太平洋岸の孤島を訪れたカップル(アニャ・テイラー=ジョイ、ニコラス・ホルト)。

お目当ては、なかなか予約の取れない有名シェフ(レイフ・ファインズ)が振る舞う、極上のメニューの数々。 

「ちょっと感動しちゃって」と、目にも舌にも麗しい、料理の数々に涙するカップルの男性に対し、女性が感じたふとした違和感をきっかけにレストランは徐々に不穏な雰囲気に。 

なんと、一つ一つのメニューには想定外の“サプライズ”が添えられていた… 。

果たして、レストラン・ホーソンには、そして極上のコースメニューにはどんな秘密が隠されているのか?

そしてミステリアスな超有名シェフの正体とは…?

 

 

 

ガールフレンドに振られた美食オタクのタイラーに、

金で雇われてついてきた売春婦のマーゴ

美食に興味はありません

そして、「こいつ殺しちゃえ名簿」に無い人物なのに、

巻き添えで殺される運命に

しかし、機転を利かせて・・・

 

 

 

貧困と暴力の家庭に育ちながら超一流のシェフに成り上がった、

ジュリアン・スローヴィク

自分の一食十数万円もするような料理が、

セレブたちの虚栄心のために消費されていることに、

深い絶望感に陥っています

 

絶望しきったスローヴィクと弟子たちやスタッフ、こちら側の人間は、

あちら側の人間、予め身上調査をした上で選んだ客/殺すに足るセレブーその理由は理不尽過ぎるものもありますーもろとも、

全員自殺する準備をしていました

 

 

殺る、なら、さっさと毒でも盛ればいいものを、

まあそれでは映画になりませんから、

スローヴィクは客を(私たち観客も)ジワジワいたぶります

 

スローヴィクは一皿ごとに大きく手を打ち鳴らし、不快感を客に与え、メニューの精神性を語ります

客の背後は海

 

 

給仕長は慇懃無礼な態度です

客として来たレストランのオーナーの部下たちを、

サラッとディスる給仕長のエルサ

 

 

二皿目はパンのないパン皿、

パンは庶民の食べ物なので富裕層には不要

 

三皿目には、

自分の才能のなさに絶望したらしいスーシェフの青年が、

全員の前で拳銃自殺ショーを演じます

 

 

恐慌をきたしたレストランのオーナーの部下が、

スローヴィクをクビにすると脅しますが、

オーナーは皆の目の前で、天使の羽をつけられて海に沈められました

 

その他、

客の一人の指を切断したり、

男の客だけ追っかけられたり、

スローヴィク自身がセクハラで太腿を刺されてみせたり、

タイラーは自殺させられ、

助けに来たと期待した警官が実はグルで更に客は絶望する、

とやりたい放題です

 

 

もうあとはデザートだけ

もう殺されるのを待つだけなのか

 

そこでマーゴは、まだ満足していない、と言い出し、

を注文します

 

スローヴィクは目を輝かせ、

実に美味そうなチーズバーガーをマーゴに提供します

 

マーゴはチーズバーガーを一口齧ると、持ち帰りにしていいか、と尋ねます

スローヴィクはお土産分まで持たせて解放してくれました

 

他の客に見送られて、

そっと、あなたはお帰りなさい、と勧める老婦人もいて、

バーガー代を支払い外に出るマーゴ

 

 

島を脱出したマーゴは、ボートのエンジンを止め、

チョコとマシュマロに見立てられた客もろとも炎上するレストラン・ホーソンを眺めながらチーズバーガーにかぶりつくのでした

 

 

 

マーゴは、スローヴィクの部屋に忍び込み、

期待の新人として、

彼が嬉しそうにハンバーガーのパテを焼く様子が写った、

新聞記事を見つけていました

 

 

スローヴィクは、

自分の料理を美味しく食べて喜んでもらえれば幸せだったのです

しかし、なまじレストラン評論家に見出されたばっかりに、

自身は庶民の出だったのに、

金持ち相手の「ここで食べれば箔がつく」ようなレストランで、庶民には手が出ない料理を提供する羽目に陥ってしまった

 

新型コロナでも閉店せずにやってこられたのは、

オーナーの政治力か何かのおかげなのでしょうが、

レストランの運営に口を出されて、

スローヴィクはキレてしまったようです

 

 

資本主義の行き着いた先、

富裕層から収奪される貧困層を増やし、

料理の腕で、実力で貧困層から脱出したと思ったら、

その料理が、また富裕層から収奪される

 

そんな恨みと、それでもレストランを続ける自分

その果ての凶行だったのでしょうか

 

 

監督のマーク・アイロッドの名前は知りませんが、
エンドクレジットの製作に、アダム・マッケイの名前があって、
成程、となりました
 
「マネー・ショート」「バイス」「ドント・ルック・アップ」
などで、汚い金儲けや権力者の姿をコメディで見せてきた映画製作者です
 
 
音楽まで「ミッドサマー」をパクったような、
燃え上がるお菓子人間のセレブと、
チーズバーガーをパクつく売春婦のマーゴ
 
その対比が何ともおかしい「ザ・メニュー」でした