中古自動車が走行中に発火して燃焼した事案につき、自動車製造会社の製造物責任が否定された事例
損害賠償請求事件
【事件番号】 大阪地方裁判所判決/平成12年(ワ)第10247号
【判決日付】 平成14年9月24日
【判示事項】 中古自動車が走行中に発火して燃焼した事案につき、自動車製造会社の製造物責任が否定された事例
【参照条文】 民法415
民法709
製造物責任法3
【掲載誌】 判例タイムズ1129号174頁
本判決は、本件車両が発火した原因について、エンジンルーム内の右前照灯後方のコルゲートチューブ(PP材)及びその内部に封入されたワイヤーハーネス芯線が露出し、直接あるいは金属類の介在物を通して間接に、この芯線露出部(プラス側)と車体鉄板(マイナス側)が接触することとなり、電気火花(漏電現象)とアーク放電(トラッキング現象)が発生したことにあるとした。
もっとも、製造物責任、不法行為責任の根拠となり発火の具体的原因として挙げられる、(1)「製造当時にワイヤーハーネス芯線が露出して車体鉄板と直接接触していたり、異物が混入してその時点でワイヤーハーネス芯線と車体鉄板との間に異物が介在していた可能性」については、もしそのような状態であったのであれば、初年登録時から早々の時期に発火・出火していた可能性が高いから、初年登録時から約二年四か月後に発火・出火した本件車両にそのような状態が生じていた可能性は極めて低いとした。さらに、(2)「製造当時に鋭利な異物が混入し、本件車両の出荷後にワイヤーハーネス芯線の被覆等を損傷させ、直接又は介在物を通して間接にワイヤーハーネス芯線と車体鉄板を接触させた可能性」についても、本件車両の前所有者が使用していた際や整備過程において異物が混入する可能性もないとはいえないとして、結局、被告の不法行為責任、製造物責任を否定した。
また、製造物責任法における「欠陥」の立証に関する一応の推定という理論については、本件車両が中古車であったこと、被告以外の第三者による整備点検が本件車両に繰り返されていたことを重視して否定している。
そして、本件車両に(1)TRC、ABS、VSCの警告灯が点灯して消えなくなる等の不具合が生じた時や、(2)カリカリという音がする不具合が生じた時に、本件発火部分の異常も含めて修理すべきであったとする債務不履行責任の主張についても、本判決は、それら不具合の原因を具体的に検討した結果、本件発火と直接は関係がないとして否定している。
民法
(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
製造物責任法
(定義)
第二条 この法律において「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう。
2 この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。
3 この法律において「製造業者等」とは、次のいずれかに該当する者をいう。
一 当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者(以下単に「製造業者」という。)
二 自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示(以下「氏名等の表示」という。)をした者又は当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者
三 前号に掲げる者のほか、当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者
(製造物責任)
第三条 製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。