浮島式と諸磯式は成立した当初よく似ていた。 しかし、次第に地域色が顕在化し、浮島式・興津式と諸磯式はことなる特徴を有し、明確に分布圏も分かれてゆく。

 

 

 

 

 

 

浮島 Ia式:  ※『茨城県石岡市 新池台遺跡 ― 特別養護老人ホーム建設に伴う発掘調査 ― 石岡市教育委員会 2010』 より

  • 半截竹管により口唇部に沿って爪形文を配し、平行沈線により胴部上半に眼鏡状や肋骨文を描くもので、地文に撚り糸文を施す。
  • 外 69 は波状を呈し三角形に鋭く尖る口縁部波頂部の破片。諸磯 a 式土器の影響を大きく受ける。C 字状の爪形文を口縁に沿って巡らせる(外 70・71)、肋骨文を描く ( 外 78 ~ 81)。 平行沈線には変形爪形文は用いられず、沈線のみで文様が描かれる。
  • 外 93 から以降は平行沈線によって三角形の区画や、木葉状の入り組み文眼鏡状の文様、更に区画 帯の中に三角形や波状の平行沈線を充填させる外 93 ~ 96、いずれも地文撚糸文と判断される。

茨城県石岡市 新池台遺跡(石岡市教育委員会 2010)

 

  • 浮島 Ia式では地文はすべて撚糸文であり、胎土中に繊維を混入しない縄文施文の土器群。
  • 胎土の違いも比較的明瞭で、諸磯式土器はやや粗い砂粒を含むもので浮島式土器の精良な胎土とは異なっている。
 
 

浮島 Ib式:

  • 貝殻文の多用。(※ 諸磯式土器には見られない)
  • 諸磯式にはない凸型変形爪形文や有節平行線文、口縁部が隆帯や低隆起帯になることもある。

 

千葉市神戸遺跡調査報告(千葉市教育委員会 1991);第77図 縄文早・前期土器実測・拓影図 (16)

 

 

 

浮島 Ib式(上台貝塚@市川市) 口縁文様帯に凸型変形爪形文。

 

凸型変形爪形文

 

 

 

浮島 II 式:

  • 変形爪形文の幅が広くなる。
  • 変形爪形文以外の文様で工具が使い分けられる。
  • 口唇部には斜めの刻みが施される。

 

茨城県石岡市 新池台遺跡(石岡市教育委員会 2010);赤枠内が浮島II式。変形爪形文の幅が広くなっている。

 

 

千葉市神戸遺跡調査報告(千葉市教育委員会 1991) 第66図 縄文早・前期土器実測・拓影図 (5); 浮島(Ib)式 貝殻文。口唇部に斜めの刻み目。

 

 

 

 

浮島 III 式:

  • 変形爪形文の幅が更に広くなる。
  • 口唇部には条線帯と呼ばれる縦の刻み目が施される。
  • 三角文の出現。
  • 三角文と変形爪形文だけで器面全体を覆うものもある。

 

浮島III式(和良比遺跡@四街道市) 口唇に条線帯が、また、器面全体に三角文がそれぞれ施される。

 

 

浮島III式(豆作台遺跡@袖ヶ浦市) 口唇に条線帯。器面全体に幅広の変形爪形文を3帯平行に施し、その間を羽状の有節沈線で埋めている。