信楽高原鐵道線・損害賠償請求控訴事件 損害賠償請求控訴事件、仮執行の原状回復及び損害賠償申立 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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信楽高原鐵道線・損害賠償請求控訴事件

 

 

損害賠償請求控訴事件、仮執行の原状回復及び損害賠償申立事件、損害賠償請求附帯控訴事件

【事件番号】      大阪高等裁判所判決/平成11年(ネ)第1954号、平成11年(ネ)第1955号、平成13年(ネ)第449号

【判決日付】      平成14年12月26日

【判示事項】      一 単線である信楽高原鐵道線において、信楽高原鐵道(株)所有の列車と、同線に直通乗り入れしていた西日本旅客鉄道(株)所有の列車とが正面衝突する事故が発生し、両列車に乗車していた乗客が死亡した事案において、前記直通乗り入れに関与していた西日本旅客鉄道(株)の従業員は、前記事故発生以前に生じた信楽高原鐵道線の信号機故障の際に施行された代用閉そく方式において信楽高原鐵道(株)の従業員が行っていた同方式の違反行為を現認し、又はこれを知ることができたのであるから、西日本旅客鉄道(株)の前記従業員にはこれを自己が所属する部ないし課の上司に対し報告すべき義務があったにもかかわらず、これを怠った過失があると認定された事例

             二 前記一の事案において、西日本旅客鉄道(株)の直通乗り入れに関与する乗務員に対する教育及び訓練を担当する部署及び安全に関する事項を総括する部署の各責任者並びにこれらの責任者を指導及び監督すべき者には、直通乗り入れに関与する西日本旅客鉄道(株)の従業員が前記一の報告をする体制を確立すべき義務があったにもかかわらず、これらを怠った過失があると認定された事例

             三 西日本旅客鉄道(株)の従業員による前記一又は二の過失がなければ、本件事故は発生しておらず、また、同人らが本件事故の発生を予見することが可能であったので、前記一又は二の過失と本件事故との間には因果関係があると認定された事例

             四 他社線に直通乗り入れをした列車の乗務員が不法行為を行った場合であっても、その不法行為によって損害を被った者に対し、使用者責任を負うとされた事例

【参照条文】      民法709

             民法715

             民法719

【掲載誌】        判例タイムズ1116号93頁

             判例時報1812号3頁

 

 

民法

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

(使用者等の責任)

第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。

3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

 

(共同不法行為者の責任)

第七百十九条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。

2 行為者を教唆した者及び幇ほう助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。

 

 

 

       主   文

 

1 1審被告の本件控訴を棄却する。

2 1審原告A1及び1審原告A2の附帯控訴に基づき,原判決中同1審原告らに関する部分を,次のとおり変更する。

(1) 1審被告は,1審原告A1及び1審原告A2に対し,それぞれ3491万7993円及びこれに対する平成3年5月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

(2) 1審原告A1及び1審原告A2のその余の請求をいずれも棄却する。

3 その余の1審原告らの附帯控訴をいずれも棄却する。

4 1審原告A1及び1審原告A2と1審被告との間に生じた訴訟費用は,1,2審を通じて,これを2分し,その1を同1審原告らの負担とし,その余を1審被告の負担とし,控訴費用(1審原告A1及び1審原告A2に関する部分を除く。)は1審被告の負担とし,その余の1審原告らの附帯控訴費用は同1審原告らの負担とする。

5 この判決は,2項の(1)に限り,仮に執行することができる。

 

       事実及び理由

 

第1 申立て

1 平成11年(ネ)第1954号事件

(1) 原判決中,1審被告敗訴部分を取り消す。

(2) 前項の取消部分にかかる1審原告らの請求をいずれも棄却する。

2 平成11年(ネ)第1955号事件

(1) 1審原告らは,1審被告に対し,それぞれ別表1「支払金額一覧表」の「支払金額」欄記載の各金員及びこれに対する平成11年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(仮執行の原状回復の申立て)。

(2) 仮執行宣言

3 平成13年(ネ)第449号事件

(1) 原判決主文二項のうち,1審原告らが1審被告に対しそれぞれ別表2「附帯控訴に基づく請求一覧表」の「請求金額」欄記載の各金員及びこれに対する平成3年5月14日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払いを求める請求を棄却した部分を取り消す。

(2) 1審被告は,1審原告らに対し,それぞれ別表2「附帯控訴に基づく請求一覧表」の「請求金額」欄記載の金員及びこれに対する平成3年5月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

(3) (2)につき仮執行宣言

第2 事案の概要等

1 事案の概要

 本件は,1審被告が自己の所有する列車を信楽高原鐵道線に直通乗入運転をしていた際に,同線路上で信楽高原鐵道株式会社(以下,「SKR」という。)が所有及び運転する列車と正面衝突する事故(いわゆる「信楽高原鐵道列車事故」)が発生し,同事故によって両列車に乗車していた乗客が死亡したことから,その相続人である1審原告らが,1審被告に対し,民法709条(予備的に商法261条3項,同法78条2項,民法44条1項),民法715条,旅客運送契約の債務不履行又は安全配慮義務違反に基づき,上記事故によって被った損害の賠償を求めた事案である。

 原審は,1審原告らの民法715条に基づく請求を認め,その請求を一部認容する判決を言い渡した。

 1審被告は,原審の判断を不服として,原判決のうち1審原告の請求を認容した部分を取り消し,同請求を棄却するよう求めて,本件控訴を提起するとともに,1審原告らに対し,原判決の仮執行宣言に基づき支払った金員の返還を求めている。

 他方,1審原告らは,1審原告らの損害を認めなかった原審の判断のうち一部を不服として,原判決の1審原告らの請求を棄却した部分のうち一部を取り消し,同部分の請求を認容するよう求めて,附帯控訴を提起した。

 なお,1審原告らは,本訴において,1審被告とともに,SKRに対しても,民法709条(予備的に商法261条3項,同法78条2項,民法44条1項),民法715条又は旅客運送契約の債務不履行に基づき,損害の賠償を求めたが,原審はその請求を一部認容する判決を言い渡し,同判決は確定している。