大谷翔平が結婚した…らしい。
いやはや、大変めでたいことだ。
それにしても…日本中がエラい大騒ぎになっている。
では…
なぜこんなにも大騒ぎになるのかと言えば…
やはり…
かなり多くの日本人たちが、大谷翔平のことを…「我が子」のように思っているから
なのではなかろうか。
とにかく私のイメージでは…この大騒ぎの主というのは
おそらく、大谷翔平より年配の人たちによって構成されているような気がするのだ。
もちろん彼と同年輩の年頃の女性たちが、仮想恋愛対象としての大谷が結婚したことにより…ざわめいているという要素も多少はあるのだろう。
それでもやはり…
我が国の、親という立場にいる人間たちが…
大谷がアメリカで大活躍するさまを、まるで出来の良い我が子が活躍しているかのように喜び…
そんな我が子が…
いつ、どんな相手と結婚するのだろうか?
いやその前に結婚するつもりがあるのだろうか?
いやはや、変な女性につかまらなきゃ良いんだけど…
とか、気をもみながら待っていたら…
ある日突然、「俺、結婚するわ」とか言われて…
蜂の巣を突いたような大騒ぎになっている…
という図式に見えてしまうのは、果たして私だけなのだろうか?
まあ昔からこういう「国民の息子」みたいな存在は…その期待される期待値みたいなものが大谷翔平より小さかったとしても、多かれ少なかれ存在していたことであろう。
それでも最近の我が国を見ていると…
総じて国民の期待が、ある一極に偏って集中してしまうというか…
この期待がある一点を目がけて収束していく感じとか…その収束した期待値自体のボリュームの大きさとか…
これらを昔と比べてみると、正直かなり極端になってしまっているような気がするのだ。
これが一昔前であれば…
たとえ多くの期待や人気を集めるような際立った存在がいたとしても、そこには必ずその対極に立つような存在がいて…
プロレス的に言えば、ベビーフェイスとヒールということになろうか…
そんな対立軸の中で…我々国民も
「俺はそっちじゃなくて、こっちの方が好きだな」とか…
皆が皆ベビーフェイスに殺到するのではなく、ヒールを愛する層だって必ず一定数は存在したように思うのだ。
それが今や…
世の中を見渡してみても、そこには際立ったベビーフェイスしか見当たらないという…
大谷翔平にしても、藤井聡太にしても、井上尚弥にしても…彼らは完全無欠のベビーフェイスと言えよう。
そして大多数の人々の人気や期待が、ほぼ全てそこに殺到してしまってる…即ちそこには対立軸が一切存在しない、それが今という時代…
では果たして、我が愛すべきヒールたちはどこに消えてしまったというのだろうか?
確かに…
愛すべき価値のない悪者たち(決して彼らをヒールとは呼びたくない)が、この世の中に増えてきたというのは…その一つの理由としてあるのかもしれない。
つまり…
もしかして、こういうヒールとは呼べないような悪者たちが世の中に増殖してしまったからこそ…
その反動として…
強大かつ完全無欠のベビーフェイスが求められる…そんな世の中になってしまったのではなかろうか…
という…
うーん、それにしても私は…これ自体が非常に悲しいことだと思うのだ。
なぜなら…
皆が皆、完全無欠のベビーフェイスを愛し…
我が子にもそうなることを期待し…
もし我が子が、この完全無欠のベビーフェイスへの道…
これは非常にその数自体も少なく、なおかつ非常に幅の狭い一本道なのだが…
仮に我が子がこの道から外れてしまったとしたら…
親はそこで落胆し、絶望し、もはや未来への展望が描けなくなってしまうという…
そして当の本人はといえば、この一本道から外れたことによって…親からの期待も、自身の存在意義をも見失ってしまい…
そこから無気力になったり、怠惰になったりして…
ベビーフェイス崩れの、ただ流されて生きるだけの人畜無害な存在になってしまったり…
あるいは…
また最悪の場合には、そこから卑屈になって悪事に手を染めてしまい…とてもヒールとは呼べないような、姑息な小悪党になったりして…
これによって…我が国は
完全無欠のベビーフェイスと、その他大勢の小悪党や人畜無害しか存在しないという…
なんともバランスの悪い、カッコ悪い国に成り果ててしまうのだから。
まあ考えてみれば…
確かに我が国もそうだけど…お隣の韓国なんかは、輪をかけてそんな感じになっているようにも思われる。
じゃあ果たして、そんなバランスの悪い我が国の状況を打破するためにはどうしたら良いのだろうか?
その答えは至ってシンプルなのだ。
要は、質の良いヒールをたくさん創り出すことに尽きる。
そして、そんな質の良いヒールを創り出すためには…
そう…
我々のような、子育てをする我が国の親たちの気概…というものが兎にも角にも重要になってくるのである。
いやそうは言っても、確かに我が子を最初っからヒールに育てようなんて親は…そうそう見当たらないことに間違いはあるまい。
そりゃ誰だって、我が子を…
完全無欠のベビーフェイスにしたいと思うのが親心であろう…大谷翔平や藤井聡太や井上尚弥のように。
しかし、我が子が将来ベビーフェイスになるのか、はたまたヒールになるのかなんていうことは…最初っから決められるものではないし、それ自体は大した問題ではないのである。
プロレスの世界だってそうだ。
その展開によってはベビーフェイスからヒールに転向することだって常にあるし、それを表す「ヒールターン」という言葉だって存在するくらいなのだから。
そう…
全ては成り行き次第…自らの能力や適性、周囲との関連性を熟考した上で、自分がベビーフェイスとして振る舞うべきなのか、ヒールとして振る舞うべきなのか…
だから…ここでは
ベビーフェイスであることが正しくて、ヒールであることが間違っているとかではなく…
あくまでも肝心なのは…
その場で自身の存在を確立しようと悪戦苦闘し、勝ったり負けたり、喜んだり悲しんだり…そういったことを果てしなく繰り返しながら…
そこで生き抜いていくためにはどうすれば良いのか…ということを常に考え、それを行動に移し、それをひたすらやり抜くという…
最近ではレジリエンスとかいう言葉で表現されることもあるが…
つまりは我が子をそんなタフな人間に育てるべく、親も子と一緒になって悪戦苦闘しなければならない…つまりはそういうことだろう。
その結果として…
我が子がベビーフェイスになっていこうが、はたまたヒールになっていこうが…そんなことは正直どうでも良いのである。
きっとそうやって育った子は、たとえ彼がヒールになったとしても…非常に味わい深い、誰からも愛されるヒールになること間違いない。
私はつくづくそう思うのであった。
そして私自身、そんな思想背景をもって我が子らを育ててきたという自負がある。
まあ、そうは言っても…
おそらく我が子らは、どう転んだとしてもベビーフェイスにはなるまい。
だって、どう考えたって私自身がヒールなのだから。
つまりヒールの子はヒール…ってやつだ。
ただ、結論としては…
ベビーフェイスの方が、ヒールよりスゴいとか…
ヒールだからベビーフェイスより劣っているとか…
そういう二元論的な価値世界に生きるのではなく…
どう考え、どう行動し、どう生き抜いていくのか…
それこそがスゴいことなのだ…という価値世界に生きること…
これに尽きるのではなかろうか。
さて…
そんな私は昔からいつも…
我が子らの周囲にいる子で、「あの子はスゴいらしいよ」とか…勉強だったりスポーツだったり、様々な面で才能があると評判になってるという子の噂話を聞く度に…
「いやいや、ウチの子の方が絶対にスゴいし…」と
何の根拠もない対抗心を、心の中で常に燃やしてきたのだった。
ただ、これは決して…
我が子らの周囲にいる一般人の子らに対してだけではなく…いわゆる有名人に対してだって…私はついつい同じ様な考え方をしてしまう。
たとえば…
我が愛すべき息子二人は、現在23歳と22歳…
そう…
ここまで例に挙げてきた大谷翔平をはじめとする彼らとも、言わば同世代に相当する。
だから事実私は…
大谷翔平がMLBでMVPを獲得したり、ホームラン王を獲得したり、数百億円で契約した時にだって…
「いやいや、ウチの子らの方が全然スゴいし…」
と、普通に思っていたし…
藤井聡太が名人や竜王になり、八冠を獲得した時にだって私は…
「いやいや、ウチの子らの方が全然スゴいし…」
と、冗談抜きで心からそう思ってしまうのだった。
そうは言っても私は…
我が子らには出来もしない…たとえばプロ野球選手を目指すとか、プロ棋士を目指すとか…
とても不可能なことを無理矢理やらせるとか…そういうことをしてきた訳では決してない。
あくまでも…
我が子らをつぶさに観察した上で、私が感知した彼らの特長を重視し…
「誰かがこれをやってるから、ウチもこれをやらせる」とかではなく…
彼らの特長を踏まえて、「これをやるべきだ」と私が確信したこと…
そういったことを…
何とか是非、我が子らにやってもらうべく…私自らがそういう方向に誘導し…
たとえそれが、世間的に評価されるような分野ではなかったとしても…
彼らが持つ自身の特長を生かそうと努力している、そんな彼らを…心の底から最大限に褒め称え…
そんな彼らと過ごしてきた、過去から現在という時間空間に…
有名無名を問わず、たとえどんなにスゴいとされる…世間的に評価されるような人がそこにいたとしても…
いつだって…
「いやいや、ウチの子らの方が全然スゴいし…」
と…嫉妬とか、負け惜しみとか、そんな要素なんて一切なく…バカみたいに心の底からそう信じて疑わないという…
まさに「親バカ」とでも言おうか、はたまた「バカ親」とでも言おうか…
それこそが私の、親としての真骨頂なのであった。
さて…
我が国にも、私のような「親バカ」なおかつ「バカ親」が跋扈して欲しいと…心から願ってやまない。
我が国で称賛や憧憬の的となるような、世界的に活躍する人たちに対しても…
「いやいや、ウチの子の方が全然スゴいし…」
そう臆面もなく言えるような、そんな素敵な親たちが無限に増殖して欲しいと心から思うのだ。
それによって我が国は、魅力とエナジーに満ち溢れた…素晴らしい国になっていくことだろう。
そう…大谷翔平の結婚フィーバーを横目にしながら…
「いやいや、ウチの子らの結婚の方がよっぽど大切やし…」
と…いつものように意味不明の対抗心を燃やす私なのであった。