教師をやっていてよかった日というのがある。
生徒から信頼されていると感じた瞬間だ。
思えば、最初の高校教師の赴任校で
教育業界で唯一尊敬できる人にも言われた。
前澤くん、教師はこの日のために364日努力しているんだよ。
その日とは卒業式。
その日は教師の仕事は何もない。
唯、見送るだけだ。
自分の卒業式がそうであったように
淡々と時間が過ぎていくと思っていた。
式が終わり、生徒が一列になって会場から退出したときだった。
私は非常勤教師なので端でおとなしく見送ろうとしていた。
先生ありがとう。
へっ
生徒の一人が握手を求めてきた。
感極まった。
其の後は、自分のほうから、率先して生徒全員と握手をした。
目頭が熱くなった。
興奮冷めやらぬまま、職員室に戻った。
クッキが置いてあった。
涙が出た。
昨日は、卒業式ではない。
でも、生徒から連絡をもらった。
もう一度、来て一緒に勉強してくれるという連絡だった。
もう一度、チャンスをくれるという連絡だった。
一人、パソコンの前で泣いた。
教師をやっていてよかった。