たとえば
わたしは ポエムを
でっちあげるのでは
ないか?
たとえば
あの娘は あらま と
そっとこぼすのでは
ないか?
そうさ、
あのとびらが
ある日 目の前に
あらわれた
としたらば だ。
では
ノックを しよう。
コツ・コツ
(もういちど)
クェン・クェン!
(あれ?もういちど)
ドゥーム・ドゥーム!!
(なにこれ)
ノックするたびに
ちがう音がひびく。
(わあ、
ちょっと こわい)
それでは
あれだね
ドアノブ らしきものを
ひねってみましょうか。
(はたして
鍵はかかっているかしら?)
そそそー と
ドアノブに手をのばす。
ぎゅ
(わぁ)
手をすぐはなす。
(なんかへん)
かんがえてみる 。
(感触がへん だ)
つめたいね
でもって
しっとりしてる。
(なにかにたとえてみてよ?)
犬の鼻さきみたい
(えー、ほかには?)
かためのこんにゃくとか
(もひとつ言うなら?)
雨の日の石のよう。
なんか
ちょっと ぬれてんのかな?
てのひら を見る
(たしかにちょっと水で濡れてるかんじ)
おお
なんだろ?
(すん すんすん)
鼻をならして
におい を かいでみる。
(あれ?)
無臭だね。
(すすすん)
もっかい
かいでも
やっぱり無臭だ。
(なんかちょっとがっかり)
(でもなんかちょっとほっとした)
首をちいさく
左右に ぶんぶん
振ってみる。
だめだ。
よくわからん。
落ち着こう。
(声に出して言っちゃってるね)
落ち着けわたし。
(これも声に出てる)
いかん。
(これは無言)
おちつくぞ。
(無言)
おもむろに
手を洗いに行く。
てきぱきと
動きはじめる。
どこかから
ちゃぶ台をもってきた。
ざぶとんをもってきた。
なんか いいながら てきぱき 動いてる
(もー
きんちょうしたら
お腹へったわー)
なるほど
お盆をもってきて、
じぶんのぶんの
ごはんを ちゃぶ台にならべてしまう。
なんと無駄のない動きだろう。
(いただきまーす)
無言で手を合わせて
食べ始める。
どうやら
たべるのは
それほど はやく は
ないようだ。
ふむふむ
ふむふむ
そんなふうな
扉の前で繰り広げられる 妄想を 見守りながら
わたしは そのとき 思った
あの娘は そのとき 思った
ごはんがおいしかったら いいなあ。
ごはんがおいしかったら いいなあ。
それがほんとうだった。
それでじゅうぶんな気がしていたのだった。
(おしまい)