本件は、控訴人が、平成11年5月期、平成12年5月期、平成13年5月期、平成15年5月期及び平成 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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本件は、控訴人が、平成11年5月期、平成12年5月期、平成13年5月期、平成15年5月期及び平成16年5月期の各法人税につき各確定申告をしたところ、処分行政庁から、平成17年6月29日付けで、①平成11年5月期、平成12年5月期及び平成13年5月期について、法人税法(平成18年改正前)34条2項に該当する役員報酬の仮装経理があったとして、本件更正処分1ないし3を受け、②平成15年5月期について、(a)関連会社からの債権の現物出資及び同社への新株発行による同社に対する債務の株式への転化(DES)につき混同による債務消滅益の計上漏れがあり、(b)上記の仮装経理等のため欠損金額の繰越額が過大であるとして、本件更正処分4を受けるとともに、本件過少申告加算税賦課決定処分1及び本件重加算税賦課決定処分を受け、③平成16年5月期について、他の関連会社の債権を対価とする同社への自己株式の譲渡につき混同による債務消滅益の計上漏れがある等として、本件更正処分5を受けるとともに、本件過少申告加算税賦課決定処分2を受けたため、上記①ないし③の各認定は誤りであり、本件更正処分1ないし5(以下「本件各更正処分」という。)並びに本件過少申告加算税賦課決定処分1及び2並びに本件重加算税賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)はいずれも違法であるとして、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分のうち、更正については確定申告に係る所得金額・納付すべき税額を超える部分又は確定申告に係る翌期へ繰り越す欠損金額を超えない部分、過少申告加算税賦課決定については全部、重加算税賦課決定については重加算税額を超える部分の各取消しを求めた事案である。

 

 

              法人税更正処分取消請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決

【判決日付】      平成22年9月15日

【掲載誌】        税務訴訟資料260号順号11511

【評釈論文】      税務弘報61巻8号143頁

 

法人税法

(役員給与の損金不算入)

第三十四条 内国法人がその役員に対して支給する給与(退職給与で業績連動給与に該当しないもの、使用人としての職務を有する役員に対して支給する当該職務に対するもの及び第三項の規定の適用があるものを除く。以下この項において同じ。)のうち次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

一 その支給時期が一月以下の一定の期間ごとである給与(次号イにおいて「定期給与」という。)で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与(同号において「定期同額給与」という。)

二 その役員の職務につき所定の時期に、確定した額の金銭又は確定した数の株式(出資を含む。以下この項及び第五項において同じ。)若しくは新株予約権若しくは確定した額の金銭債権に係る第五十四条第一項(譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例)に規定する特定譲渡制限付株式若しくは第五十四条の二第一項(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)に規定する特定新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給する給与で、定期同額給与及び業績連動給与のいずれにも該当しないもの(当該株式若しくは当該特定譲渡制限付株式に係る第五十四条第一項に規定する承継譲渡制限付株式又は当該新株予約権若しくは当該特定新株予約権に係る第五十四条の二第一項に規定する承継新株予約権による給与を含むものとし、次に掲げる場合に該当する場合にはそれぞれ次に定める要件を満たすものに限る。)

イ その給与が定期給与を支給しない役員に対して支給する給与(同族会社に該当しない内国法人が支給する給与で金銭によるものに限る。)以外の給与(株式又は新株予約権による給与で、将来の役務の提供に係るものとして政令で定めるものを除く。)である場合 政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関する届出をしていること。

ロ 株式を交付する場合 当該株式が市場価格のある株式又は市場価格のある株式と交換される株式(当該内国法人又は関係法人が発行したものに限る。次号において「適格株式」という。)であること。

ハ 新株予約権を交付する場合 当該新株予約権がその行使により市場価格のある株式が交付される新株予約権(当該内国法人又は関係法人が発行したものに限る。次号において「適格新株予約権」という。)であること。

三 内国法人(同族会社にあつては、同族会社以外の法人との間に当該法人による完全支配関係があるものに限る。)がその業務執行役員(業務を執行する役員として政令で定めるものをいう。以下この号において同じ。)に対して支給する業績連動給与(金銭以外の資産が交付されるものにあつては、適格株式又は適格新株予約権が交付されるものに限る。)で、次に掲げる要件を満たすもの(他の業務執行役員の全てに対して次に掲げる要件を満たす業績連動給与を支給する場合に限る。)

イ 交付される金銭の額若しくは株式若しくは新株予約権の数又は交付される新株予約権の数のうち無償で取得され、若しくは消滅する数の算定方法が、その給与に係る職務を執行する期間の開始の日(イにおいて「職務執行期間開始日」という。)以後に終了する事業年度の利益の状況を示す指標(利益の額、利益の額に有価証券報告書(金融商品取引法第二十四条第一項(有価証券報告書の提出)に規定する有価証券報告書をいう。イにおいて同じ。)に記載されるべき事項による調整を加えた指標その他の利益に関する指標として政令で定めるもので、有価証券報告書に記載されるものに限る。イにおいて同じ。)、職務執行期間開始日の属する事業年度開始の日以後の所定の期間若しくは職務執行期間開始日以後の所定の日における株式の市場価格の状況を示す指標(当該内国法人又は当該内国法人との間に完全支配関係がある法人の株式の市場価格又はその平均値その他の株式の市場価格に関する指標として政令で定めるものに限る。イにおいて同じ。)又は職務執行期間開始日以後に終了する事業年度の売上高の状況を示す指標(売上高、売上高に有価証券報告書に記載されるべき事項による調整を加えた指標その他の売上高に関する指標として政令で定めるもののうち、利益の状況を示す指標又は株式の市場価格の状況を示す指標と同時に用いられるもので、有価証券報告書に記載されるものに限る。)を基礎とした客観的なもの(次に掲げる要件を満たすものに限る。)であること。

(1) 金銭による給与にあつては確定した額を、株式又は新株予約権による給与にあつては確定した数を、それぞれ限度としているものであり、かつ、他の業務執行役員に対して支給する業績連動給与に係る算定方法と同様のものであること。

(2) 政令で定める日までに、会社法第四百四条第三項(指名委員会等の権限等)の報酬委員会(その委員の過半数が当該内国法人の同法第二条第十五号(定義)に規定する社外取締役のうち職務の独立性が確保された者として政令で定める者((2)において「独立社外取締役」という。)であるものに限るものとし、当該内国法人の業務執行役員と政令で定める特殊の関係のある者がその委員であるものを除く。)が決定(当該報酬委員会の委員である独立社外取締役の全員が当該決定に係る当該報酬委員会の決議に賛成している場合における当該決定に限る。)をしていることその他の政令で定める適正な手続を経ていること。

(3) その内容が、(2)の政令で定める適正な手続の終了の日以後遅滞なく、有価証券報告書に記載されていることその他財務省令で定める方法により開示されていること。

ロ その他政令で定める要件

2 内国法人がその役員に対して支給する給与(前項又は次項の規定の適用があるものを除く。)の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

3 内国法人が、事実を隠蔽し、又は仮装して経理をすることによりその役員に対して支給する給与の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

4 前三項に規定する給与には、債務の免除による利益その他の経済的な利益を含むものとする。

5 第一項に規定する業績連動給与とは、利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標その他の同項の内国法人又は当該内国法人との間に支配関係がある法人の業績を示す指標を基礎として算定される額又は数の金銭又は株式若しくは新株予約権による給与及び第五十四条第一項に規定する特定譲渡制限付株式若しくは承継譲渡制限付株式又は第五十四条の二第一項に規定する特定新株予約権若しくは承継新株予約権による給与で無償で取得され、又は消滅する株式又は新株予約権の数が役務の提供期間以外の事由により変動するものをいう。

6 第一項に規定する使用人としての職務を有する役員とは、役員(社長、理事長その他政令で定めるものを除く。)のうち、部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するものをいう。

7 第一項第二号ロ及びハに規定する関係法人とは、同項の内国法人との間に支配関係がある法人として政令で定める法人をいう。

8 第四項から前項までに定めるもののほか、第一項から第三項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

 

(過大な使用人給与の損金不算入)

第三十六条 内国法人がその役員と政令で定める特殊の関係のある使用人に対して支給する給与(債務の免除による利益その他の経済的な利益を含む。)の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

 

 

       主   文

 

 1 本件控訴を棄却する。

 2 控訴費用は、控訴人の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 控訴の趣旨

 1 原判決を取り消す。

 2 処分行政庁が控訴人に対し平成17年6月29日付けでした、控訴人の平成10年6月1日から平成11年5月31日までの事業年度(以下「平成11年5月期」という。)の法人税の更正処分(以下「本件更正処分1」という。)のうち、所得金額マイナス11億4591万8570円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金額11億5355万0371円を超えない部分を取り消す。

 3 処分行政庁が控訴人に対し平成17年6月29日付けでした、控訴人の平成11年6月1日から平成12年5月31日までの事業年度(以下「平成12年5月期」という。)の法人税の更正処分(以下「本件更正処分2」という。)のうち、翌期へ繰り越す欠損金額9億3174万1965円を超えない部分を取り消す。

 4 処分行政庁が控訴人に対し平成17年6月29日付けでした、控訴人の平成12年6月1日から平成13年5月31日までの事業年度(以下、「平成13年5月期」という。)の法人税の更正処分(以下「本件更正処分3」という。)のうち、翌期へ繰り越す欠損金額5億9683万7394円を超えない部分を取り消す。

 5 処分行政庁が控訴人に対し平成17年6月29日付けでした、控訴人の平成14年6月1日から平成15年5月31日までの事業年度(以下「平成15年5月期」という。)の法人税の更正処分(以下「本件更正処分4」という。)並びに過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件過少申告加算税賦課決定処分1」という。)及び重加算税の賦課決定処分(以下「本件重加算税賦課決定処分」という。)のうち、更正については所得金額1億7336万8090円、納付すべき税額5194万3600円を超える部分、過少申告加算税賦課決定については全部、重加算税賦課決定については重加算税額4万5500円を超える部分を取り消す。

 6 処分行政庁が控訴人に対し平成17年6月29日付けでした、控訴人の平成15年6月1日から平成16年5月31日までの事業年度(以下「平成16年5月期」という。)の法人税の更正処分(以下「本件更正処分5」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件過少申告加算税賦課決定処分2」という。)のうち、更正については所得金額3億9962万6744円、納付すべき税額1億2823万3700円を超える部分、賦課決定については全部を取り消す。

 7 訴訟費用は、第1、2審を通じて、被控訴人の負担とする。

第2 事案の概要

 1 事案の要旨

   本件は、控訴人が、平成11年5月期、平成12年5月期、平成13年5月期、平成15年5月期及び平成16年5月期の各法人税につき各確定申告をしたところ、処分行政庁から、平成17年6月29日付けで、①平成11年5月期、平成12年5月期及び平成13年5月期について、法人税法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)34条2項に該当する役員報酬の仮装経理があったとして、本件更正処分1ないし3を受け、②平成15年5月期について、(a)関連会社からの債権の現物出資及び同社への新株発行による同社に対する債務の株式への転化(DES)につき混同による債務消滅益の計上漏れがあり、(b)上記の仮装経理等のため欠損金額の繰越額が過大であるとして、本件更正処分4を受けるとともに、本件過少申告加算税賦課決定処分1及び本件重加算税賦課決定処分を受け、③平成16年5月期について、他の関連会社の債権を対価とする同社への自己株式の譲渡につき混同による債務消滅益の計上漏れがある等として、本件更正処分5を受けるとともに、本件過少申告加算税賦課決定処分2を受けたため、上記①ないし③の各認定は誤りであり、本件更正処分1ないし5(以下「本件各更正処分」という。)並びに本件過少申告加算税賦課決定処分1及び2並びに本件重加算税賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)はいずれも違法であるとして、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分のうち、更正については確定申告に係る所得金額・納付すべき税額を超える部分又は確定申告に係る翌期へ繰り越す欠損金額を超えない部分、過少申告加算税賦課決定については全部、重加算税賦課決定については重加算税額を超える部分の各取消しを求めた事案である。

   なお、上記②の「DES」とは、株式会社の債務(株式会社に対する債権)を株式に転化するいわゆるデット・エクイテイ・スワップ(Debt Equity Swap)の略称である。原審は、控訴人の請求をいずれも棄却したところ、控訴人が請求の認容を求めて控訴した。なお、控訴人は、当審において、本件重加算税賦課決定処分の取消しを求める訴えの一部を取り下げた(「第1 控訴の趣旨」第5項)。