国税通則法23条1項各号に掲げる税額の過大等の実体的要件が満たされるか否かは租税実体法の定めると | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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国税通則法23条1項各号に掲げる税額の過大等の実体的要件が満たされるか否かは租税実体法の定めるところによるから、同条2項所定のいわゆる後発的事由が満たされたとしても、更正の請求が手続上適法となるにとどまり、当然に右請求が認容されるものではないとした事例

 

 

法人税更正請求棄却処分取消請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/昭和60年(行コ)第59号

【判決日付】      昭和61年11月11日

【判示事項】      1、国税通則法23条1項各号(同法施行令6条)に掲げる税額の過大等の実体的要件が満たされるか否かは租税実体法の定めるところによるから、同条2項所定のいわゆる後発的事由が満たされたとしても、更正の請求が手続上適法となるにとどまり、当然に右請求が認容されるものではないとした事例

             2、法人税法上、売買契約の譲渡益等を計上した事業年度より後の事業年度における右売買契約の解除によって売買代金債権及びこれに付随する利息債権が消滅した場合には、それは右解除をした事業年度の損金に計上すべきものであり、さきの事業年度の経理処理及び納税義務には何らの影響を及ぼさないとして、国税通則法23条2項1号所定の事由が満たされたことを理由とする更正の請求が、同条1項所定の税額の過大等の実体的要件を欠くとされた事例

【掲載誌】        行政事件裁判例集37巻10~11号1334頁

             東京高等裁判所判決時報民事37巻11~12号126頁

 

国税通則法

(更正の請求)

第二十三条 納税申告書を提出した者は、次の各号のいずれかに該当する場合には、当該申告書に係る国税の法定申告期限から五年(第二号に掲げる場合のうち法人税に係る場合については、十年)以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等(当該課税標準等又は税額等に関し次条又は第二十六条(再更正)の規定による更正(以下この条において「更正」という。)があつた場合には、当該更正後の課税標準等又は税額等)につき更正をすべき旨の請求をすることができる。

一 当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたこと又は当該計算に誤りがあつたことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があつた場合には、当該更正後の税額)が過大であるとき。

二 前号に規定する理由により、当該申告書に記載した純損失等の金額(当該金額に関し更正があつた場合には、当該更正後の金額)が過少であるとき、又は当該申告書(当該申告書に関し更正があつた場合には、更正通知書)に純損失等の金額の記載がなかつたとき。

三 第一号に規定する理由により、当該申告書に記載した還付金の額に相当する税額(当該税額に関し更正があつた場合には、当該更正後の税額)が過少であるとき、又は当該申告書(当該申告書に関し更正があつた場合には、更正通知書)に還付金の額に相当する税額の記載がなかつたとき。

2 納税申告書を提出した者又は第二十五条(決定)の規定による決定(以下この項において「決定」という。)を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する場合(納税申告書を提出した者については、当該各号に定める期間の満了する日が前項に規定する期間の満了する日後に到来する場合に限る。)には、同項の規定にかかわらず、当該各号に定める期間において、その該当することを理由として同項の規定による更正の請求(以下「更正の請求」という。)をすることができる。

一 その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき その確定した日の翌日から起算して二月以内

二 その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算に当たつてその申告をし、又は決定を受けた者に帰属するものとされていた所得その他課税物件が他の者に帰属するものとする当該他の者に係る国税の更正又は決定があつたとき 当該更正又は決定があつた日の翌日から起算して二月以内

三 その他当該国税の法定申告期限後に生じた前二号に類する政令で定めるやむを得ない理由があるとき 当該理由が生じた日の翌日から起算して二月以内

3 更正の請求をしようとする者は、その請求に係る更正後の課税標準等又は税額等、その更正の請求をする理由、当該請求をするに至つた事情の詳細、当該請求に係る更正前の納付すべき税額及び還付金の額に相当する税額その他参考となるべき事項を記載した更正請求書を税務署長に提出しなければならない。

4 税務署長は、更正の請求があつた場合には、その請求に係る課税標準等又は税額等について調査し、更正をし、又は更正をすべき理由がない旨をその請求をした者に通知する。

5 更正の請求があつた場合においても、税務署長は、その請求に係る納付すべき国税(その滞納処分費を含む。以下この項において同じ。)の徴収を猶予しない。ただし、税務署長において相当の理由があると認めるときは、その国税の全部又は一部の徴収を猶予することができる。

6 輸入品に係る申告消費税等についての更正の請求は、第一項の規定にかかわらず、税関長に対し、するものとする。この場合においては、前三項の規定の適用については、これらの規定中「税務署長」とあるのは、「税関長」とする。

7 前二条の規定は、更正の請求について準用する。

 

国税通則法施行令

(更正の請求)

第六条 法第二十三条第二項第三号(更正の請求)に規定する政令で定めるやむを得ない理由は、次に掲げる理由とする。

一 その申告、更正又は決定に係る課税標準等(法第十九条第一項(修正申告)に規定する課税標準等をいう。以下同じ。)又は税額等(同項に規定する税額等をいう。以下同じ。)の計算の基礎となつた事実のうちに含まれていた行為の効力に係る官公署の許可その他の処分が取り消されたこと。

二 その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実に係る契約が、解除権の行使によつて解除され、若しくは当該契約の成立後生じたやむを得ない事情によつて解除され、又は取り消されたこと。

三 帳簿書類の押収その他やむを得ない事情により、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき帳簿書類その他の記録に基づいて国税の課税標準等又は税額等を計算することができなかつた場合において、その後、当該事情が消滅したこと。

四 わが国が締結した所得に対する租税に関する二重課税の回避又は脱税の防止のための条約に規定する権限のある当局間の協議により、その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等に関し、その内容と異なる内容の合意が行われたこと。

五 その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実に係る国税庁長官が発した通達に示されている法令の解釈その他の国税庁長官の法令の解釈が、更正又は決定に係る審査請求若しくは訴えについての裁決若しくは判決に伴つて変更され、変更後の解釈が国税庁長官により公表されたことにより、当該課税標準等又は税額等が異なることとなる取扱いを受けることとなつたことを知つたこと。

2 更正の請求をしようとする者は、その更正の請求をする理由が課税標準たる所得が過大であることその他その理由の基礎となる事実が一定期間の取引に関するものであるときは、その取引の記録等に基づいてその理由の基礎となる事実を証明する書類を法第二十三条第三項の更正請求書に添付しなければならない。その更正の請求をする理由の基礎となる事実が一定期間の取引に関するもの以外のものである場合において、その事実を証明する書類があるときも、また同様とする。

 

       主   文

 

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

 

       理   由

 

一 当裁判所は、控訴人の本訴請求を失当として棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり訂正、付加するほかは、原判決の理由と同一であるから、その記載を引用する。

1 原判決二七枚目表一行目(編注、三六巻七・八号一〇九七頁四行目)「三条一項但し書」を「四条一項但し書」と改める。

2 原判決三三丁表六行目(同上、一一〇一頁七行目)の次に、行をかえて次のとおり加える。

 「なお、控訴人は当審において本件各更正の請求が認められるべき理由につき縷々主張するが、被控訴人のこれに対する反論と併せ子細に検討しても格別新しい主張と目すべきものはなく、原判決において上来説示したところによりすでに判断が加えられているものと

いうことができる。また、控訴人が昭和五二年一二月二六日付けの通則法二三条二項三号による更正請求の取下げについて云為する点も、本件売買契約の解除による代金債権及びこれに附随する利息債権の消滅については、いずれも解除の日の属する事業年度の損失として計上すべきものであつて、更正により是正されるものではないと解されるので、本件において右取下げの効力につき判断を加える必要はなく、さらに本件の場合、更正が許されないとすれば国の不当利得を許すこととなる旨の控訴人の主張も、それ自体更正を認めるべき事由には当らないものというべきである。」

二 そうすると、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担について民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 中村修三 篠田省二 関野杜滋子)

 

 

              法人税更正請求棄却処分取消請求上告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和62年(行ツ)第18号

【判決日付】      昭和62年7月10日

【掲載誌】        税務訴訟資料159号65頁

 

 右当事者間の東京高等裁判所昭和六〇年(行コ)第五九号法人税更正請求棄却処分取消請求事件について、同裁判所が昭和六一年一一月一一日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告人代理人信部高雄、同田頭忠、同熊井一元の上告理由について

 所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。所論引用の判例は、事案を異にし、本件に適切でない。論旨は、ひつきよう、原判決を正解せず又は独自の見解を前提として原判決を論難するものであって、採用することができない。

 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

    最高裁判所第二小法廷