3. 土器編年

  • 褶曲文土器、条線地文沈線渦巻文土器、腕骨文土器、綾杉地文隆線渦巻土器の4主要構成土器群からなる(守屋1990)。
  • 土器型式の変遷観についてはほぼ共通し、基本4段階区分。

 

 

 

3-3. 第 3 段階

  • 隆線唐草文土器が主体。成立・発展・衰退で細分可能。 口縁部下の区画文が発達するのが特徴(28・29、下伊那唐草文系土器は無文口縁)。新相には隆線唐草文はかなり崩れ始める(36~39)。この唐草文の縮小化・消失化により、充填文の綾杉文化が再度認識できる。
  • 新相期頃より加曽利E式系土器の比率が急増。(40)は縄文が綾杉状沈線で置換され在地化の進展がみられる。(41)の波状口縁の一群が該相から次段階にかけて多くなる。
  • 古相には腕骨文土器(28・29)があるが、以降消滅。

 

3段階古相 隆線唐草文 タル形深鉢(向原遺跡@朝日村)。 無文口縁の下に隆線による渦巻つなぎ文の横帯区画文が発達し、横位の三角交互刺突文が充填する。 胴部には、隆帯を貼付けその中心に沿って太く沈線で凹ませた唐草文が施文され、その間に太い沈線が充填する。

 

 

 

3段階古相 隆線唐草文 タル形深鉢(向原遺跡@朝日村)。

 

 

 

3段階古相 隆線唐草文 タル形深鉢(松本考古館)

 

 

 

3段階古相 隆線唐草文 タル形深鉢(梨久保遺跡@岡谷市、 岡谷美術考古館)

 

 

 

3段階古相 隆線唐草文 タル形深鉢(剣ノ宮遺跡@塩尻市、 平出博物館)

 

 

 

3段階古相 隆線唐草文 タル形深鉢(他谷遺跡@安曇野市、 安曇野市穂高郷土資料館)

 

 

 

3段階古相 隆線唐草文 壺形鉢(熊久保遺跡@朝日村)。

 

 

 

3段階新相 隆線唐草文 タル形深鉢(平出遺跡@塩尻市、 平出博物館)。 口縁部下の区画文がない。

 

 

 

 

 

3段階古相 加曽利E式系深鉢(熊久保遺跡@朝日村)。

 

 

 

3段階古相 加曽利E式系深鉢(他谷遺跡@安曇野市、 安曇野市穂高郷土資料館)。

 

 

 

3段階新相 加曽利E式系深鉢(熊久保遺跡@朝日村)。左上の地文は、縄文から綾杉沈線文に置換されている。 右の口縁は波状を呈する。

 

 

 

3段階新相 加曽利E式系深鉢(向原遺跡@朝日村)。 波状口縁。

 

 

 

3段階 加曽利E式系深鉢(熊久保遺跡@朝日村)。

 

 

 

3-4. 第 4 段階

  • 渦巻は一層退化し、胴部の区画文が顕著になる。
  • 古相;
  1. 唐草文の巻きが若干残るものの(43・44)、主流は45・46に見られる縦位『コ』状区画が施文される。
  2. 充填文も粗雑になる。
  3. 加曽利E式系は、口縁部がかなり崩れるもの(47・48)、重点紋が雨垂状のもの(47)、波状口縁で胴部に蛇行懸垂文が施文される。

 

  • 中相;
  1. 唐草文系は、唐草文とはもはや呼べないほどに変形し、充填文もさらに粗雑かつ疎となる(50・51)。
  2. 加曽利E式系は、口縁部が消失するいわゆるE4式期に相当する.52・53は在地化したもの。

 

  • 新相;
  1. 区画文に勾玉状文のみ。
  2. 加曽利E式系には、胴部の微隆起線文(57)や対向『J』字区画文から称名寺式に位置づけられると判断(淀の内遺跡発掘調査報告書IV 2001)。

 

 

 

4段階古相 コ状区画深鉢(上木戸遺跡17住@塩尻市)。 唐草文がザツになり『コ』状の区画文に変化。地文もザツな刷毛目状沈線が施されるのみ。

 

 

 

4段階 雨垂状沈線 深鉢(他谷遺跡 安曇野市)。 埋甕。

 

 

 

 

4段階古相 加曽利E式系土器(上木戸遺跡17住@塩尻市)。口縁部文様帯はかなり崩れてきている。地文も縄文の代わりに雨垂状沈線がザツに施文しているのみ。

 

 

 

4段階古相 加曽利E式系土器(上木戸遺跡17住@塩尻市)。口縁部文様帯はかなり崩れてきている。全体の印象もザツ。

 

 

 

4段階中相 粗雑綾杉文タル形深鉢(三夜塚遺跡@山形村)。 口縁部無文帯を横走する1条の沈線でつくり、直下に崩れた勾玉文を並べ、胴部に綾杉状を意識した粗雑な沈線を施しており、新しい様相を示す。

 

 

 

4段階中相 粗雑綾杉文タル形深鉢(三夜塚遺跡@山形村)。 口縁部無文帯を横走隆帯でつくり、直下に浅い施文の勾玉文が並び、胴部は垂下する隆帯間に弱々しい沈線文を粗に施して いる。地文の沈線が粗雑である点を除けは前段階に近い様湘。

 

 

 

4段階中相 加曽利E式系土器(三夜塚遺跡@山形村)。 口縁部が消滅している様から加曽利E4式期に比定される。

 

 

 

4段階中相 加曽利E式系土器(三夜塚遺跡@山形村)。 口縁部が消滅している様から加曽利E4式期に比定される。

 

 

 

4段階新相 加曽利E式系土器(淀の内遺跡土坑001@山形村)。 器形、磨消文などから称名寺式土器に比定される(淀の内遺跡発掘調査報告書IV 2001)。

 

 

 

4段階新相 加曽利E式系土器(淀の内遺跡土坑001@山形村)。『J』字磨消文などから称名寺式土器に比定される(淀の内遺跡発掘調査報告書IV 2001)。

 

 

 

 

 

【参考】