円筒上層 d式;

  • 伝統的な筒形の器形が少しづつ変化し、底部が小さく、胴部がゆるいカーブで張って、頭部が少しくびれ、そこからゆるいカーブをもって外反する器形をなす。 
  • c式まで大きく発達してきた弁状突起は小型化するが、突起が4つつくことに変わりない。
  • 口縁部には隆帯が厚く貼られ、一見、複合口縁状をなす。口縁以下には縄文が施され、その上に細い粘土紐が貼り付けられる。幅広の隆線は細い粘土紐に変わり、突起の部分にはボタン状の瘤が貼り付けられたりする。4つの突起下に直線的に粘土紐が垂下され、その間を埋めるように弧状に粘土紐が貼り付けられるものもある。それらの区画は4つで、円筒土器の伝統は受け継がれている。
34 円筒上層 d式(秋田大畑台遺跡)高37.9cm. 口縁は欠損していて不明であるが、ほかのこの時期の類例から推測すると、とくに凸凹のある粘土紐が垂下した土器には、小突起があったものと思われる。粘土紐によって文様帯は4区画され、その中に直線の粘土紐が、2本1組になって横に貼り付けられている。他に、この横の粘土紐が弧状をなすものもある。地文に縄文が施されるのが一般的。
 
 
 
円筒上層 d式(青森石神遺跡)森田歴史民俗資料館
 
 
 
円筒上層 d式(八戸石手洗遺跡) 口縁突起内面に人面付き。突起の下に細い粘土紐が貼り付けら、突起の部分にはボタン状の瘤が貼り付けられている。文様帯は胴部にまで拡大している。
 
 
 
 
円筒上層 e式;
  • 器形と口縁部の状態はd式とほぼ同様。
  • 口縁部は複合口縁をなし、その上に縄文または撚糸圧痕文などが施される。
  • この時期になって今まで続いた隆帯および粘土紐貼り付けの手法は消え、文様は沈線となり、大きな変化をとげる。突起はさらに小型となるが4個あり、突起に粘土紐を巻き付ける手法など、円筒土器の伝統はなお継続する。胴部の文様帯の幅などはd式などと同様で、文様は助骨文・弧状文様などが施され、小突起を中心に4区画される円筒式土器の伝統は継続される。
36 円筒上層 e式(秋田大畑台遺跡)高23.0cm. 4個の小突起を持ち、地文に縄文が施され、沈線によって、文様帯が構成されている。口唇部は無文、突起の下から垂下した沈線によって、4区画され、その中に2本一組の沈線が弧状に3段階施されている。4つの突起を持ち、4区画されるなど円筒式土器様式の伝統をもつ土器であるが、隆帯、あるいは粘土紐貼り付けによって構成されてきた文様が、この時期に至ると沈線に変わり大きな変化を遂げる。
 
 
円筒上層 e式(八戸石手洗遺跡)
 
 
 
円筒上層 d式(森田資料館)
 
 
 
円筒上層 d式(森田資料館)