政治資金規正法(平成6年改正前)25条1項が定める同法12条1項の報告書に虚偽の記入をする罪と身 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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政治資金規正法(平成6年改正前)25条1項が定める同法12条1項の報告書に虚偽の記入をする罪と身分犯

 

政治資金規正法違反被告事件

最3小決平成12年11月27日 刑集54巻9号875頁 判例タイムズ1051号277頁 判例時報1733号149頁

【判示事項】 政治資金規正法(平成6年法律第4号による改正前のもの)25条1項が定める同法12条1項の報告書に虚偽の記入をする罪と身分犯

【参照条文】 政治資金規正法(平6法4号改正前)12-1

       政治資金規正法(平6法4号改正前)25-1

 

政治資金規正法

(報告書の提出)

第十二条 政治団体の会計責任者(報告書の記載に係る部分に限り、会計責任者の職務を補佐する者を含む。)は、毎年十二月三十一日現在で、当該政治団体に係るその年における収入、支出その他の事項で次に掲げるもの(これらの事項がないときは、その旨)を記載した報告書を、その日の翌日から三月以内(その間に衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の公示の日から選挙の期日までの期間がかかる場合(第二十条第一項において「報告書の提出期限が延長される場合」という。)には、四月以内)に、第六条第一項各号の区分に応じ当該各号に掲げる都道府県の選挙管理委員会又は総務大臣に提出しなければならない。

一 すべての収入について、その総額及び総務省令で定める項目別の金額並びに次に掲げる事項

イ 個人が負担する党費又は会費については、その金額及びこれを納入した者の数

ロ 同一の者からの寄附で、その金額の合計額が年間五万円を超えるものについては、その寄附をした者の氏名、住所及び職業、当該寄附の金額及び年月日並びに当該寄附をした者が第二十二条の五第一項本文に規定する者であつて同項ただし書に規定するものであるときはその旨

ハ 同一の者によつて寄附のあつせんをされた寄附で、その金額の合計額が年間五万円を超えるものについては、その寄附のあつせんをした者の氏名、住所及び職業並びに当該寄附のあつせんに係る寄附の金額、これを集めた期間及びこれが当該政治団体に提供された年月日

ニ 第二十二条の六第二項に規定する寄附については、同一の日に同一の場所で受けた寄附ごとに、その金額の合計額並びに当該年月日及び場所

ホ 機関紙誌の発行その他の事業による収入については、その事業の種類及び当該種類ごとの金額

ヘ 機関紙誌の発行その他の事業による収入のうち、特定パーティー(政治資金パーティーのうち、当該政治資金パーティーの対価に係る収入の金額が千万円以上であるものをいう。以下この条及び第十八条の二において同じ。)又は特定パーティーになると見込まれる政治資金パーティーの対価に係る収入がある場合においては、これらのパーティーごとに、その名称、開催年月日、開催場所及び対価に係る収入の金額並びに対価の支払をした者の数

ト 一の政治資金パーティーの対価に係る収入(報告書に記載すべき収入があつた年の前年以前における収入を含む。)のうち、同一の者からの政治資金パーティーの対価の支払で、その金額の合計額が二十万円を超えるものについては、その年における対価の支払について、当該対価の支払をした者の氏名、住所及び職業並びに当該対価の支払に係る収入の金額及び年月日

チ 一の政治資金パーティーの対価に係る収入(報告書に記載すべき収入があつた年の前年以前における収入を含む。)のうち、同一の者によつて対価の支払のあつせんをされたもので、その金額の合計額が二十万円を超えるものについては、その年における対価の支払のあつせんについて、当該対価の支払のあつせんをした者の氏名、住所及び職業並びに当該対価の支払のあつせんに係る収入の金額、これを集めた期間及びこれが当該政治団体に提供された年月日

リ 借入金については、借入先及び当該借入先ごとの金額

ヌ その他の収入(寄附並びにイ、ホ及びリの収入以外の収入で一件当たりの金額(数回にわたつてされたときは、その合計金額)が十万円以上のものに限る。)については、その基因となつた事実並びにその金額及び年月日

二 すべての支出について、その総額及び総務省令で定める項目別の金額並びに人件費、光熱水費その他の総務省令で定める経費以外の経費の支出(一件当たりの金額(数回にわたつてされたときは、その合計金額)が五万円以上のものに限る。)について、その支出を受けた者の氏名及び住所並びに当該支出の目的、金額及び年月日

三 十二月三十一日において有する資産等(次に掲げる資産及び借入金をいう。以下この号及び第十七条第一項において同じ。)について、当該資産等の区分に応じ、次に掲げる事項

イ 土地 所在及び面積並びに取得の価額及び年月日

ロ 建物 所在及び床面積並びに取得の価額及び年月日

ハ 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権 当該権利に係る土地の所在及び面積並びに当該権利の取得の価額及び年月日

ニ 取得の価額が百万円を超える動産 品目及び数量並びに取得の価額及び年月日

ホ 預金又は貯金 預金又は貯金の残高

ヘ 金銭信託 信託している金銭の額及び信託の設定年月日

ト 金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第一項及び第二項に規定する有価証券(金銭信託の受益証券及び受益権を除く。) 種類、銘柄及び数量並びに取得の価額及び年月日

チ 出資による権利 出資先並びに当該出資先ごとの金額及び年月日

リ 貸付先ごとの残高が百万円を超える貸付金 貸付先及び貸付残高

ヌ 支払われた金額が百万円を超える敷金 支払先並びに当該支払われた敷金の金額及び年月日

ル 取得の価額が百万円を超える施設の利用に関する権利 種類及び対象となる施設の名称並びに取得の価額及び年月日

ヲ 借入先ごとの残高が百万円を超える借入金 借入先及び借入残高

2 政治団体の会計責任者は、前項の報告書を提出するときは、同項第二号に規定する経費の支出について、総務省令で定めるところにより、領収書等の写し(当該領収書等を複写機により複写したものに限る。以下同じ。)(領収書等を徴し難い事情があつたときは、その旨並びに当該支出の目的、金額及び年月日を記載した書面(第十九条の十一第一項において「領収書等を徴し難かつた支出の明細書」という。)又は当該支出の目的を記載した書面及び振込明細書の写し(当該振込明細書を複写機により複写したものに限る。)。以下同じ。)を併せて提出しなければならない。

3 政治団体の会計責任者(会計責任者の職務を補佐する者を含む。第十九条の四及び第十九条の五において同じ。)は、第一項第一号ヘからチまでの特定パーティー又は政治資金パーティーの対価に係る収入のうち、同項の規定により報告書に記載すべき収入があつた年の前年以前において収受されたものがある場合において、当該特定パーティー又は政治資金パーティーに係る事項について同項の規定により報告書を提出するときは、当該報告書に記載すべき収入があつた年の前年以前において収受されたものについて同号ヘからチまでに掲げる事項を併せて記載しなければならない。

4 第一項の報告書の様式及び記載要領は、総務省令で定める。

 

第二十五条 次の各号の一に該当する者は、五年以下の禁錮こ又は百万円以下の罰金に処する。

一 第十二条又は第十七条の規定に違反して報告書又はこれに併せて提出すべき書面の提出をしなかつた者

一の二 第十九条の十四の規定に違反して、政治資金監査報告書の提出をしなかつた者

二 第十二条、第十七条、第十八条第四項又は第十九条の五の規定に違反して第十二条第一項若しくは第十七条第一項の報告書又はこれに併せて提出すべき書面に記載すべき事項の記載をしなかつた者

三 第十二条第一項若しくは第十七条第一項の報告書又はこれに併せて提出すべき書面に虚偽の記入をした者

2 前項の場合(第十七条の規定に係る違反の場合を除く。)において、政治団体の代表者が当該政治団体の会計責任者の選任及び監督について相当の注意を怠つたときは、五十万円以下の罰金に処する。

 

 1 本件は、東大阪市の職員であった被告人が、東大阪市長の政治団体の会計責任者らと共謀の上、大阪府選挙管理委員会に提出すべき右政治団体の収支報告書に虚偽の収入金額を記載したという事案であり、被告人は、右所為が平成6年法律第4号による改正前の政治資金規正法25条1項が定める収支報告書に虚偽の記入をする罪に当たるとして起訴された。

  被告人は、1審では、本件政治団体には会計責任者がいなかったから、本件収支報告書が政治資金規正法が定める要件に適合していない旨主張するとともに、本件の共謀、虚偽の記入をした認識などを争ったところ、1審判決は、被告人の主張を排斥して、刑法65条1項を適用することなく、被告人を有罪とした。

  そこで、被告人が、控訴し、本件収支報告書の法適合性、本件の共謀、虚偽の記入をした認識を争うとともに、収支報告書に虚偽の記入をする罪は会計責任者の身分犯であり、身分のない被告人を処罰するには刑法65条1項を適用しなければならず、その適用を誤った1審判決には法令適用の誤りがある旨主張した。しかし、原判決は、被告人の主張をいずれも排斥して、収支報告書に虚偽の記入をする罪は身分犯ではないという判断を示した(判タ976号258頁)。

  これに対して、被告人が、上告し、憲法違反、判例違反を主張したほか、本件の共謀を争うとともに、収支報告書に虚偽の記入をする罪は会計責任者の身分犯である旨主張していた。