立命館大学経済学部の5年生になった我が次男坊。


昨年は公務員試験に全敗し…


かと言って民間企業の就活も一切せず…


ならば自動的に…


就職浪人するか…あるいは留年して大学生活を続けるか…という話になろう。


それでも…


とりあえずは大学だけでも卒業してくれたら、私としては非常にありがたかったのだが…特に金銭面においては…


しかし、私のそんな思いとは裏腹に…


わざわざ意図的に、少ない単位を残して留年することを選んだ彼…


まあそれが君の選択ならば、それも致し方なかろう。


そして…


聞くところによれば…


その残す単位が8単位以下ならば、5年生の学費は25万円で済み…


もし8単位より多く残せば、学費は倍の50万円かかるという話だった。


そんな状況の中で…


見事に「10単位」を残してくれた君…


って…


その2単位…何とかならなかったのぉぉ…!?


25万円と50万円って…全然違うのよぉぉ!


これは…冗談抜きで


笑ってしまうくらい、泣きたくなるような状況なのである。


そう…


2単位のために、25万円をドブに捨てる…


でも冷静になって考えてみれば…


これこそが我が次男坊の真骨頂とも言えよう。


この、絶妙にハズしてくれる感…とでも言おうか…


まあ…


もうここまで来れば私も色々な感覚が麻痺してくるし…


さらには、今や留年2年目で京都大学法学部6年生になった我が長男のこととかも併せて考えれば…


どうせこれまで色んなものをドブに捨ててきたんだから…


まっ、いっかぁ…みたいな不思議な開き直りの感覚すら得られる私なのであった。


さて…つい先日


そんな次男坊の大学から、いよいよ学費の振込用紙が送られてきたのである。


さっそく封筒を手に取って、端をビリビリと破りつつ


「あぁ50万かぁ…やっぱり25万だったらかなり助かったのになぁ」と、未練がましくため息をつきながら私は封筒の中身を引っ張り出す。


そしてその振込用紙を見た私は…そこに記載された金額を見て、久々に


「血の気が引く」…のを感じたのだった。




「えっ!100万…ッスか?」


もう50歳を過ぎ、悟りを開き、大抵のことには動じることもなくなった私…


そう…


バカ息子たちの、バカげた所業の数々にも…


さらには我が妻の、「?」な所業の数々にも…


そして我が愛しき娘の、ワガママ放題な所業の数々にも…


常に鷹揚と対峙してきた私…なのに今回ばかりは血の気が引いてしまった私


そんな私の心理背景としては…


「あと2単位少なかったら25万円で済んだのに…」という未練がましさは少なからずあって…


「でもまあ仕方ない、ここは頑張って50万円を捻出しよう…」そう自らを叱咤していたところに…


全く想定してなかった…100万円という振込用紙を叩きつけられて…


もう、真っ白になるしか選択肢は残されていなかったのである。


そして真っ白になった私は…


冷静さを取り戻す前に、衝動的に次男坊へとLINEを送ってしまったのだった。


余程のことがない限り、普段は息子らにLINEを送ることなど滅多にないのだが…


「これはどういうことなんだ?」と…


「本当に100万かかるのならば、君はどうするつもりなんだ?」と…


次男坊に詰問せざるを得ない状況に追い込まれてしまったのである。


その時、次男坊はちょうど大学へ行っていたのだが…テンパってる私とは対照的に、案外冷静なLINEのメッセージが返ってきて


それにより、ようやく冷静さを取り戻した私と…彼との


メッセージのやりとりが始まったのだった。


ただ結論から先に言ってしまえば…


私の早とちりというか、大学システムに関する私の無知が…今回の騒動の主たる原因であって…


大学側としては…


一応1年分の学費、つまり100万円の振込用紙を送りますけど…


もし彼が、前期で残りの10単位を全て取得しさえすれば…


学費は前期分の50万円で済みますよ…


だからとりあえずは…


もう一枚添付してある50万円の振込用紙で、前期分だけ振り込んでおいてくださいね。




という類の話なのである。


うーん、紛らわしい…と思ってしまうのは、やはり年寄りの戯言なんだろうか?


まあとにかく、こんな風に頭の硬い私を相手にして…


次男坊は私とLINEのやりとりをしながらも…


学生課まで足を運んで、直接職員に質問してくれたようであり…


その結果ようやく…


紆余曲折を経て、私は大学のシステムを理解することが出来たのだった。


要するに…


半期で卒業する、つまり年度の真ん中で卒業することがある…という事実を私は知らなかった。


私はてっきり…


留年なんて1年単位でするものだとばかり思っていたから…


「半期で卒業するとか…意味わかんねぇよ!」なんて…ついつい年寄り臭い感想を抱いてしまったのだが…


よくよく考えてみれば


海外留学する子の多い大学なんかだと、「それも当たり前のことなのかなぁ」なんて思い直したりしてたのである。


それにしても…今回の騒動を経て私が抱いた思いは…


「あぁ…100万じゃなくて、50万で済んで良かったぁ…」


と…これに尽きるだろう。


そう…


ついさっき、振込用紙の封筒を開けるまでは…


「50万かぁ…25万なら良かったのにぃ…」


とか思っていた私とは、まるで別人になったかのような変貌ぶりだ。


まあ所詮、人間なんてこういう節操のない生きものだよなぁ…


と…そんなことをしみじみと感じる私なのであった。


しかし…それにしても我が次男坊


もうすぐ5月だというのに、就活する気配が全く見えない。


スーツを着て出かけていくこともないし…


かといって公務員試験の勉強をしている雰囲気でもない…


えっ!


世の中、今の時期って就活たけなわ…なんじゃなかったっけ?


就活に関するニュース…たくさん目にしますけど!


なのに…


そんな喧噪とはかけ離れたところに佇む我が次男坊…


君は果たしてどうするつもりなんだ?


大物なのか?


それとも…ただのバカなのか?