戦争犯罪人につき、その拘束の根拠である平和条約第11条並びに「平和条約第11条による刑の執行及び赦免等に関する法律が違憲であるとの主張を前提としてなす人身保護法によるその釈放請求の当否。
人身保護法による釈放請求事件
【事件番号】 最高裁判所大法廷決定/昭和28年(ク)第55号
【判決日付】 昭和29年4月26日
【判示事項】 戦争犯罪人につき、その拘束の根拠である平和条約第11条並びに「平和条約第11条による刑の執行及び赦免等に関する法律が違憲であるとの主張を前提としてなす人身保護法によるその釈放請求の当否。
【判決要旨】 平和条約第11条並びに「平和条約第11条による刑の執行及び赦免等に関する法律に基いて拘束されている戦争犯罪人につき、右条約及び法律が違憲であるとの主張を前提として、人身保護法によりその釈放を請求することは許されない。
(少数意見がある)
【参照条文】 平和条約11
昭和27年法律第103号5
昭和27年法律第103号6
人身保護法1
人身保護法2
人身保護法11
憲法31
憲法9
憲法97
憲法98
憲法99
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集8巻4号848頁
憲法
第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
第九十八条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
② 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
平和条約
平和条約第11条には、日本は戦犯裁判を受諾して其の刑を執行し、戦犯の赦免、減刑及び仮出所については、日本の勧告に基いて、BC級については、其の刑を言渡した国々の決定、A級については、東京裁判に代表判事を送った国の過半数の決定によるということになっている。
人身保護法
第二条 法律上正当な手続によらないで、身体の自由を拘束されている者は、この法律の定めるところにより、その救済を請求することができる。
② 何人も被拘束者のために、前項の請求をすることができる。
第十一条 準備調査の結果、請求の理由のないことが明白なときは、裁判所は審問手続を経ずに、決定をもつて請求を棄却する。
② 前項の決定をなす場合には、裁判所は、さきになした前条の処分を取消し、且つ、被拘束者に出頭を命じ、これを拘束者に引渡す。
人身保護法規則
(請求の要件)
第四条 法第二条の請求は、拘束又は拘束に関する裁判若しくは処分がその権限なしにされ又は法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著である場合に限り、これをすることができる。但し、他に救済の目的を達するのに適当な方法があるときは、その方法によつて相当の期間内に救済の目的が達せられないことが明白でなければ、これをすることができない。