1 刑事裁判における国民の司法参加と憲法 2 裁判員制度と憲法31条,32条,37条1項,76条 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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1 刑事裁判における国民の司法参加と憲法

2 裁判員制度と憲法31条,32条,37条1項,76条1項,80条1項

3 裁判員制度と憲法76条3項

4 裁判員制度と憲法76条2項

5 裁判員の職務等と憲法18条後段が禁ずる「苦役」

 

最高裁判所大法廷判決/平成22年(あ)第1196号

平成23年11月16日

『平成24年重要判例解説』憲法事件

覚せい剤取締法違反,関税法違反被告事件

【判示事項】    1 刑事裁判における国民の司法参加と憲法

2 裁判員制度と憲法31条,32条,37条1項,76条1項,80条1項

3 裁判員制度と憲法76条3項

4 裁判員制度と憲法76条2項

5 裁判員の職務等と憲法18条後段が禁ずる「苦役」

【判決要旨】  1 憲法は,刑事裁判における国民の司法参加を許容しており,憲法の定める適正な刑事裁判を実現するための諸原則が確保されている限り,その内容を立法政策に委ねている。

2 裁判員制度は,憲法31条,32条,37条1項,76条1項,80条1項に違反しない。

3 裁判員制度は,憲法76条3項に違反しない。

4 裁判員制度は,憲法76条2項に違反しない。

5 裁判員の職務等は,憲法18条後段が禁ずる「苦役」に当たらない。

【参照条文】    憲法76

          憲法31

          憲法32

          憲法37

          憲法80

          憲法前文第1段

          憲法33

          憲法34

          憲法35

          憲法36

          憲法38

          憲法39

          憲法78

          憲法79

          大日本帝国憲法24

          裁判所法3-3

          裁判員の参加する刑事裁判に関する法律

          裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2-1

          裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2-2

          裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2-3

          裁判員の参加する刑事裁判に関する法律6

          裁判員の参加する刑事裁判に関する法律9

          裁判員の参加する刑事裁判に関する法律16

          裁判員の参加する刑事裁判に関する法律51

          裁判員の参加する刑事裁判に関する法律66

          裁判員の参加する刑事裁判に関する法律67

          裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第16条第8号に規定するやむを得ない事由を定める政令

          憲法18後段

【掲載誌】     最高裁判所刑事判例集65巻8号1285頁

 

憲法

第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

 

第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

第三十二条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

 

第七十六条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

② 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。

③ すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

 

第八十条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。

② 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

 

裁判員の参加する刑事裁判に関する法律

(趣旨)

第一条 この法律は、国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することが司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資することにかんがみ、裁判員の参加する刑事裁判に関し、裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)及び刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の特則その他の必要な事項を定めるものとする。

 

(対象事件及び合議体の構成)

第二条 地方裁判所は、次に掲げる事件については、次条又は第三条の二の決定があった場合を除き、この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は、裁判所法第二十六条の規定にかかわらず、裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。

一 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件

二 裁判所法第二十六条第二項第二号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)

2 前項の合議体の裁判官の員数は三人、裁判員の員数は六人とし、裁判官のうち一人を裁判長とする。ただし、次項の決定があったときは、裁判官の員数は一人、裁判員の員数は四人とし、裁判官を裁判長とする。

3 第一項の規定により同項の合議体で取り扱うべき事件(以下「対象事件」という。)のうち、公判前整理手続による争点及び証拠の整理において公訴事実について争いがないと認められ、事件の内容その他の事情を考慮して適当と認められるものについては、裁判所は、裁判官一人及び裁判員四人から成る合議体を構成して審理及び裁判をする旨の決定をすることができる。

4 裁判所は、前項の決定をするには、公判前整理手続において、検察官、被告人及び弁護人に異議のないことを確認しなければならない。

5 第三項の決定は、第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日までにしなければならない。

6 地方裁判所は、第三項の決定があったときは、裁判所法第二十六条第二項の規定にかかわらず、当該決定の時から第三項に規定する合議体が構成されるまでの間、一人の裁判官で事件を取り扱う。

7 裁判所は、被告人の主張、審理の状況その他の事情を考慮して、事件を第三項に規定する合議体で取り扱うことが適当でないと認めたときは、決定で、同項の決定を取り消すことができる。

 

(裁判官及び裁判員の権限)

第六条 第二条第一項の合議体で事件を取り扱う場合において、刑事訴訟法第三百三十三条の規定による刑の言渡しの判決、同法第三百三十四条の規定による刑の免除の判決若しくは同法第三百三十六条の規定による無罪の判決又は少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第五十五条の規定による家庭裁判所への移送の決定に係る裁判所の判断(次項第一号及び第二号に掲げるものを除く。)のうち次に掲げるもの(以下「裁判員の関与する判断」という。)は、第二条第一項の合議体の構成員である裁判官(以下「構成裁判官」という。)及び裁判員の合議による。

一 事実の認定

二 法令の適用

三 刑の量定

2 前項に規定する場合において、次に掲げる裁判所の判断は、構成裁判官の合議による。

一 法令の解釈に係る判断

二 訴訟手続に関する判断(少年法第五十五条の決定を除く。)

三 その他裁判員の関与する判断以外の判断

3 裁判員の関与する判断をするための審理は構成裁判官及び裁判員で行い、それ以外の審理は構成裁判官のみで行う。

 

(裁判員の義務)

第九条 裁判員は、法令に従い公平誠実にその職務を行わなければならない。

2 裁判員は、第七十条第一項に規定する評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。

3 裁判員は、裁判の公正さに対する信頼を損なうおそれのある行為をしてはならない。

4 裁判員は、その品位を害するような行為をしてはならない。

 

(辞退事由)

第十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員となることについて辞退の申立てをすることができる。

一 年齢七十年以上の者

二 地方公共団体の議会の議員(会期中の者に限る。)

三 学校教育法第一条、第百二十四条又は第百三十四条の学校の学生又は生徒(常時通学を要する課程に在学する者に限る。)

四 過去五年以内に裁判員又は補充裁判員の職にあった者

五 過去三年以内に選任予定裁判員であった者

六 過去一年以内に裁判員候補者として第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭したことがある者(第三十四条第七項(第三十八条第二項(第四十六条第二項において準用する場合を含む。)、第四十七条第二項及び第九十二条第二項において準用する場合を含む。第二十六条第三項において同じ。)の規定による不選任の決定があった者を除く。)

七 過去五年以内に検察審査会法(昭和二十三年法律第百四十七号)の規定による検察審査員又は補充員の職にあった者

八 次に掲げる事由その他政令で定めるやむを得ない事由があり、裁判員の職務を行うこと又は裁判員候補者として第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭することが困難な者

イ 重い疾病又は傷害により裁判所に出頭することが困難であること。

ロ 介護又は養育が行われなければ日常生活を営むのに支障がある同居の親族の介護又は養育を行う必要があること。

ハ その従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがあるものがあること。

ニ 父母の葬式への出席その他の社会生活上の重要な用務であって他の期日に行うことができないものがあること。

ホ 重大な災害により生活基盤に著しい被害を受け、その生活の再建のための用務を行う必要があること。

 

(裁判員の負担に対する配慮)

第五十一条 裁判官、検察官及び弁護人は、裁判員の負担が過重なものとならないようにしつつ、裁判員がその職責を十分に果たすことができるよう、審理を迅速で分かりやすいものとすることに努めなければならない。

 

(評議)

第六十六条 第二条第一項の合議体における裁判員の関与する判断のための評議は、構成裁判官及び裁判員が行う。

2 裁判員は、前項の評議に出席し、意見を述べなければならない。

3 裁判長は、必要と認めるときは、第一項の評議において、裁判員に対し、構成裁判官の合議による法令の解釈に係る判断及び訴訟手続に関する判断を示さなければならない。

4 裁判員は、前項の判断が示された場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。

5 裁判長は、第一項の評議において、裁判員に対して必要な法令に関する説明を丁寧に行うとともに、評議を裁判員に分かりやすいものとなるように整理し、裁判員が発言する機会を十分に設けるなど、裁判員がその職責を十分に果たすことができるように配慮しなければならない。

(評決)

第六十七条 前条第一項の評議における裁判員の関与する判断は、裁判所法第七十七条の規定にかかわらず、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見による。

2 刑の量定について意見が分かれ、その説が各々、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見にならないときは、その合議体の判断は、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見になるまで、被告人に最も不利な意見の数を順次利益な意見の数に加え、その中で最も利益な意見による。