田植えの季節 わが家のものだった田んぼに 今では庄屋さんの家の人たちが入って田植えをする

 

弟者は去年の様に田植えの手伝いをしたが 肩身が狭くてやりきれなかった

 

 

おっかさんに

 

「他でもない兄者の事だけど 見炉巣講をやめるよう話してくれんか?」

 

と持ちかけた

 

おっかさんは 

 

「兄者はもう大人だし」

 

と言った

 

「大人でもはまるときははまってしまうし 間違えることもある 

 

先祖代々の土地を売るようなことは家族の問題になるやろ?」

 

と言ったが取り合ってもらえなかった

 

兄者は長屋に行ってしまったので 今では弟者の方がおっかさんに近いところにいる

 

話が違うではないかと言ったら

 

「富くじが当たったら 保険に入るから そこからあんたにあげるから」

 

と言われた

 

いや そういうことじゃなくてあせるあせる 

 

お金が欲しくて言ってるわけじゃないけど 誤解されてるのに説明をくどくどしたくなくて それからしばらくおっかさんを避けて暮らした

 

 

今度は親せきの長老に相談してみた

 

「見炉巣講の事を隅々まで勉強することじゃな」

 

と言われた

 

勉強するまでもなく わかってるんですけどと言ったが 

 

「勉強することじゃな」 で話は強制終了した

 

 

弟者は兄者の息子を思い出した

 

武家に生まれたなら元服の年

 

分かってくれるかもと淡い期待を抱いて 話をしてみた

 

すると

 

「おらはいったいどうすればいいんじゃ」

 

と言って泣き出した

 

これまでさんざん見炉巣講をやめてくれとおとっつあんに訴えてきたけれど 全く聞いてくれなかったと

 

これ以上言えることがないということだった

 

弟者もそれ以上何も言えなかった

 

 

 

 

弟者は思い知った

 

うちの家系の傷は 上から目線だったと

 

当然 兄者もばりばり上から目線

 

下も下の存在の弟者の言うことなど聞く耳持ってない兄者だった

 

同時に弟者は感じた

 

兄者の人望の無さよ

 

もうちょっとかわいげのある性格の兄者だったなら やりようがあっただろうに

 

家族の気持ちが一つになれたかも

 

一肌脱ぐ人も現れたかもしれなかったのに

 

 

 

 

天は自ら助くる者を助く?

 

 

 

 

おしまい