日本列島は、大谷翔平絡みで揺れに揺れている。
大谷翔平が結婚を発表し…
続いて妻の写真を公開し…
韓国ではMLBの開幕戦が行われ…
そこでダルビッシュ有と対戦し…
そして今日は…何と
長年の相棒である、水原一平通訳が解雇された!
などという、寝耳に水のニュースが入ってきたのである。
もうかれこれこの2週間くらいは、我が国のネットもTVも大谷翔平三昧だったのに…
さらにこれで、また当分の間はこのニュース一色になろう。
とは言え…
私は別に、そんなベタな話をしたい訳ではなく…
今回、何と言っても私の心を大きく動かしたのは…
件の水原一平氏が違法賭博で借金を作ってしまい、さらには自らがギャンブル依存症であることを正直に告白した…
という衝撃的な事実なのであった。
さて…
大谷翔平と言えば…
我が国史上最強と断言しても支障ないであろう、泣く子も黙る完全無欠のヒーローである。
まあこの意見に異論を差し挟む日本国民なんて、唯一人たりとも存在するまい。
なんせ彼は、まるで買ってきたばかりの白いTシャツのような人物なのだから。
全てが眩しいくらいピカピカの真っ白で、そこにはシミ一つ見つけることすらかなわない。
その実績も、言動も、ルックスも、やることなすこと何もかも。
そしてつい先日には…
彼と同じように、眩しいくらいピカピカで真っ白の女性と…めでたく結婚することが発表されたのだった。
そりゃ我が国の国民が皆、これに熱狂してしまうのも無理はあるまい。
だって…
そんな大谷翔平や、その奥さんを目にした私たち国民は…
間違いなく彼らが今後、眩しいくらいにピカピカな家庭を築き上げ…
近い将来には、これまた眩しいくらいピカピカな子どもたちが生まれてきて…
きっとそこにはシミ一つ見当たらない、幸せそのものの未来がやってくるのであろう。
という…
とてもではないが私たちには達成出来そうにない、あるいは既に達成出来ないままに通り過ぎてしまったようなことを…
彼には是非とも達成してもらいたいと、その叶わなかった夢を託すのだから。
そして今回、球団から解雇されてしまった水原一平氏だって…これまでは
そんな大谷翔平のピカピカなキャリアを彩る、非常に重要なピースであった…という否定しようのない事実もまた、そこにはあるのだった。
だからこそ我が国の国民は皆、今回の出来事に大きなショックを受けているのである。
水原氏の能力、振る舞い、そして大谷翔平のMLBでの活躍に対する貢献度…そのどれをとっても非の打ち所がなく…
まさに彼自身も…
大谷翔平のピカピカな世界には欠くことの出来ない、ピカピカな1ピースだったのである。
それなのに…
そんなピカピカだったはずの1ピースが、実は黒ずんだ1ピースだったことに…残念ながら皆が気付いてしまった…
そう…
買ったばかりの真っ白なTシャツだったはずなのに、実はそこに黒いシミがあるのを期せずして見つけてしまった…
これは確かに、皆が打ちのめされてしまうのも無理はあるまい。
ただ、私自身はと言えば…
確かに衝撃を受けたことは間違いないものの…
正直なところ、今回の件でむしろ安心感をおぼえる部分もあったのである。
そりゃもちろん…
もし今回の水原氏の行動が法に触れていたり、大谷翔平をはじめとして他の誰かに迷惑をかけていたのであれば…
その報いを受け、その償いをしなければならないことに間違いはあるまい。
しかし…
それこそが人間だと私は思うのである。
そっちの方が何よりも人間臭くて、私にとっては落ち着けるのである。
だって…
この世界がピカピカの人たちばかりで構成され、何もかもがピカピカな世界を構築していくなんて…どだい無理な話なのだ。
そう…
我が国の全国民が夢を託した、稀に見るピカピカなストーリーの中心に…
実はピカピカでないピースが存在した、という紛れもない今回の事実…
ここにこそ私は…
私が普段から馴染んでいる人間臭さを感じ取り、同時に大いなる郷愁や懐かしさを感じざるを得ないのであった。
さて…
こんなニュースが世を駆け巡った時に、果たして私が何を想うのかと言えば…
いつものことながら…
やはり、我が愛すべき次男坊のこと…なのである。
とある大学の、経済学部4年生…
この4月からは晴れて5年生になる我が次男坊。
えっ、5年生?
何故って?
そりゃ就職が決まらなかったからさ…
敢えて単位を残し、わざと留年し、5年生になることを決めた…というだけの話。
そのおかげで、この5月までに私は…
半年分の学費にあたる50万円を追加で用意しなければならなくなり…まあ、これは目下必死こいて金策中である。
そして…思い返してみれば
そういえば彼は昨年、公務員試験を3つ受験して全て不合格だったけれど…
その公務員試験のための予備校に通うとかいう話で、一昨年には46万円を支払ったような気がするなぁ…
それなのに公務員試験には落ちるし、おまけに大学は留年してさらに50万円というお金がかかるし…
何なんだろう…
この「金をドブに捨ててる感」…は。
さらには彼にとって…もうすぐ丸4年にもなろうかという、裕福な家柄の彼女とのお付き合い…
まあそれがあるから、結果的にそのデート代も結構かかってしまう訳だけれども…
かといって、あまり熱心にアルバイトをする気配もなく…
いつも他力本願的に…
次月や次次月の小遣いを前借りして、何とかデート代を工面しようとする…計画性のかけらもない我が次男坊。
おまけに…翌日のデート代が必要だからと
デート前日にその前借り金を渡してあげたら、受け取った直後にその金を持っていそいそと出かけていき…
夜11時過ぎになって、ようやく家に帰って来るという…
「おいおい!お前絶対パチンコ行ってたやろ!」
「デート代を増やそうと思って、逆に負けて帰って来たやろ!」
みたいな…
いかんせん、ツッコミどころ満載の我が次男坊なのであった。
そう…我が次男坊の人生は
大谷翔平のように、眩いばかりのシミ一つない真っ白なTシャツとは…比較するのもおこがましいようなシロモノなのである。
まあ仮に百歩譲って、たとえ同じ白いTシャツだったとしても…
襟首は黄ばんでヨレヨレだし…
ラーメンの汁や、ソースやケチャップの飛沫があちこちに付着しているし…
ところどころ糸がほつれて穴があいてるし…
みすぼらしいことこの上ない…
でも…
それこそが人間らしさ…だと私は思うのだ。
まあ確かに今回…
何故、これほど有能な水原一平氏が…
ギャンブル依存症になってしまったのか、あるいは違法賭博に手を染めてしまったのか…
そんなことを私は知る由もない。
それでも人間というものにとっては…真っ白なTシャツを維持し続けることほど
辛く、苦しく、難しい…ことはないと私は心から思うのだ。
瑕疵一つない言動…
隙一つない着こなし…
乱れ一つない髪型…
シミ一つない肌…
ケチ一つつけられない体型…
確かに血の滲むような努力をすれば、そういったものを得られ、なおかつ維持することだって可能かもしれない。
でもそうしようと思えば思うほど…
真っ白であること、それ自体が目的になってしまい…
自分という人間の存在自体が、「真っ白であること」の下僕に成り果ててしまう。
そう…いつの間にか主従関係が逆転してしまうのだ。
だから…
たとえ…そこには
シミがあったとしても…
黄ばんでいたとしても…
ヨレヨレだったとしても…
はたまた、それを誰かに白い目で見られようとも…
いつも気軽に、気楽にそれを着用して…
ただただ、自らの善に従うことを大切にしながら…
日々を生きていけるようなTシャツの方が…
自分を幸せにしてくれるような気がするのは、果たして私だけなのだろうか?
と…
水原一平氏の違法賭博と、我が次男坊のパチンコとでは…
そのスケールも金額もケタ違いな訳だが…
常日頃から私と妻は、次男坊がギャンブル依存症ではないか?と心配しているから…
今回の水原氏のニュースを目にすることで、自然いつものように我が次男坊へと思いを馳せてしまい…
また、結論としては…水原一平氏に
今回の件に関する償いを済ませた暁には…是非とも
これまで着ていた真っ白なTシャツを脱ぎ捨て…
シミだらけのTシャツに着替えて…
人の視線など気にすることなく…
自らの善に従いながら…
幸せな人生を歩んで行って欲しいと、切に願う私なのであった。