不動産所有者の与えた物上保証人となることの承諾が仮登記担保権設定の承諾を含むと解することの当否 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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不動産所有者の与えた物上保証人となることの承諾が仮登記担保権設定の承諾を含むと解することの当否(消極)

 

東京高判昭和54年1月31日 東京高等裁判所判決時報民事30巻1号15頁

土地建物抵当権設定登記等抹消登記手続請求控訴

【判示事項】 不動産所有者の与えた物上保証人となることの承諾が仮登記担保権設定の承諾を含むと解することの当否(消極)

【参照条文】 民法369

       仮登記担保契約に関する法律1(趣旨)

 

民法

(抵当権の内容)

第三百六十九条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

2 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。

 

仮登記担保契約に関する法律

(趣旨)

第一条 この法律は、金銭債務を担保するため、その不履行があるときは債権者に債務者又は第三者に属する所有権その他の権利の移転等をすることを目的としてされた代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約その他の契約で、その契約による権利について仮登記又は仮登録のできるもの(以下「仮登記担保契約」という。)の効力等に関し、特別の定めをするものとする。

 

「 債務者または担保提供者がその所有する不動産につき抵当権を設定する際に、債権者との間の特約により抵当債務の不履行を停止条件とする代物弁済契約を締結し、これに基づき所有権移転仮登記をすることは往々見受けられるところであり、右の特約は代物弁済予約形式のいわゆる仮登記担保権を設定する趣旨のものと考えられる。しかしながら、担保提供者が単に物上保証人となることを承諾したにとどまる場合には、通常の場合抵当権を設定することのみを承諾したものと解すべきであり、特段の事情のない限り当然には抵当権の目的たる不動産につき右の仮登記担保権を設定することを承諾したものと推認することはできない。けだし、債権者による仮登記担保権の実行は、その効果において抵当権の実行の場合と類似する1面があるとはいえ、その手続および効果が後者と全く同一であるというわけではなく、不動産に仮登記担保権を設定した場合には、抵当権のみを設定した場合と比較して後順位抵当権の設定、当該不動産の譲渡・賃貸等につき所有者が1層不利益な立場に置かれることもあり得るのであって、他に特段の事情もないのに、物上保証人となることを承諾した者は当然に仮登記担保権を設定する意思をも有していたものと推測するのは、合理的な意思解釈ということができないからである。」