女性陣について。

主にスポットが当たるのは四人。


イルラーゴ側はファルコの妹でヴィットリオに片想いするロドミア、ファルコに片想いするジャンヌ

ボルツァーノ側はジュリオと恋人同士のビアンカ

イルラーゴとボルツァーノを行き来する女性側の主役クラリーチェ


こっちの感想でも触れた通り、この時代の女とは男に従属するもので、同じ人だと思われていない。
男性陣からはもちろん、女性達自身もまた、それを当たり前のことだとして受け入れている。


特にビアンカね。
彼女は愛する人がいながら、父親の命令で別の男に身を捧げる。
実は未遂だった説もあると思うけど、推測を超えて妄想の域だと思うので今回は考えない。

ヴィットリオが言うところの「唇を震わせてただ従う多くの女」の一人。
父のため、国のため、我が身を犠牲にする姿は一見健気な様にも見えるけど、ただ痛々しいとしか思えなかった……。


彼女は自分の意思というものが持てない。持つことを許されていない。

人を愛する心はある。
だからこそ余計、悲しくなってしまう。

未婚の高貴な女性が、敵国の王と床入りするってとんでもないことだと思うんだけど……。
ビアンカはその悲嘆や屈辱を、決して表に出さない。
それを命じた父や恋人に文句の一つも言わず、ただ黙って受け入れている。(実際に場面として描かれた訳じゃないけど。少なくともクラリーチェみたいに刃物は隠し持ってなかっただろう)

恐らく、父である伯爵に女とはそうあるべきだと、教育されてきたんだろうね。
まったく対照的なクラリーチェはもとより、ジャンヌやロドミアでさえもう少し自由だったと思うよ……。


またみちるちゃんがたおやかに演じるもんだからなおさらやるせない。
ゆっくりとした話し方、控え目な微笑み。
the 貴族の娘な立ち居振る舞いや優しげな声がうまいんだ。

でもなんか、あまりに完璧な女の子すぎて、人間臭さみたいなのが全く感じられなかったのね。
みちるちゃんのことだからあえてだと思うけど、それが余計に、男の理想を絵に描いたお人形さんみたいでさ。

ジュリオに対しても、ビアンカの中から湧き上がってくる気持ちというより、ジュリオが言って欲しいであろうことを心に映して口にする感じがした。
ビアンカの本心はどこなの? って問い詰めたくなる。

特に父である伯爵が死に、ジュリオがそれを詫びた時の「いいのです」のトーンが典型的だった。
父の死を悲しむでもなく、あんな奴居なくなってせいせいしたと憎しみをにじませるのでもなく。
ただただジュリオを気遣っている。

身内が亡くなった直後だというのにね。
ビアンカ自身は無自覚であろうことも含めて、やはり痛々しい。


まじで頼むから、父の呪縛から解放されて自分の意思というものを持ち、その上で幸せになってほしいよ……。
クラリーチェはヴィットリオがいなくても自力で自分の人生を掴み取るだろうけど、ビアンカは隣に立つジュリオ次第だと思うので、この二人のカップルには本当に穏やかに生きてほしいなと願う次第であります。



ジャンヌはね、黄色いドレスを着た星南のぞみちゃんがまず可愛い。
黄色とか明るい緑とかか似合う娘役さんだと思ってるので、好みど真ん中だったラブ


のぞみちゃんのお芝居って、いつも真っ当な普通の女の子っぽさがあって、それがすごく好きというか、ほっとする。
見た目はちょっと影のあるまごうかたなき美人だけどね。

計算して立ち回ったり、余裕をもって高いところから周囲を見るのではなくて、猪突猛進、まっすぐぶつかっていく子が本当に似合う。
琥珀のフランソワーズとか。
それは彼女のスキルの拙さもあるんだと思うけど、全部ひっくるめて魅力的に見えるんだよね。


ジャンヌもそんな感じだった。
素直に健気だなぁと思えるのは、やっぱりビアンカほどに抑えつけられてはないからかな。
彼女は愛するファルコに対して自分の考えをきちんと伝えている。
クラリーチェを暗殺するのはあなたのために良くないことだと訴える。

最も、彼女に出来ることはそれまで。
ファルコに跳ね除けられてから後は、転んで一人泣くだけ。
口で言っても叶わないなら行動あるのみ! なロドミアやクラリーチェとはまた違う。
なんていうか、普通の女の子。

結局ファルコへの思いは叶わなかったけど、最後に彼の首飾りをクラリーチェ経由で託されたので、報われはしたのかな。
根底にはきちんと愛されて育った自己への肯定が見えるので、きっとまた別の人を好きになれると思うよ!