

同調圧力の強い日本で安楽死が合法化されたら

その先を想像して、思わずゾッとしてしまった

 

「さがす」はそんな映画でした