所得税法36条1項、2項(収入金額)及び所得税法59条1項2号(贈与等の場合の譲渡所得等の特例) | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属

所得税法36条1項、2項(収入金額)及び所得税法59条1項2号(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)に規定する「価額」の意義

 

 

              所得税更正処分等取消請求事件

【事件番号】      大分地方裁判所判決/平成9年(行ウ)第6号

【判決日付】      平成13年9月25日

【判示事項】      (1) 所得税法36条1項、2項(収入金額)及び所得税法59条1項2号(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)に規定する「価額」の意義

             (2) 納税者が代表者となっている訴外O社の株式(取引相場のない株式)を、同族会社である訴外A社に納税者が譲渡したことについて、低廉譲渡として、課税庁がみなし譲渡所得課税を行ったことについて、本件譲渡取引に先立つ1年ないし2年前に、O社の役員がO社株式を訴外A社に対して譲渡しており、その譲渡価額は、本件取引価額と同額であって、①甲社役員の取引と本件取引との時間的間隔をもって、時価算定の参考にならないということはできないこと、②訴外A社は、甲社の従業員持株会社的側面を有するが、O社役員と訴外A社との取引が適正と認められないことを推認させる証拠はないこと、等からして本件取引は低廉譲渡にあたらないとして、低廉譲渡であるとの課税庁の主張が排斥された事例

             (3) 納税者が取引相場のない株式を訴外A社に譲渡し、課税庁が当該取引を低廉譲渡として、純資産額方式及び類似業種批准方式により「時価」を算定し、みなし譲渡所得課税を行ったことについて、本件各取引は、同族会社の株式を少数株主が取得する場合と認められ、譲受人A社は配当期待権以上のものを有せず、本件各取引の事情や本件取引の前に売買実例が存することを考慮すると、売買実例価額ないし配当還元方式によった場合と著しい差異が生じるのに、純資産額方式及び類似業種批准方式に依拠して時価を算定することはおよそ合理的であるとは認められず、適法であるということはできないとされた事例

【判決要旨】      (1) 所得税法36条1項、2項及び所得税法59条1項2号に規定する「価額」とは、いずれも譲渡所得の基因となる資産の移転の事由が生じた時点における時価、すなわち、その時点における当該資産等の客観的交換価値を指すものと解するべきであり、右交換価値とは、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間において自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額であって、いわゆる市場価格をいうものと解するのが相当である。

             (2)・(3) 省略

【掲載誌】        税務訴訟資料251号順号8982

 

所得税法

(収入金額)

第三十六条 その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。

2 前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。

3 無記名の公社債の利子、無記名の株式(無記名の公募公社債等運用投資信託以外の公社債等運用投資信託の受益証券及び無記名の社債的受益権に係る受益証券を含む。第百六十九条第二号(分離課税に係る所得税の課税標準)、第二百二十四条第一項及び第二項(利子、配当等の受領者の告知)並びに第二百二十五条第一項及び第二項(支払調書及び支払通知書)において「無記名株式等」という。)の剰余金の配当(第二十四条第一項(配当所得)に規定する剰余金の配当をいう。)又は無記名の貸付信託、投資信託若しくは特定受益証券発行信託の受益証券に係る収益の分配については、その年分の利子所得の金額又は配当所得の金額の計算上収入金額とすべき金額は、第一項の規定にかかわらず、その年において支払を受けた金額とする。

 

(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)

第五十九条 次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。

一 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)

二 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)

2 居住者が前項に規定する資産を個人に対し同項第二号に規定する対価の額により譲渡した場合において、当該対価の額が当該資産の譲渡に係る山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上控除する必要経費又は取得費及び譲渡に要した費用の額の合計額に満たないときは、その不足額は、その山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上、なかつたものとみなす。

 

所得税法施行令

(時価による譲渡とみなす低額譲渡の範囲)

第百六十九条 法第五十九条第一項第二号(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)に規定する政令で定める額は、同項に規定する山林又は譲渡所得の基因となる資産の譲渡の時における価額の二分の一に満たない金額とする。

 

 

 

       主   文

 

 1 被告が亡甲に対し、亡甲の平成4年分所得税につき、平成8年2月27日付けでした更正処分及び過少申告加算税の賦課決定をいずれも取り消す。

 2 被告が亡甲に対し、同日付けでした亡甲の平成5年分所得税の総所得金額を金1971万1098円と更正した処分のうち金502万5598円を超える部分及び過少申告加算税を金41万7000円とする賦課決定をいずれも取り消す。

 3 訴訟費用は被告の負担とする。