元監査役からの閉鎖登記簿の抹消登記手続を求める訴えと訴えの利益(積極)
監査役辞任登記の抹消登記等請求事件
【事件番号】 東京地方裁判所判決/昭和61年(ワ)第5264号、昭和61年(ワ)第5265号
【判決日付】 昭和63年7月7日
【判示事項】 一、元監査役からの閉鎖登記簿の抹消登記手続を求める訴えと訴えの利益(積極)
二、元監査役からの辞任登記抹消請求について辞任の日が実体と異なるにすぎないため更正登記の対象となりうるにすぎないことを理由に棄却した事例
三、役員選任の株主総会決議取消しの訴えの係属中に当該役員が退任した場合と訴えの利益(消極)
四、名誉毀損を理由とする損害賠償請求を棄却した事例
【判決要旨】 商業登記簿の役員欄は、現在の役員構成を公示するとともに、過去の役員の就任、退任、辞任等の経過をも公示する機能を有していることにかんがみると、これにつき誤った登記がなされたために第三者が直接に利益を害される場合には、右第三者は、右登記を是正するため、会社に対し商業登記法による抹消登記手続を求めることができると解すべきである。
【参照条文】 商業登記法107
商業登記法109
商法247
商法280-1
商法258-1
民法709
商法266の3
【掲載誌】 判例タイムズ670号206頁
金融・商事判例817号29頁
判例時報1284号131頁
金融法務事情1214号38頁
事案の概要
一、原告は、公認会計士であり、昭和59年10月21日、被告両社の監査役に就任したが、被告両社が、昭和61年3月7日、原告が昭和60年2月26日被告両社の監査役を辞任した旨の辞任届を偽造して原告が監査役を辞任した旨の登記をなしたとしてその抹消登記手続を求めるとともに、被告両社が右登記をなしたうえ、原告を無視して取締役会を開催し、また取引金融機関等に原告が辞任した旨の虚偽の事実を告知して原告の公認会計士としての名誉信用を侵害したことを理由に、被告両社に対する不法行為責任に基づく損害賠償と、被告両社の代表取締役に対する商法266条ノ3に基づく損害賠償を求め、さらに被告国土開発株式会社の取締役及び監査役を選任した株主総会決議が原告を招集しなかった取締役会決議に基づくとしてその取消しを求めたが、本判決は、抹消登記請求及び損害賠償請求を棄却し、決議取消しの訴えを却下した。
二、本判決は、まず、抹消登記手続請求について判断し、現在の給付請求であるから訴えの利益が認められるとした。
現在の給付請求についてはそのことだけで訴えの利益を肯定するのが通説であり、本判決も通説を採用したものであろう。
三、次に、本判決は、総会決議取消しの訴えについて判断し、本件訴訟の係属中に当該決議に基づき選任された取締役及び監査役の任期が満了し、その後の株主総会の決議によって取締役及び監査役全員が新たに選任されたため、取消しを求める選任決議に基づく役員全員が現存しなくなっているため特別の事情が認められない限り訴えの利益を欠くにいたるところ、特別の事情が認められないから、現在監査役の地位にはない原告に原告適格がないとする被告の主張について判断するまでもなく、訴えの利益を欠くとして却下した。
商業登記法
(取締役等の変更の登記)
第五十四条 取締役、監査役、代表取締役又は特別取締役(監査等委員会設置会社にあつては監査等委員である取締役若しくはそれ以外の取締役、代表取締役又は特別取締役、指名委員会等設置会社にあつては取締役、委員(指名委員会、監査委員会又は報酬委員会の委員をいう。)、執行役又は代表執行役)の就任による変更の登記の申請書には、就任を承諾したことを証する書面を添付しなければならない。
2 会計参与又は会計監査人の就任による変更の登記の申請書には、次の書面を添付しなければならない。
一 就任を承諾したことを証する書面
二 これらの者が法人であるときは、当該法人の登記事項証明書。ただし、当該登記所の管轄区域内に当該法人の主たる事務所がある場合を除く。
三 これらの者が法人でないときは、会計参与にあつては会社法第三百三十三条第一項に規定する者であること、会計監査人にあつては同法第三百三十七条第一項に規定する者であることを証する書面
3 会計参与又は会計監査人が法人であるときは、その名称の変更の登記の申請書には、前項第二号に掲げる書面を添付しなければならない。ただし、同号ただし書に規定する場合は、この限りでない。
4 第一項又は第二項に規定する者の退任による変更の登記の申請書には、これを証する書面を添付しなければならない。
会社法
(登記の効力)
第九百八条 この法律の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、同様とする。
2 故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない。
(株主総会等の決議の取消しの訴え)
第八百三十一条 次の各号に掲げる場合には、株主等*(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより株主(当該決議が創立総会の決議である場合にあっては、設立時株主)又は取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。以下この項において同じ。)、監査役若しくは清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役)又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。
一 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。
二 株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。
三 株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。
2 前項の訴えの提起があった場合において、株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、同項の規定による請求を棄却することができる。
*注、株主等とは、828条2項によち、株主、取締役又は清算人(監査役設置会社にあっては株主、取締役、監査役又は清算人、指名委員会等設置会社にあっては株主、取締役、執行役又は清算人)をいう。