外国倒産処理手続の承認の決定がされた後、同一の債務者について他の外国倒産処理手続の承認の申立てが | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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外国倒産処理手続の承認の決定がされた後、同一の債務者について他の外国倒産処理手続の承認の申立てがされた事案において、いずれの外国倒産処理手続が、「外国主手続」、すなわち債務者の「主たる営業所」がある国で申し立てられた外国倒産処理手続であるかの認定判断がされた事例

 

東京地方裁判所決定/平成23年(承)第3号、平成23年(承)第5号

平成24年7月31日

外国倒産処理手続承認申立事件

【判示事項】    外国倒産処理手続の承認の決定がされた後、同一の債務者について他の外国倒産処理手続の承認の申立てがされた事案において、いずれの外国倒産処理手続が、「外国主手続」、すなわち債務者の「主たる営業所」がある国で申し立てられた外国倒産処理手続であるかの認定判断がされた事例

【判決要旨】    ある債務者(株式会社)について、A国の外国倒産処理手続の承認の決定がされ、その後にB国の外国倒産処理手続の承認の申立てがされた場合において、いずれの外国倒産処理手続が、「外国主手続」、すなわち「主たる営業所」がある国で申し立てられた外国倒産処理手続であるかを判断するにあたり、①「主たる営業所」の判断の基準時は、特段の事情のない限り、最初に外国倒産処理手続の開始申立てがされた時点とするのが相当であり、また、②「主たる営業所」は実質的な本店と解するのが相当であり、その判断基準ないし考慮要素としては、国際連合国際商取引法委員会(UNCITRAL)の作業部会において「主たる利益の中心」(COMI)として議論されている諸々の考慮要素を全体として視野に入れて検討し、事案に応じた判断を行うのが相当であるが、なお、これら諸要素のうち、本部機能ないし中枢、あるいは債務者の主要な財産および事業の認められる場所、債務者の経営管理の行われている場所、債権者から認識可能な場所といった要素については、重点的にその所在を斟酌するのが相当である。

【参照条文】    外国倒産処理手続の承認援助に関する法律21

          外国倒産処理手続の承認援助に関する法律62-1

          外国倒産処理手続の承認援助に関する法律2

【掲載誌】     金融・商事判例1410号45頁

          判例時報2174号61頁

          金融法務事情1961号99頁

 

外国倒産処理手続の承認援助に関する法律

(定義等)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一 外国倒産処理手続 外国で申し立てられた手続で、破産手続、再生手続、更生手続又は特別清算手続に相当するものをいう。

二 外国主手続 債務者が営業者である場合にあってはその主たる営業所がある国で申し立てられた外国倒産処理手続、営業者でない場合又は営業所を有しない場合にあっては、当該債務者が個人であるときは住所がある国で申し立てられた外国倒産処理手続、法人その他の社団又は財団であるときは主たる事務所がある国で申し立てられた外国倒産処理手続をいう。

三 外国従手続 外国主手続でない外国倒産処理手続をいう。

四 国内倒産処理手続 日本国内で申し立てられた破産手続、再生手続、更生手続又は特別清算手続をいう。

五 外国倒産処理手続の承認 外国倒産処理手続について、これを日本国内において第三章の規定による援助の処分をすることができる基礎として承認することをいう。

六 承認援助手続 次章以下に定めるところにより、外国倒産処理手続の承認の申立てについての裁判並びに債務者の日本国内における業務及び財産に関し当該外国倒産処理手続を援助するための処分をする手続をいう。

七 外国管財人 外国倒産処理手続において債務者の財産の管理及び処分をする権利を有する者であって、債務者以外のものをいう。

八 外国管財人等 外国倒産処理手続において外国管財人がある場合には外国管財人、外国管財人がない場合には債務者をいう。

九 承認管財人 第三十二条第一項の規定により債務者の日本国内における業務及び財産に関し管理を命じられた者をいう。

2 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定により裁判上の請求をすることができる債権は、日本国内にあるものとみなす。

 

(外国倒産処理手続の承認の条件)

第二十一条 次の各号のいずれかに該当する場合には、裁判所は、外国倒産処理手続の承認の申立てを棄却しなければならない。

一 承認援助手続の費用の予納がないとき。

二 当該外国倒産処理手続において、債務者の日本国内にある財産にその効力が及ばないものとされていることが明らかであるとき。

三 当該外国倒産処理手続について次章の規定により援助の処分をすることが日本における公の秩序又は善良の風俗に反するとき。

四 当該外国倒産処理手続について次章の規定による援助の処分をする必要がないことが明らかであるとき。

五 外国管財人等が第十七条第三項の規定に違反したとき。ただし、その違反の程度が軽微であるときは、この限りでない。

六 不当な目的で申立てがされたことその他申立てが誠実にされたものでないことが明らかであるとき。

 

(他の外国倒産処理手続の承認がされた場合の承認の条件等)

第六十二条 裁判所は、外国倒産処理手続の承認の申立てがされた場合において、既に承認の決定がされた同一の債務者についての他の外国倒産処理手続の承認援助手続があるときは、次の各号のいずれかに該当する場合にも、当該申立てを棄却しなければならない。

一 当該他の外国倒産処理手続が外国主手続であるとき。

二 前号に掲げる場合以外の場合において、当該申立てに係る外国倒産処理手続が外国従手続であり、かつ、当該外国倒産処理手続について第三章の規定により援助の処分をすることが債権者の一般の利益に適合すると認められないとき。

2 外国倒産処理手続の承認の決定があった場合において、同一の債務者につき外国倒産処理手続の承認の決定がされた他の外国従手続があるときは、当該外国従手続の承認援助手続は、中止する。ただし、次条第一項の規定による中止の命令が発せられているときは、この限りでない。