ワタシの視力(見え方)を説明するのは未だに難しいのですけど、
なるべくで簡単に言うなら、
結構な曇りガラス越しな世界と言うか、
きったないクリアファイル越しの世界と言うか、
白く濁った水の中に潜ってるような世界?
やっぱり簡単ではないのですが、
結構とぼんやりと曇ってるわけでして。
それを皆さんにも体感してもらおうってことで、
ワタシの見え方メガネなるものを作成してみるとしたら、
失明してる右目の方はひと筋の光さえ通さない真っ黒な石のレンズ。
左目の方は曇りガラスのレンズににしますかね。
ここにワタシの見え方を象徴する「ワタナベメガネ」の特徴的な細工を施します。
左目の方の曇ってる側のレンズに小さい穴を開けるんです。
1ミリくらいの穴。
その穴から覗き見るワタシの世界は曇ってないってことなんです。
その小さな穴から見る世界は、
小さいながらも視力は0.1くらいあるので、
曇りガラスレンズの真ん中のちょっと下くらいにそんな穴を開けて、
視力0.1に見合うちっちゃなレンズを装着させる。

このブログもiPhoneをいじって書いてます。
白杖をついて世間を歩いてるワタシも
iPhoneのテキスト文字はその穴から覗いて読めるし書けるってことなんです。
でも、ズバッとでiPhoneの画面全体を俯瞰的には見ることが出来ないので、
画像とか映像とか地図とかが把握できなかったり、
しずらかったりしちゃうという見え方。

こういう見え方でもって、
人と対面して相手の顔を見るとですね、
片方は石のレンズで片目であってもそこそこな曇りガラス越しであっても、
目の前の人のさっくりなフォルムはわかる。
でも、表情はわからなかったり、
なんなら、家の中でも声を聴かなかったら
お義母さんなのか妻なのか、
娘でも長女なのか次女なのか、
外なら友人なのか知らない人なのかがわかりづらい。
だけど、
ジッとでちょっと時間はかかるんですけど、
その人の目あたりを見つめれば、
その人の片目だけを小さな穴から覗き見ることが出来るんですね。
両目を一緒には捉えられなくて片目だけなんです。
なので覗き穴をずらしていって
もう片方の目、鼻、口、耳、髪
みたいにしてパーツごとに把握していく。
ズバッと顔全体は把握できないけど、
ジッとでジックリとならパーツごとには把握出来る。
そのためには、
「てか、気持ち悪いんですけど、」
ってくらいに相手をジッと見つめざるを得ないので、
なかなかそうは出来ないってのが現実だったりします。

ただこれ、鏡に映る自分なら別なわけです。
鏡の自分をジッと見つめる53歳を誰かに見られれば
「てか、気持ち悪いんですけど、」
って恐れられるか、
「やば。壊れた?」
って恐れられるか
どっちにしても種類の違う恐ろしさをブンブン香らせちゃいますけど、
ひとりなら問題なし。
で、先日、
会社のトイレで手を洗って、
ハンカチで手を拭きながら、
曇ってぼんやりな鏡に映る自分のフォルムをボーッと見ていたら、
ジッとでもなくジックリとでもなかったはずなのに、
自分の鼻が覗けて見えたんです。

(あ、鼻じゃん。)
って高校の同級だった鼻くんに久々にバッタリ逢ったくらいの感じで
(あれ?お前、、)
って返事をしてくれた鼻くんの声がどうもピンとこなくて、
(そんなだったっけ?)
って声なんかは変わってないはずのあの鼻くんがどうも別人みたいに見えて。
昔と今との時間の経過で散らばってたパズルを揃えるように、

(あ、鼻じゃん。)
って目が悪くなってからぼんやりなだけに気にしなくなってたのに、
バッタリと鏡に映る久々の鼻に出逢って
(あれ?お前、、)
って研ナオコか!ってくらいに鼻の穴が真っ正面向いてる鼻がピンとこなくて、
(そんなだったっけ?)
って変わってないはずのその鼻がどうも別人みたいで。

それから、家の洗面所やら風呂やら会社のトイレやらで、
鼻が気になること。

(こんなに穴穴してた?)
(そんなにホール丸出しだったっけ?)
(これもう研ナオコじゃなくて清水アキラじゃん。)
って気になる。

ワタシの顔に配置されてる鼻が、
だいたいそんな鼻だったって事実は、
よ〜く知ってるんです。
よ〜く理解してるんです。
長〜く付き合ってますから。
でも、
目が悪くなる前までは、
鼻だけ見てるつもりでも、
周りに配置されてる目とか口とか
耳とか髪とか、
いやがおうでも目に入るわけで、
鼻だけ見ようにも他のパーツに装飾されてる鼻として、
理解してたし付き合ってた。
でも、今のワタシの見え方では
鼻オンリー、
ロンリーな鼻、
一人ぼっちで鼻が佇む。

(あー。)
(視野が狭くなったなぁ)
って感じたんですよね。
そして、
その感覚に覆い被さってくるように波がザバーっとやってきて
(あー。)
(視野の狭いことを気にしてんな)
って息が詰まる感覚。

鼻は昔と今で変わったわけじゃないし、
なんなら鼻なんかどうでもいい。
鼻なんかは顔の一部でしかないし、
その顔ってのはオレってのの一部でしかないし、
オレは社会の一部でしかないし、
社会は自然界の一部でしかないじゃん。
なんて、ややこしいことを考えてもがいたりで、
覆い被された波から顔をニョキっとプハーッと出して息を整える感じで。

木を見て森を見ず。
って、こういうことなんだろうなって。

人のちょっとした発言とか行動とかにイラッとして、
それが気になってしょうがない。
(あの言い方って、、)
ってのが、そのうち
(あの人って、、)
ってのになっちゃうのって、
覗き見る世界だけの視野だけに気を取られてて、
曇ったココロの小さな穴から覗いてるようで、
木しか見てない。
森を見てない。

目の病気によって視野が狭くなったワタシは、
以前とは違う見え方によって鼻が気になった。
その鼻を気になってしょうがないワタシがいるとしたら、
ココロまで視野が狭くなってるって証拠か?
って波に揉まれながら警笛が聴こえてくる。

久々に会社のトイレの鏡の中でバッタリ逢った鼻くんに直接尋ねてみることにします。

私「鼻くん、どう思う?」
鼻「や、てか、まず、清水アキラじゃねーし」
 「セロハンテープとか使ってねーし」
口「そう、そうだよ、私まで一緒に引き上げられちゃったことなんてないよ、アキラってそういう感じじゃん」
耳「ん、テープとかって話は聴いたことないな」
目「鼻呼吸がしやすいってことに見えるけどね」
鼻「でしょー、ですよ、です、です」
髪「鼻くんは見た目でさえも前向きってことなんだよね」
鼻「や、別にそういうわけじゃ、」
髪「ボクも頭頂部の仲間はずいぶん失ったよ、でも残った仲間と日々伸び続けてるんだ」
鼻「は、、前向きっすね、、」

見え方はワタシという森の中の木なんでしょうね。
木は森を構成するワタシの個性とも言える。
鼻はひとりなんかじゃなさそうで、
尋ねてもいない仲間たちが参戦してくる。

少々うざいワタシの顔です(^^)