関連会社間で少しずつ価額を上げながらも順次に低価譲渡が行われた場合、その中間の会社の法人税法上の所得
法人税更正処分取消請求控訴事件
【事件番号】 大阪高等裁判所判決/昭和58年(行コ)第9号
【判決日付】 昭和59年6月29日
【判示事項】 関連会社間で少しずつ価額を上げながらも順次に低価譲渡が行われた場合、その中間の会社の法人税法上の所得
【参照条文】 法人税法22-2
法人税法37-6
【掲載誌】 行政事件裁判例集35巻6号822頁
判例タイムズ538号119頁
判例時報1140号62頁
【評釈論文】 税経通信40巻10号227頁
税務弘報61巻13号152頁
税務事例17巻2号22頁
税理29巻2号105頁
判例評論321号203頁
法学論集(西南学院大)18巻2号159頁
一 本件で、A、B、C会社は同一の者が支配する関連会社で、Bは4811万円余の、Cは3億5479万円以上の繰越欠損金を有していた。
A所有の土地を含む土地に大規模なニュータウンの建設が計画されたので、土地は急激に値上りし、A所有の土地は6億0188万円余(坪当り3000円)にも値上りした。
A、B、Cを支配していた者はこの土地をAからBに1億7348万円余(坪当り869円)で、BからCに2億2622万円(坪当り1118円)で売却したうえ、Cよりニュータウン経営者に時価(坪当り3000円)で譲渡した。
このようにB、Cを介したうえで売却したのは、B、Cには繰越欠損金があるため、B、Cに売却益を得させれば、欠損金分については法人税を免れることができると考えたからであった。
二 税務署長は、Aに対しては、法人税法37条5項を適用して、AがBに時価と売価との差額を贈与したものと認め、右差額を所得金額に加えて更正処分をした。
Aは右更正に対し訴訟を提起し、売買当時の時価と知情を争つたが、請求棄却の判決は確定した(大阪地判54・6・28行集30巻6号1197頁、大阪高判昭56・2・5行集32巻6号1156頁、判タ459号110頁、最高3小判昭57・3・9税務訴訟資料112号495頁)。
三 他方、同税務署長は、Bに対しても、Aより時価と買受価格との差額の贈与を受けたものと認め、右差額を所得金額に加えて更正処分をした。
Bは本件訴訟を提起して、(1)Aに対しても課税がされている以上、Bに対する課税は二重課税である、(2)BはCに売却することを条件にAから買受けたものであるから、そのような負担のない時価相当額の利益を与えられたとはいえないとの2点を違法事由として主張した。
第一審判決は、(1)につき課税の相手方が異なるから二重課税にならないとし、(2)については、問題を法人税法37条5項の問題としてとらえ、「このこと<編注、法人税法37条6項による税務処理とすること>は、原告会社がその主張のような転売義務つきで本件土地を買受けたことによって変るものではない」と簡単に判示して請求を棄却した。
四 本控訴審判決は後記判決理由のとおり右(2)の主張を認め、更正処分を取り消したものである。
問題となりうる点としては、(1)関連会社で前記目的で順次に低価譲渡が行われた場合、中間会社は次の会社に低価で譲渡すべき転売義務を負つていると認めるべきか、(2)その場合、中間会社の低額譲受による収益、原価を判断すべき法条は法人税法37条か22条か、(3)低価譲受による収益、原価はどれだけか、(4)右の判断において売買契約上の特約は考慮すべきか、転売特約のときはどうか、(5)BからCへの低価譲渡による収益、原価はどれだけか、などが挙げられるが、重要な点は(3)(4)であろう。
これら問題点については裁判例はみられず、行政通達でも(4)につき判決理由掲記のものがみられるだけである。
税務署長は本判決に対して上告しなかったが、本判決の解釈を是認することにしたのであろうか。
法人税法
第二款 各事業年度の所得の金額の計算の通則
第二十二条 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。
2 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。
3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。
一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
4 第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。
5 第二項又は第三項に規定する資本等取引とは、法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引並びに法人が行う利益又は剰余金の分配(資産の流動化に関する法律第百十五条第一項(中間配当)に規定する金銭の分配を含む。)及び残余財産の分配又は引渡しをいう。
(寄附金の損金不算入)
第三十七条 内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額(次項の規定の適用を受ける寄附金の額を除く。)の合計額のうち、その内国法人の当該事業年度終了の時の資本金の額及び資本準備金の額の合計額若しくは出資金の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
2 内国法人が各事業年度において当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額(第二十五条の二(受贈益)の規定の適用がないものとした場合に当該他の内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入される同条第二項に規定する受贈益の額に対応するものに限る。)は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
3 第一項の場合において、同項に規定する寄附金の額のうちに次の各号に掲げる寄附金の額があるときは、当該各号に掲げる寄附金の額の合計額は、同項に規定する寄附金の額の合計額に算入しない。
一 国又は地方公共団体(港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)の規定による港務局を含む。)に対する寄附金(その寄附をした者がその寄附によつて設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるものを除く。)の額
二 公益社団法人、公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人又は団体に対する寄附金(当該法人の設立のためにされる寄附金その他の当該法人の設立前においてされる寄附金で政令で定めるものを含む。)のうち、次に掲げる要件を満たすと認められるものとして政令で定めるところにより財務大臣が指定したものの額
イ 広く一般に募集されること。
ロ 教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与するための支出で緊急を要するものに充てられることが確実であること。
4 第一項の場合において、同項に規定する寄附金の額のうちに、公共法人、公益法人等(別表第二に掲げる一般社団法人、一般財団法人及び労働者協同組合を除く。以下この項及び次項において同じ。)その他特別の法律により設立された法人のうち、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものに対する当該法人の主たる目的である業務に関連する寄附金(出資に関する業務に充てられることが明らかなもの及び前項各号に規定する寄附金に該当するものを除く。)の額があるときは、当該寄附金の額の合計額(当該合計額が当該事業年度終了の時の資本金の額及び資本準備金の額の合計額若しくは出資金の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える場合には、当該計算した金額に相当する金額)は、第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入しない。ただし、公益法人等が支出した寄附金の額については、この限りでない。
5 公益法人等がその収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業のために支出した金額(公益社団法人又は公益財団法人にあつては、その収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業で公益に関する事業として政令で定める事業に該当するもののために支出した金額)は、その収益事業に係る寄附金の額とみなして、第一項の規定を適用する。ただし、事実を隠蔽し、又は仮装して経理をすることにより支出した金額については、この限りでない。
6 内国法人が特定公益信託(公益信託ニ関スル法律(大正十一年法律第六十二号)第一条(公益信託)に規定する公益信託で信託の終了の時における信託財産がその信託財産に係る信託の委託者に帰属しないこと及びその信託事務の実施につき政令で定める要件を満たすものであることについて政令で定めるところにより証明がされたものをいう。)の信託財産とするために支出した金銭の額は、寄附金の額とみなして第一項、第四項、第九項及び第十項の規定を適用する。この場合において、第四項中「)の額」とあるのは、「)の額(第六項に規定する特定公益信託のうち、その目的が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものの信託財産とするために支出した金銭の額を含む。)」とするほか、この項の規定の適用を受けるための手続に関し必要な事項は、政令で定める。
7 前各項に規定する寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。次項において同じ。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。
8 内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額に比して低いときは、当該対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとする。
9 第三項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない第三項各号に掲げる寄附金の額及び当該寄附金の明細を記載した書類の添付がある場合に限り、第四項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない第四項に規定する寄附金の額及び当該寄附金の明細を記載した書類の添付があり、かつ、当該書類に記載された寄附金が同項に規定する寄附金に該当することを証する書類として財務省令で定める書類を保存している場合に限り、適用する。この場合において、第三項又は第四項の規定により第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない金額は、当該金額として記載された金額を限度とする。
10 税務署長は、第四項の規定により第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されないこととなる金額の全部又は一部につき前項に規定する財務省令で定める書類の保存がない場合においても、その書類の保存がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、その書類の保存がなかつた金額につき第四項の規定を適用することができる。
11 財務大臣は、第三項第二号の指定をしたときは、これを告示する。
12 第五項から前項までに定めるもののほか、第一項から第四項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。