「入浴する智子と母」

1972年「ライフ」誌に掲載

 

 

 

写真集「MINAMATA」(1975年出版)で、

世界に水俣病を伝えたユージン・スミス

 

彼の来日から水俣での撮影、被害者たちとの交流、

写真誌「ライフ」掲載までを描いた作品

 

ジョニー・デップがプロデュースし主人公スミスも演じました

 

WOWOWで放送、やっと観ることができました

 

 

 

 

酒浸りで、最初は無遠慮に人にカメラを向け、

次第にやる気を失ってカメラを捨てようとさえしたスミスが、

 

チッソの研究所に忍び込んで証拠を盗み出し、

チッソ社長から5万ドルを手渡されても突き返し、

スタジオ代わりの小屋に放火され、

チッソの職員に右手を踏み潰すような暴力を受けても、

被害者やその家族と交流を深めて素晴らしい写真を撮っていく

 

その米映画の典型的ヒーローのような姿は、

「史実に基づくお話」といいますが、多くはフィクションです

 

 

また、

真田広之演じるリーダーと数十人の被害者団体「自主交渉派」はその歴史的背景がほぼ描かれていないので、暴力集団のようなイメージです

 

「自主交渉」について簡単にまとめた熊本大学の資料です

 

 

現実は、スミスが写真でチッソを告発し、「自主交渉派」が暴れただけで裁判に勝利したわけではありません

 

水俣だけでない、政治を巻き込んだ全国各地の反公害運動などが大きく影響しています

 

 

 

 

この映画は、下のラストシーンに象徴されるように、

 

詩的表現が過ぎて、

主題は何なのかちょっと解りづらいですのですが、

 

障害を持った青年や奥さんでもあるアイリーンに、

撮影や現像を手ほどきするシーンの暖かさは、

観ている自分までが癒されるようです

 

また劇中、当時のニュースフィルムや、

有名な有機水銀中毒の猫の記録映像などの場面が挿入され、

水俣病の恐ろしさや被害者原告団の思いなど、

よく伝わってきます

 

 

ラストシーンが暗転、

スミスがチッソの暴行の怪我がもとで後に亡くなったこと、

水俣病は未だ解決されていないことなどが、

文章で説明され映画は終わります

 

 

映画「MINAMATAーミナマタ」は、

 

日本人ですら過去のこととして忘却されそうな、

ー現実には裁判も続いていて、今年3月に熊本地裁で水俣病胎児性世代の訴えが棄却されていますー

水俣病に光を当て、

 

水俣病の悲惨さを世界が知り、それによって、

加害者チッソ株式会社や国が知らん顔が出来なくなった、

ユージン・スミスという写真家の功績を、

劇映画という形で改めて紹介しました

 

 

海賊でも魔法使いでもない、

弱点だらけながら、

周りの人たちに励まされ写真家としての使命を果たしていく、

スミスを演じたジョニー・デップ

そして、プロデューサーとしてこの映画の実現に尽力した、

ジョニー・デップに、

感謝するしかないです