無題


島の馬の映像をみた

人の手から離れた島は神々の元に戻り

立髪を長く垂らした馬たちが

使者のようにいた

海霧が立ち込めて

空と海と大地をひとつにして

淡い色合いになった時

馬は優しい目をして

白い体をうっすらとした青に染める


神々の島にも雪が降り

風がつけば

私たちの住むここいらと同じく

吹雪となり

馬たちの長いまつげに雪がつく

ああ

あの頃の私たちのようだ

吹雪の中

家路を急いだ一本道

三つ上の姉の背を見て足を運ぶ

あなたのまつげに雪がつき

私のまつげにも雪がつき

そんなことは当たり前だと

ただひたすら歩いていた

馬も歩く

私たちも歩く


横に並んでみていた

少し背が丸くなった私たちは

馬に同情し

けれども美しくも思い

たくましさを讃えあう

2023.9.24