3ない原則を定めた校則に違反したことを理由の1つとしてされた私立高等学校の生徒に対する自主退学の勧告が違法とはいえないとされた事例
損害賠償請求事件
最高裁判所第3小法廷判決/平成元年(オ)第805号
平成3年9月3日
【判示事項】 いわゆる3ない原則を定めた校則に違反したことを理由の1つとしてされた私立高等学校の生徒に対する自主退学の勧告が違法とはいえないとされた事例
【判決要旨】 自動二輪車等について免許を取らない、乗らない、買わないの三原則を定めた私立高等学校の校則に違反したことを理由の一つとしてされた右高等学校の生徒に対する自主退学の勧告は、右生徒が、右原則のすべてに違反し、かつ、右生徒からその所有する自動二輪車を貸与された友人が警察官に重傷を負わせる事故を起こしたにもかかわらず、同人らと話し合って右事故を秘匿し、これらの行為について反省の態度を示さなかったこと、右生徒の母親は、右事故後、右自動二輪車を処分して校則に従うべき旨の学校側の説得に応ぜず、かえって、学校側の指導方針と真向から対立し、将来家庭の協力を得て右生徒を指導することが不可能といえる状態にあったことなど原判示の事実関係の下においては、違法とはいえない。
【参照条文】 民法709
【掲載誌】 最高裁判所裁判集民事163号203頁
判例タイムズ770号157頁
判例時報1401号56頁
民法
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人北光二、同滝沢繁夫、同田中三男の上告理由第一ないし第三について
所論は、いわゆる三ない原則を定めた本件校則(以下「本件校則」という。)及び本件校則を根拠としてされた本件自主退学勧告は、憲法一三条、二九条、三一条に違反する旨をいうが、憲法上のいわゆる自由権的基本権の保障規定は、国又は公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障することを目的とした規定であって、専ら国又は公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互間の関係について当然に適用ないし類推適用されるものでないことは、当裁判所大法廷判例(昭和四三年(オ)第九三二号同四八年一二月一二日判決・民集二七巻一一号一五三六頁)の示すところである。したがって、その趣旨に徴すれば、私立学校である被上告人設置に係る高等学校の本件校則及び上告人が本件校則に違反したことを理由の一つとしてされた本件自主退学勧告について、それが直接憲法の右基本権保障規定に違反するかどうかを論ずる余地はないものというべきである。所論違憲の主張は、採用することができない。そして、所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り、原審の確定した事実関係の下においては、本件校則が社会通念上不合理であるとはいえないとした原審の判断は、正当として是認することができる。右判断は、所論引用の判例と抵触するものではない。原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するか、又は原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。
同第四及び第五について
所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯することができる(なお、所論は、原判決は上告人が自発的に退学願を提出した旨認定したとしてこれを非難するが、原判決の認定判示するところは、被上告人は上告人に対して自主退学を勧告したもので退学処分をしたものではないというにとどまるのであって、右非難は当たらない。)。そして、上告人の行為の態様、反省の状況及び上告人の指導についての家庭の協力の有無・程度など、原審の確定した事実関係の下においては、上告人に対してされた本件自主退学勧告が違法とはいえないとした原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するか、又は原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。
よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。