埼玉教員超勤訴訟・市立小学校教員の控訴人が、主位的に労基法37条に基づき、予備的に国賠法1条1項 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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埼玉教員超勤訴訟・市立小学校教員の控訴人が、主位的に労基法37条に基づき、予備的に国賠法1条1項、3条1項に基づき、市町村立学校職員給与負担法1条により県公立学校教育職員の給与・手当等を負担する被控訴人に対し、時間外割増賃金等又はその相当額の損害金の支払を求めた原審における請求棄却の原判決に対する控訴事案。

 

 

              未払賃金請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/令和3年(行コ)第270号

【判決日付】      令和4年8月25日

【判示事項】      市立小学校教員の控訴人が、主位的に労基法37条に基づき、予備的に国賠法1条1項、3条1項に基づき、市町村立学校職員給与負担法1条により県公立学校教育職員の給与・手当等を負担する被控訴人に対し、時間外割増賃金等又はその相当額の損害金の支払を求めた原審における請求棄却の原判決に対する控訴事案。

原判決が、控訴人の請求をいずれも棄却したところ、控訴人は、これを不服として控訴した。

控訴審は、認定事実、争点1(労基法37条の適用の有無)についての判断及び争点3(控訴人の時間外労働と国賠法上の違法性の有無、控訴人の損害額)についての判断を一部補正した上で、原判決は相当として控訴を棄却した事例

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

 

労働基準法

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)

第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

② 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。

③ 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。

④ 使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

⑤ 第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。

 

市町村立学校職員給与負担法

第一条 市(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(次条において「指定都市」という。)を除き、特別区を含む。)町村立の小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程及び特別支援学校の校長(中等教育学校の前期課程にあつては、当該課程の属する中等教育学校の校長とする。)、副校長、教頭、主幹教諭、指導教諭、教諭、養護教諭、栄養教諭、助教諭、養護助教諭、寄宿舎指導員、講師(常勤の者及び地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第二十二条の四第一項に規定する短時間勤務の職を占める者に限る。)、学校栄養職員(学校給食法(昭和二十九年法律第百六十号)第七条に規定する職員のうち栄養の指導及び管理をつかさどる主幹教諭並びに栄養教諭以外の者をいい、同法第六条に規定する施設の当該職員を含む。以下同じ。)及び事務職員のうち次に掲げる職員であるものの給料、扶養手当、地域手当、住居手当、初任給調整手当、通勤手当、単身赴任手当、特殊勤務手当、特地勤務手当(これに準ずる手当を含む。)、へき地手当(これに準ずる手当を含む。)、時間外勤務手当(学校栄養職員及び事務職員に係るものとする。)、宿日直手当、管理職員特別勤務手当、管理職手当、期末手当、勤勉手当、義務教育等教員特別手当、寒冷地手当、特定任期付職員業績手当、退職手当、退職年金及び退職一時金並びに旅費(都道府県が定める支給に関する基準に適合するものに限る。)(以下「給料その他の給与」という。)並びに定時制通信教育手当(中等教育学校の校長に係るものとする。)並びに講師(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(昭和三十三年法律第百十六号。以下「義務教育諸学校標準法」という。)第十七条第二項に規定する非常勤の講師に限る。)の報酬、職務を行うために要する費用の弁償及び期末手当(次条において「報酬等」という。)は、都道府県の負担とする。

一 義務教育諸学校標準法第六条第一項の規定に基づき都道府県が定める都道府県小中学校等教職員定数及び義務教育諸学校標準法第十条第一項の規定に基づき都道府県が定める都道府県特別支援学校教職員定数に基づき配置される職員(義務教育諸学校標準法第十八条各号に掲げる者を含む。)

二 公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律(昭和三十六年法律第百八十八号。以下「高等学校標準法」という。)第十五条の規定に基づき都道府県が定める特別支援学校高等部教職員定数に基づき配置される職員(特別支援学校の高等部に係る高等学校標準法第二十四条各号に掲げる者を含む。)

三 特別支援学校の幼稚部に置くべき職員の数として都道府県が定める数に基づき配置される職員

 

国家賠償法

第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

② 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

 

第三条 前二条の規定によつて国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる。

② 前項の場合において、損害を賠償した者は、内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償権を有する。

 

 

       主   文

 

 1 本件控訴を棄却する。

 2 控訴費用は控訴人の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 控訴の趣旨

 1 原判決を取り消す。

 2 被控訴人は、控訴人に対し、242万2725円及び原判決別紙1「原告金額シート」記載の「割増賃金未払額」欄の各金員に対する「賃金月度(支払期日)」欄の各日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 3 被控訴人は、控訴人に対し、242万2725円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要(以下、略称は原判決の例による。)

 1 本件は、埼玉県a市立小学校の教員である控訴人が、平成29年9月から平成30年7月までの間(本件請求期間)に時間外労働を行ったとして、主位的に、労働基準法(労基法)37条による時間外割増賃金請求権に基づき、予備的に、本件請求期間に控訴人を同法32条の定める労働時間を超えて労働させたことが国家賠償法(国賠法)上違法であると主張して、国賠法1条1項、3条1項による損害賠償請求権に基づき、市町村立学校職員給与負担法1条により埼玉県公立学校教育職員の給与・手当等を負担する被控訴人に対し、時間外割増賃金又はその相当額の損害金242万2725円及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、労基法114条による付加金請求権に基づき、付加金242万2725円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

 2 原判決が、控訴人の請求をいずれも棄却したところ、控訴人は、これを不服として控訴した。