雪組さんのワンスアポン二日目を観劇してきました。

まず最初に結論を言うと、役者のレベルは軒並み高い。
基本的に歌で進行するんだけど、主にナンバーを振られるのが望海さん、真彩ちゃん、朝美さんなのでみんな上手い。
彩凪さんも少ない場面の中でぐっと印象を残してくれる。
強いて言うなら彩風さんが薄く感じたけど、これは脚本の問題も大いにあると思う。


物語自体も筋は分かりやすい。
登場人物の行動も、ちょっと分かりにくいこともあるけどまあこうなんだろうなと心情は何となく理解できる。
壬生義士伝より断然破綻は少ない……のに、すごく上滑っていくので、後半は特に頭を抱えながら観ていた。

あれではドラマ(劇)ではなく、ダイジェスト(要約)だよ。
もちろん良い場面もいっぱいあるけど、余韻が一幕ラストの幕が閉まった瞬間くらいしか感じられなくて。

そこでうぉぉぉ、ようやくドラマが始まったぞー!! ってテンション上がったのに、二幕から再びダイジェストに戻る。
むしろ二幕の方がより駆け足。

もう少し私が細部まで観れる様になったら楽しめるのかなぁ……。
という訳で、物語の整理も兼ねて以下ネタバレです。





一幕。
貧困街で酒場を営むファットモーの元に、二十年以上も音信不通だったかつての知人、ヌードルスが訪ねて来る。
二幕の半ばあたりまで彼らの回想という形で話は進む。

ユダヤ系移民の子として格差社会の底辺に位置していた子供たち。
ヌードルス@望海さんとデボラ@真彩ちゃんはその中の一人だったけれど、互いに“いつか皇帝、皇后になる”という途方もない夢を抱いていた。

他の子たち(特に女の子)が今置かれている環境の延長線上の未来を描く中で、彼らは同じ夢を目指す二人きりの同志だった。
とはいえ、多少なりとも裕福で生来の華やかさに恵まれたデボラに対し、ヌードルスは明日生きていく為のお金すら心許ない状況。
年齢、生まれから誰も雇ってはくれず、法に触れる危険な方法で生きていくしかない。

ヌードルスと同じ野望を胸に抱く賢いマックス@彩風さんと出会ってからは、はしこい仲間達とより大金を求めてお酒の密輸に手を出す。
……が、縄張り争いの最中に仲間の一人を殺され、その勢いのまま敵と警官を刺してしまう。
ヌードルスは七年?九年?ほど刑務所へ。

その間にデボラはブロードウェイのスターに。
仲間達は更に組織を大きくさせて巷では三騎士と呼ばれるほどに成長する。
仲間が経営する酒場、インフェルノで再会するヌードルスとデボラ。

お互いの気持ちを確かめ合いながらも、デボラはヌードルスに“マックスたちとは縁をきれ”“日の当たる道を歩け”と諭す。
ヌードルスは“出所まで待っていてくれた仲間を裏切れない”“前科のある自分が普通の方法では行程になれない”とマックスたちと宝石強盗を犯す。

盗み、殺し、裏切りを堂々と実行する仲間達に戸惑いもあるからか。
ヌードルスは利益を度外視してジミー@彩凪さんがリーダーを務めるトラック運転手の労働組合を裏から支援する。

一財を築きあげたヌードルスはデボラへプロポーズ(結婚ではなく、ともに生きていくという意味で)しようとする。
リムジンで迎えに行き、お洒落なレストランを貸し切り、ホテルにはバラを敷き詰めて、かつての思い出である皇后の王冠を捧げるヌードルス。
けれどもデボラは自身へハリウッドからのオファーが来ていること、ヌードルスの生き方を否定して、去っていってしまう。



ここの望海さんがもうたまらなく色っぽくて全幕通して一番気持ちが前のめりになったよ……後でまた書くけど。
今回の観劇ではここがピークだった。


二幕。

デボラにふられてからヌードルスは意気消沈し、みかねたマックスと恋人のキャロル@朝美さんは彼をビーチに誘う。
酔いに任せて浮かれるものの、デボラのことを忘れられないヌードルス。

そうこうしている間に、禁酒法がなくなり、彼らは主な収入源=お酒の密輸をなくす。
それまで貯めていた資金源はマックスが土地を転がそうとして当てが外れ、スっている。

後々分かるんだけど、マックスはこの時絶対に手を付けないと決めて駅のロッカーに入れていた仲間達との共同財産=10万ドル(当時の価格で一億とか十億くらいかなー?と思いながら観てた)も溶かしてる。
プライドの高い彼はそれを正直に告げられなかった。
それもあって、強硬的に銀行強盗を計画して負債分を補填しようとする。
けれどもマックスに乗せられる仲間たちとは違い、ヌードルスとキャロルはそれが無謀なことだと気付いていた。

ヌードルスは苦悩しながらも、実行後に捕まって終身刑になるくらいなら、と警察へ密告する。
彼は仲間達と共に捕まり、共に刑期を全うするつもりでいた。
けれど、マックスに計画へ乗り気でないことを見抜かれ、実行当日に襲撃グループから外されてしまう。

気絶させられたヌードルスは急いで銀行へ向かった。
……が、時既に遅く、目の前に広がっていたのはすでに焼け死んだ仲間達の遺体。
ヌードルスたちに恨みを抱くマフィアと警察が裏で繋がっていたことで抗争になり、みんな死んでしまった。

ただ一人生き残ったヌードルスはそのまま身を隠し、名前を変えて生きていくことになる(この時、ロッカーの共同財産が空になっていたことを知る)。


壮年期。
ヌードルスの名前で手紙と共に10万ドルの大金が届けられた彼は、ファットモーの店を訪ねる。
既に女優を引退したデボラとも再会。
彼女はさる地位のある、しかしながら現在様々なスキャンダルにまみれた男の愛人として生きている。

その男の誕生パーティーに招待されていたヌードルス。
うすうす、男の正体に気が付きながら訪ねると、そこにいたのはやはり死んだと思っていたマックスだった。

彼はジミーの手引きによって新しい名前を得て、裏ではあくどい事を重ねながらも日の当たる人生を歩いていた。
けれどもそのあくどさが露呈し、周囲からはボロを出す前にと、死を望まれている状態。
マックスはヌードルスの手にかかって死にたいと、自分を殺してくれと依頼する。

ヌードルスはそれを断ると、マックスは自殺して幕。




こうして書き出してみると、話の筋自体は面白いし、人生のままならなさ、不器用さが感じられる。
問題なのはやっぱり色んな場面を描き過ぎていて、それを積み込むためにあらゆることが早回しになっていることかな。
後半は特に慌ただしかった。

哀愁を漂わせる為には間が必要。
語りすぎるのも興醒め。

だいきほにたくさん歌わせてくれるのは幸せだけど、その分ここぞと言う時の印象が薄れる感じだった。
曲も似たようなものが多いので、初回では緩急が掴みにくい。

もう少しエピソードを取捨選択して、手を加えればめちゃくちゃいいのになぁ……と思いながらフィナーレを迎えてしまいました。
もちろん個人の意見だし、私の好みに照らし合わせたらの話だけど。


二回目に観た時にどう思うのか、また楽しみにしておこう。
チケットがない中、果たして手に入るのかが最大の問題だけど……。