荒天と滞船料控除の事実たる慣習
売買代金等請求事件
【事件番号】 東京地方裁判所判決/昭和40年(ワ)第3655号
【判決日付】 昭和43年7月13日
【判示事項】 1、荒天と滞船料控除の事実たる慣習
2、債務者の責に帰すべからざる事由による滞船と滞船料支払義務
【参照条文】 民法92
【掲載誌】 判例タイムズ227号193頁
【評釈論文】 別冊ジュリスト34号14頁
別冊ジュリスト42号226頁
別冊ジュリスト55号220頁
別冊ジュリスト121号164頁
民法
(任意規定と異なる慣習)
第九十二条 法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。
判 決 理 由
被告は、滞船料算定の基礎となる碇泊日数は荒天による荷役不能の場合、その期間を控除するのが事実たる商慣習であり、伏木港において滞船期間中昭和三六年一〇月二〇日、同二二日、同二五日および同三〇日の四日間が荒天のため荷役不能であつたと主張する。〈証拠〉をそう合すれば、滞船料の計算については許容碇泊期間内の荒天による荷役不能の期間は滞船料の計算から控除されるが、許容碇泊期間を経過したのちは荒天のための荷役不能期間は控除しないのが事実たる商慣習であることが認められる。
滞船料の約定は、許容碇泊期間内に荷揚げ(または荷積み)をすることを遅滞したことに対する一種の債務不履行に基づく損害賠償額の予定であると解するのが相当であるから、被告の責に帰しえない碇泊日数は滞船料の計算から控除すベきであり、〈証拠〉をそう合すれば、新潟港渡し木材の荷揚げに際し、多数の水上に浮上しないいわゆる沈木を生じたため、昭和三六年一一月七日は一日中および同八日は午前中は掃海のため荷揚げができなかつたこと、同八日の午後は北朝鮮からの帰還船が入港したため荷揚げができなかつたことが認められ、右沈木および帰還船入港を原因とする荷揚げ不能期間は被告の責に帰しえない事由によるものであるというべきであるから、右期間を同港における碇泊日数から控除して滞船料を計算すべきである。(荒木大任武田平次郎 上村多平)