(絶対にやらかす)
そうわかっているのに、
ちゃんとやらかすことってありませんかね?

今日はゴリゴリの白シャツを着てます。
そんな日にカレーうどんを注文する、
みたいなやつです。
あいつの危険性については大小の跳ねジミを喰らわされた失敗を積み重ねてきて、
大小の痛みを覚えてるはずなのに、
(今日はちゃんとやれる。)
(過去の失敗が今日の成功を約束させる。)
カレーの誘惑で理性が拐われてることはウスウス気づきながらも、
今日は絶対に勝つとしたギャンブラーの理屈で彩りを添えてココロを整えてしまえば、
もうやるしかありません。
あの自然のものとは思えない黄色の沼を目の前にして正対し、
レンゲと箸を携えてうどん漁に取り掛かる。
本来は純白であっはずの沼色ごん太うどんを
油断は許すまじと慎重に丁寧に釣り上げては
沼に寄せて待ち受ける口へ運ぶ。
(いい感じだ。)
(今日は勝てる。)
(やっぱ、んまい。)
そんな感慨でココロの整理が緩んだ隙というべき油断を
ごん太は見逃しはしない。
摘みどころの悪かったことを感知したごん太は
全身の長さと重みを利用して身体をよじり
箸をすり抜けた1本のごん太が沼へ逃げる。
(はッ!)
とすることを合図に世界はスローモーションに。
箸の拘束を逃れたごん太は下手くそな飛び込みのようにして、
胴体と頭を打ちつけて沼にダイブする。
その衝撃が微かに沼を揺らす。
沼から飛び出してるようにも見えなくないごん太の尻尾が、
箸とレンゲを手にして停止しているワタシに対して、
(ふッ!)
と嘲笑ったかのようにして美しくしなり、
沼に浮かぶ舟のようなネギを避け、
重力を使って沼面を叩く。
何度となく見たことのある光景、
何度となく聴いたことのある小さな衝撃音。
音という振動が音として脳に理解されたとき、
ワタシはスローな世界から目を覚ます。
痛みはない。
顔でも手でもメガネでもなさそうだ。
皮膚チョクではない。
わかっていることはまだそれだけだ。
そして、ゆっくりと上半身を見回さなければならない。
痛みがやってこないことを祈りつつ、
目にした瞬間にやってくる痛みに怯えながら。
(ったく、あのやろう。)
獲物の自由を許したココロの場所をあいつは示しているようだった。
ごん太が放ったシズクはワタシの胸に命中している。
まるで黄色い弾痕のようなシミを確認し
胸の奥のココロが痛む。
(負けたよ。)
なぜかやってくる清々しさは、
殴り合った男同士が最後は笑顔で肩を組む場面のようじゃないかとにやけているワタシを
カウンター越しの店長さんが眺めていることを
ワタシは知らない。

そんなことって、、
ありませんかね?
ないっすかね(^^)

ここでトイレ行っとかないと電車の中でギブんぞ、
って危険性をわかってんのに行かずにちゃんとギブる。
揚げたての春巻きはマジでヤベーから、
ちょっと置いてからじゃないとってのに
ハフハフの力を過信してヤケドしてザラザラなる。 

新品の靴でそんなに歩き回ったら靴ずれすんぞ。
酔っ払って終電乗って座っちまったら寝過ごして終点からタクシーって悲劇なんぞ。
納豆のカラシを無理くり割いたら指にカラシがチャッてなんぞ。
その爪んとこのささくれは引っ張ったら深みにはまんぞ。
そのかさぶた、それまだだかんな、無理スジだから。
端っこだけいい感じなっててもダメだぞ、それ以上は血ーでんぞ、
ってのにイデってなって血ーでる。
あー、
もういちいちわかってんのに、
やらかしちゃう。

一昨日は、
ケツポケに財布。
それ落とすぞ、失くすぞ。
さらに、
それで居酒屋の背もたれのない丸イス座って飲んでたら鬼ヤベーかんな。
って、
わかってたんです。
わかってたんですけどね、
やらかします。

チョー混雑してる人気の居酒屋さんでした。
カウンターにきゅうきゅうに詰めて座るもんだからと、
店員さんの指示は荷物は入り口近くの棚に置いてくれと。
貴重品は持って行けと。
そんな指示も仕方ないどころか、
逆に悪くないとさえ思えるほどに
活気があった老舗のセンペロ居酒屋さんで、
まさに
(絶対にやらかす)
と思いながら財布をケツポケに。
(気にしてるから大丈夫だ)
としてグイッと押し込む。

ま、
気にしてたのは乾杯ビールを飲み干すまでの30秒くらい。
進学していた専門学校ん時の同級生の嬉しい近況やらを聞きながら、
生のお次はホッピーセット、
「すませ〜ん、なか〜」
なんておかわり焼酎の注文を2回ほど口にして、
「今度はまたセットで〜」
なんて発したあたりでトイレに。
戻ってきてまた
「なか〜」
ってまた2回くらい発しましたかね。
まだ帰るつもりはないのだけど、
帰る時間は何時くらいにするかなって思考がよぎったときに、
(あ、財布は大丈夫か?)
とケツポケに触れてみると財布がないケツそのもの。
ありません。

あの瞬間ってたまんないっすねぇ。。
たまんないっす。
時はピタッと止まって、
胸の奥の方でブォンって着火した給湯器のように身体が急速に熱くなって、
血液が暴れる。
皮膚は痺れる。
(ないわ。)
って受け入れると時は再びに動き出して、
今度は2.3.4.5倍速と徐々に時が加速して早くなって、
(なにが入ってたっけ?)
(盗まれた?)
(や、トイレか?)
(床か?)
(ないとどうなる?)
(クレジットカード、キャッシュカード、マ、マイナカード、、)
(止めるのってどうすんだったっけ?)
(かくかく?)
(しかじか?)
(あ、ここの支払いは?)
(やーっべ)
(やっちった。。)
って、
たまんないやつ。
久々に体感しました。
わかってんなら、ケツポケとかやんなきゃよいのに。
って反省したりもする頃には時は正常モードだけど、
暴れてた血液は顔面に集まってきて、
熱いし赤い。

そんな呆れたバカを見放さない神さまがいるなら、
その神さまも呆れたもんですが、
あの日は呆れたもん通し上手いこと通信しあっちゃったんだかで、
あったんです。
財布。

同級生の彼がサクッと店員さんに声をかけてくれたら、
トイレに落ちてた財布が届けられてると。
「黒いのですか?」
「長財布ですか?」 
という店員さんに
「はいはいはいはい」
と声より首で答えるワタシ。

戻ってきた財布はワタシに気にされなかったことを根に持ってることを押し隠し、
自分で歩いて帰ってきた体で威風堂々としていて
いつもに増してオトコ前で頼もしい雰囲気を纏ってて、
呼び捨ては失礼な感じのお財布さんとして、
手元に戻ってきたんです。
「やー、なんか悪かったね。」
と言葉にしたのは迷惑かけた同級生にだったり、
お財布さんに対してだったり。

「ワタワタさせちゃったからさ、
今日はオレ払わせて。」
なんて伝えてお財布さんを開けると、
威風堂々な外側に対しての内側はショボくれてる。
というか、
減ってる。
人と食事する前、飲む前にって現金はいくら待ってるかな?
って会社を出る時に確認してきたんです。
その数時間前とお札の賑わいが違う。
諭吉は3人いらっしゃったのが、お1人に。。

(はれぇ?)
(はれれぇ?)
(はれれれぇ?)

って気持ちと事実を伝えた隣の彼の返答は、
「やられちゃいましたね。」

財布が帰ってきたってことは幸いは幸い。
どなたか拾って店員さんに渡してくれて感謝は感謝。
この店で財布が戻らなければ面倒くさすぎる対処を
速攻しまくらないといけない辛さを想像したら、
2万円なんぞ。
なんぞ。
辛くなんかない。
幸いなんぞ。
ん、
なんぞ、、

ん?、
なんぞ?
な、
なんぞなんか?
や、
なんで?
なんでなんじゃないの?
な、
なんで抜く?
や、
抜くもんなのか。
抜くのか?
呆れた神さまの仕事だから?
謝礼はいただいといたわよ〜!ってヘリに乗ってる峰不二子みたいな?
諭吉1人を残しとくって、
不二子の粋?
優しさ?
なんなん?

愉快な盗賊を描くモンキーパンチさんに聴いてみたい。
や、聴かなくていい。
辛いのか幸いなのかの間を彷徨わせる絶妙な額を抜いてきやがって、
不二子のバカー!
って言いたい。

会計は2人で飲んで食ってで、
5,800円。
コスパ抜群の素敵なお店でした。
そこで、
(絶対にやらかす)
としてケツポケに財布を突っ込んだ時点で
申し込みが完了していた講習会の授業料は、
20,000円。

一緒だった彼と改札で別れて自宅に帰る武蔵野線、
居酒屋があった駅ではトイレに寄らず、
あと10分で最寄駅というところで猛烈な尿意。
モジモジしまくって、
なんなら握ったりして、
(行っときゃ良かった。)
と反省している自分は、
なにも反省なんかしてないじゃんって、
反省したりで尿意は限界に。
駅に到着し腰を引いて下腹部に力を入れて
明らかに形がおかしい白杖持って早歩きの変人は、
トイレへ駆け込んだ。
焦ってチャックを開けるのに手間取る0.2秒ほどの間に、
チラッと、
ジワっと、、

授業料が高いとか安いとかの問題でなく、
学びにはなってないようです。