あの頃、自由にのびのびと枝葉を広げる樹木たちが羨ましかったのだ。あの場所に行けば、胸の奥にまで新鮮な風を送り込むことができた。
 境内には人懐っこい野良猫がたくさんいたので、よく、野良猫に悩みを打ち明けていた。木々も、私の独白に耳を傾けてくれた。風も、優しく涙を拭いてくれたっけ。

 そうしてしばらく時間をつぶすと、なんとなく心にたまっていたザラザラが風に吹かれて、家に帰る足取りが軽くなった。
 私にとって妙本寺は、自分自身とデートできるかけがえのない場所だった。



自分自身とデート…
いい言葉だなぁ。