公営住宅の使用関係 最1小判昭和59年12月13日民集38巻12号1411頁 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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公営住宅の使用関係

最1小判昭和59年12月13日民集38巻12号1411頁 判タ546号85頁 金融・商事判例716号45頁 判時1141号58頁

建物明渡等請求事件 『地方自治判例百選(第4版)』58事件

【判示事項】 都営住宅無断増築明渡訴訟上告審判決(公営住宅の明渡請求と信頼関係の法理の適用)

【判決要旨】 公営住宅の入居者が公営住宅法22条1項所定の明渡請求事由に該当する行為をした場合であっても、賃貸人である事業主体との間の信頼関係を破壊するとは認め難い特段の事情があるときは、事業主体の長がした明渡請求は効力を生じない。

【参照条文】 公営住宅法22

       民法541 、601

 

公営住宅法

(入居者の募集方法)

第二十二条 事業主体は、災害、不良住宅の撤去、公営住宅の借上げに係る契約の終了、公営住宅建替事業による公営住宅の除却その他政令で定める特別の事由がある場合において特定の者を公営住宅に入居させる場合を除くほか、公営住宅の入居者を公募しなければならない。

2 前項の規定による入居者の公募は、新聞、掲示等区域内の住民が周知できるような方法で行わなければならない。

 

民法

(催告による解除)

第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

 

(賃貸借)

第六百一条 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。

 

 1 X(東京都)は、Y(都営住宅の入居者)に対し、都営住宅の明渡しを請求した。

 双方の主張は、(一)(Xの請求原因)Xの所有権、Yの占有、(二)(Yの抗弁)使用関係の成立、(三)(Xの再抗弁)使用関係の終了、終了原因として、(1)無断増築、(2)割増賃料の不払、(四)(Yの再々抗弁)右(1)に対して、信頼関係を破壊するとは認め難い特段の事情の存在、右(2)に対しては、借家法7条の適用、というものである。

  2 一審東京地裁(判タ386号67頁)は、Yの再々抗弁(1)および(2)を容れて、Xの請求を棄却した。

これに対し、原審・東京高裁(判タ470号95頁)は、Yの再々抗弁(1)および(2)について、公営住宅の使用関係については信頼関係の法理の適用はなく、また、借家法7条の適用もないとして、Xの請求を認容した。

 Yは、上告して、原判決の法令違背等を主張した。

  3 本判決は、公営住宅の使用関係についても、信頼関係の法理の適用がある旨判示したうえ、本件においては、原審確定の無断増築の内容などに照らして、信頼関係を破壊するとは認め難い特段の事情があるとはいえないとして、原判決の結論を是認し、Yの上告を棄却した。