在日米国大使館に勤務する日本人職員の給与についての米国の源泉徴収義務の有無(消極) 東京高等裁 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

在日米国大使館に勤務する日本人職員の給与についての米国の源泉徴収義務の有無(消極)

 

東京高等裁判所/平成16年(行コ)第184号

平成16年11月30日

所得税更正処分等取消請求控訴事件

【判示事項】    1 在日米国大使館に勤務する日本人職員の給与についての米国の源泉徴収義務の有無(消極)

2 米国大使館に勤務する職員が実際に支給を受けた給与の1部を除外して申告していた行為が,国税通則法70条5項にいう「偽りその他不正の行為」に当たるとされた事例

【判決要旨】    (1) 国際社会を構成する各国家は、それぞれ主権を有し、法的には相互に平等であり、国家が他の国家に一定の行為を強制することは国家間に合意があって初めてできるものであるから、当該合意がなければ国際法における否定を待つまでもなく、国家が他の国家に一定の行為を強制することはできないものであり、課税権についても、国家が他の国家の課税権に服するのは条約その他の合意がある場合に限られ、国家が他の国家に対して、1方的に課税権を行使することは原則としてできないとするのが、国際法上の法原理というべきである。

          (2)・(3) 省略

          (4) 国税通則法70条5項(国税の更正、決定等の期間制限)にいう「偽りその他不正の行為」とは、税額を免れる意図の下に、税の賦課徴収を不能又は著しく困難にするような何らかの偽計その他の工作を伴う不正な行為を行っていることをいうものと解すべきである。そうすると、単なる不申告行為はこれに含まないものの、納税者が真実の所得を秘匿し、それが課税の対象となることを回避する意思の下に、所得額をことさらに過少にした内容虚偽の所得税確定申告書を提出することにより、納付すべき税額を過少にして、本来納付すべき税額との差額を免れようとするような態様の過少申告行為も、単なる不申告に止まらず、偽りの工作的不正行為ということができるから、「偽りその他不正の行為」に該当するものというべきである。

          (5) 省略

          (6) 国税通則法65条4項(過少申告加算税)の「正当な理由」とは、申告した税額に不足が生じたことについて、通常の状態において納税者が知り得ることができなかった場合や、納税者の責めに帰すことができない事情等、真にやむ得ない理由があると認められる場合を指すものと解される。

【参照条文】    所得税法183-1

          国税通則法70-5

【掲載誌】     訟務月報51巻9号2512頁

          税務訴訟資料254号順号9841

 

所得税法

(源泉徴収義務)

第百八十三条 居住者に対し国内において第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(以下この章において「給与等」という。)の支払をする者は、その支払の際、その給与等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。

2 法人の法人税法第二条第十五号(定義)に規定する役員に対する賞与については、支払の確定した日から一年を経過した日までにその支払がされない場合には、その一年を経過した日においてその支払があつたものとみなして、前項の規定を適用する。

 

 

国税通則法

(納税の告知)

第三十六条 税務署長は、国税に関する法律の規定により次に掲げる国税(その滞納処分費を除く。次条において同じ。)を徴収しようとするときは、納税の告知をしなければならない。

一 賦課課税方式による国税(過少申告加算税、無申告加算税及び前条第三項に規定する重加算税を除く。)

二 源泉徴収等による国税でその法定納期限までに納付されなかつたもの

三 自動車重量税でその法定納期限までに納付されなかつたもの

四 登録免許税でその法定納期限までに納付されなかつたもの

2 前項の規定による納税の告知は、税務署長が、政令で定めるところにより、納付すべき税額、納期限及び納付場所を記載した納税告知書を送達して行う。ただし、担保として提供された金銭をもつて消費税等を納付させる場合その他政令で定める場合には、納税告知書の送達に代え、当該職員に口頭で当該告知をさせることができる。

 

 

外交関係に関するウィーン条約

前文

この条約の当事国は、

 すべての国の国民が古くから外交官の地位を承認してきたことを想起し、

 国の主権平等、国際の平和及び安全の維持並びに諸国間の友好関係の促進に関する国際連合憲章の目的及び原則に留意し、

 外交関係並びに外交上の特権及び免除に関する国際条約が、国家組織及び社会制度の相違にかかわらず、諸国間の友好関係の発展に貢献するであろうことを信じ、

 このような特権及び免除の目的が、個人に利益を与えることにあるのではなく、国を代表する外交使節団の任務の能率的な遂行を確保することにあることを認め、

 この条約の規定により明示的に規制されていない問題については、引き続き国際慣習法の諸規則によるべきことを確認して、

 次のとおり協定した。