会社法の平成26年改正その7 第7章 事業報告の記載事項 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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第7章 事業報告の記載事項

株式会社は、各事業年度の事業報告及びその附属明細書を作成しなければなりません(会社法435条第2項)。

 

事業報告の記載事項は、会社法施行規則118条以降に定められています。まずすべての会社に共通して記載すべき事項を規定したうえで、公開会社(株式に譲渡制限を定めていない会社)における記載事項(同119条~)、会計参与設置会社における記載事項(会社法施行規則125条)、会計監査人設置会社における記載事項(同126条)を規定しています。

 

・すべての会社に共通して事業報告に記載すべき事項(施行規則118)

 

(1) 株式会社の状況に関する重要な事項のうち、計算書類およびその附属明細書ならびに連結計算書類の内容となる事項以外のもの

 

(2)業務の適正を確保するための体制の整備についての決定または決議があるときは、その決定または決議の内容の概要及び当該体制の運用状況の概要 

 

(3) 株式会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針を定めているときは、その概要等 

 

(4) 株式会社に特定完全子会社(※)がある場合には、その名称等

 

(5) 株式会社とその親会社等との間の取引であり、当該株式会社の事業年度に係る個別注記表において関連当事者注記を要する取引がある場合には、当該取引に関する事項 

 

※特定完全子会社とは、事業年度の末日において、当該子会社等の株式の帳簿価額が、当該株式会社の当該事業年度に係る貸借対照表の資産の部の合計額の5分の1を超え、かつ、その株式等の全部を保有する子会社等をいいます。定款で定めれば5分の1を下回る割合を定めることもできます。

 

(2) について、業務の適正を確保するための体制の運用状況の概要まで記載することが求められるようになりました。

 

(4) 特定完全子会社及び(5)親会社等との取引に関する事項が新規に追加されました。

 

第8章 公開会社における事業報告の記載事項

公開会社の事業報告には、追加で(1)株式会社の現況に関する事項、(2)会社役員に関する事項、(3)株式に関する事項、(4)新株予約権等に関する事項を記載します。

 

(1) 株式会社の現況に関する事項(施行規則120)※

① 主要な事業内容

② 主要な営業所、工場並びに使用人の状況

③ 主要な借入先、借入額

④ 当該事業年度の事業の経過及び成果

⑤ 重要な資金調達、設備投資の状況、及び合併、会社分割、事業譲渡等の状況

⑥ 直前3事業年度の財産及び損益の状況

⑦ 重要な親会社及び子会社の状況

⑧ 対処すべき課題

⑨ その他会社の現況に関する重要な事項

 

(2) 会社役員に関する事項(施行規則121)

① 役員の氏名、地位及び担当、重要な兼職の状況

② 役員と責任限定契約を締結しているときは、当該契約の内容の概要

③ 役員の報酬に関する事項

④ 役員の辞任又は解任に関する事項

⑤ 監査役等の財務及び会計に関する知見の記載

⑥ 常勤の監査等委員、監査委員の選定の有無及びその理由

⑦ その他役員に関する重要な事項

※社外役員について、次の事項を記載する必要があります。すなわち、大会社かつ有価証券報告書提出会社の監査役設置会社であり社外取締役を置いていない場合、社外取締役を置くことが相当でない理由を事業報告に記載する必要があります。なお、社外監査役が2名以上であることのみをもって、当該理由とすることはできません(施行規則124条第2項、3項)。

 

責任限定契約に関する記載が新規に追加されました。

 

⑥ 事業年度末において監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社である場合、常勤の監査等委員に関する事項を記載することが追加されました。

 

 

第9章 事業報告の附属明細書

事業報告の附属明細書には、事業報告の内容を補足する重要な事項を記載するものとされています。また、公開会社においては、役員の他の会社の業務執行取締役など重要な兼職の状況を記載します(施行規則128条第1項、第2項)。

なお、会計監査人設置会社以外の公開会社において、親会社等との一定の関連当事者取引について個別注記表での注記を省略する場合、事業報告の附属明細書において、一定事項の記載を行うことになります(施行規則128条第3項)。

 

会計監査人設置会社以外の公開会社において、株式会社とその親会社等との取引について、事業報告の附属明細書に記載する場合の取扱いが追加されました。