「きみのブログ、たまに読んでんだけどさ、」
「あんだけ言ってんだから、」
「結果っていうか、顛末とかって書いた方がいいんじゃね?」

酒が飲めるようになった頃から30年以上、
濃い〜お酒を安〜く飲ませてくれる居酒屋「よね」のカウンター席で、
よねさんの歴史と同じ期間で酒を酌み交わす仲である友人は、
笑いながらワタシに問いかけます。

「そ、そうね。」
と答えてウーロンハイをごくりとやる昨晩のワタシ。

そして、
どう書いたら良いもんだかと悩みながら、
ふんわりと書き始めた今のワタシ。

もう先々週のことになりました。
2月11日の晴れた日曜日。
よねのカウンターにいた友人の伴走で、
ハーフマラソンに出場しました。
生まれてこの方で住み続けている地元の大会で
目に不自由がなかった頃はほぼ毎年走っていた馴染み深い大会です。

練習不足だったり、太ももの裏を痛めていたり、
不安はあったものの、
視覚障害者と書かれた黄色いビブスを被り、
その上にランナーの証であるナンバーを付け、
隣に伴走者と書かれたビブスを付けた友人。
準備を整えてスタート地点に。

スタートの音は微かに聞こえたか聞こえなかったか、
前のランナーがトボトボと歩き始め、
「ウシッ!」
と気合を入れて走り始めました。
友人はワタシの左斜め前、
彼の黄色いビブスを頼りに5年ぶりくらいでしょうか、
交通規制がされた公道の真ん中をを走り、
沿道からはまばらに
「頑張ってー!」
というありがたい声。

(あー、、)
(久々だなぁ。。)
とした感慨に溢れて太陽の光を浴びて、
強めの北風は追い風であったことも含めて、
視覚障害者として初の大会出場を地球丸ごとで祝福してくれてるようでもあって、
なんともしみじみと走り出したのでした。

この大会は制限時間があって、
約21キロを2時間30分で走り切ることが条件。
コースの途中にはその時間から割り出した関門があって、
決められた時間内に関門を通過しなければ、
そこでおしまい。
後ろからくる車に回収される。
関門をクリアするには1キロ6分30秒程度で走り続けることが条件。
ということを友人とは共有してて、
ワタシの目の補助とともにペースメーカーの役割も彼にはお願いしてます。

その友人
「てか、オレら最後尾だなぁ」

ワタシ「あ、そう、後ろいないんだ」

友人「ちょっとペース上げっか?」

ワタシ「や、ま、後ろ誰もいないってなんか走りやすいな」

友人「そっか、ま、1キロで確認すりゃいいな」

なんて感じでペースを確認し合いながら、
沿道の声援に
二人で「あざーす」
なんて応えながら心地よいランを実感します。

友人「お、あそこで1キロだわ」

ワタシ「お、どうどう?」

友人「んー、7分30秒だな」

ワタシ「あれ、これじゃぜんぜんダメか、じゃ、ちょっと上げようかね」

友人「これくらいはどうだ?」

ワタシ「ん、良いね」

という感じでペースを上げたワタシたち。

友人「右にあの体育館な、どうだ?見えっか?」

ワタシ「おー、体育館ね、見えないけど、今あそこねぇ」

友人「てか、マジでオレらビリだな」

ワタシ「てかさ、ちょっと、、足がやっぱ、どうもまずいな。」

友人「おいおいおい、大丈夫か、てかまだ1キロちょっとだかんな」

ワタシ「んー、痛いけど、このペースなら、、」

と歯切れの悪いワタシを振り返りながら心配する友人。

友人「お、あそこで2キロだ」

ワタシ「ほーほーほー、どうどうどう?」

友人「んー、7分8秒」

二人、沈黙。

ワタシ「こ、こ、これで、、6分30秒、、行けてると、、思ってたん、だけど、、」

そう伝えて弱気がカラダから漏れたら、
太ももの裏はビシビシ痛みだす。

そこで、
(こりゃダメだ)
(これ以上はペース上げられない)
(痛いし)
(ダメだ)
(関門に引っかかる前にオレが決断すれば友人は1人で完走できる)
(決断を急げ)

そして、

ワタシ「ダメだ、やめるわ」

友人「ぬえ?マジか?」

ワタシ「はい。マジ」

3キロの手前、2.5キロくらいだったですかね。
友人と別れて歩道に入り、
出した白杖は視覚障害のためではなく、
棄権したランナーを支えるただの杖。

マラソンってのが42.195キロ
ハーフマラソンは約21キロ
その半分は10.5キロ
その半分で約5キロ
その、半分で、、2.5キロ。。

マラソンのハーフのハーフのハーフのハーフマラソン。
距離2.5キロの
三郷シティハーフハーフハーフハーフマラソン
出場者はワタナベシンイチさん1人。
完走しました。
ってことで^^;

友人は三郷シティハーフマラソンを見事に完走。
伴走者のビブスを付けたまんまの彼が、
一人で颯爽と走る姿。
他のランナーからすれば、

(あれ、あの人、伴走者って、、)
(なぜ、ひとり?)
(視覚障害の人、捨ててきた?)
(置いてきた?忘れた?)
(ケンカした?)
って、
奇妙だったことでしょう(^^)