井の頭線。
一番後ろの車両で
壁に寄りかかる
マーブルのブルー
抱えた昼下がり。
目の前に
伸びている車両。
両脇にシート
おもいおもいの
人びと。
年の離れたカップル
女のほうが座っている。
男は吊革につかまる。ちょっとくたびれている、女より年上だろう、しかし魅力的に見えなくもない。
座っている女が
男を見上げるかんじで
両手を差し出す形。
荷物を持つのかしら?
と思って見るわたし。
ちがうみたい。
男は左手で
吊革握ったまま
そうっと
右手を下げて
彼女の両手に
回収される。
多少
男の姿勢は
ぎこちないけれど
ふたりとも
ほんのり
うれしそう。
はなれて
イヤフォンで
イースタンユース
聴いてる
わたしが
見ててもわかる。
車内の
中吊り広告やらを
一通りながめるそぶりの男、
だが、すぐさま
下を向き
なごやからしき
話を
女と弾ませている。
気がつくと
いつの間にか
女は
男の右手を
両手で
まるで
乳搾り
つまり
乳牛を
搾乳するかのように
ぎゅうぎゅう
握っている。
ちょっと楽しそう。
わたしは
もうすぐ
電車をおりなくてはな。
搾乳カップルの
となり
居眠りしている
男は
ハットをかぶった
頭を
こくりこくりと
揺らしている
その
フェイクなファーの
帽子は
牛の柄なのでありました。