先行事故に係る保険金支払請求が詐欺によるものとして重大事由解除に該当し、本件事故が被保険者の故意 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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先行事故に係る保険金支払請求が詐欺によるものとして重大事由解除に該当し、本件事故が被保険者の故意または重過失によって生じたものであるとして保険者の免責が認められた事例

 

 

              保険金請求控訴事件

【事件番号】      広島高等裁判所判決/令和2年(ネ)第322号

【判決日付】      令和3年3月12日

【判示事項】      先行事故に係る保険金支払請求が詐欺によるものとして重大事由解除に該当し、本件事故が被保険者の故意または重過失によって生じたものであるとして保険者の免責が認められた事例

【判決要旨】      1 控訴人は、先行事故自体が発生していないにもかかわらず、これが発生したかのように装って、被控訴人に対し、先行事故に係る保険金の支払を請求したというべきであり、これは、重大事由(被保険者が保険金の請求について詐欺を行い、または行おうとしたこと)に当たるものというほかない。

             2 本件事故の原因となった控訴人の行為については、ほとんど故意に等しい注意欠如の状態に当たる。

【参照条文】      保険法17-1

             保険法30

             保険法31

             保険法35

             保険法80

             保険法86

             保険法88

【掲載誌】        金融・商事判例1618号21頁

 

 

保険法

(保険者の免責)

第十七条 保険者は、保険契約者又は被保険者の故意又は重大な過失によって生じた損害をてん補する責任を負わない。戦争その他の変乱によって生じた損害についても、同様とする。

2 責任保険契約(損害保険契約のうち、被保険者が損害賠償の責任を負うことによって生ずることのある損害をてん補するものをいう。以下同じ。)に関する前項の規定の適用については、同項中「故意又は重大な過失」とあるのは、「故意」とする。

 

(重大事由による解除)

第三十条 保険者は、次に掲げる事由がある場合には、損害保険契約を解除することができる。

一 保険契約者又は被保険者が、保険者に当該損害保険契約に基づく保険給付を行わせることを目的として損害を生じさせ、又は生じさせようとしたこと。

二 被保険者が、当該損害保険契約に基づく保険給付の請求について詐欺を行い、又は行おうとしたこと。

三 前二号に掲げるもののほか、保険者の保険契約者又は被保険者に対する信頼を損ない、当該損害保険契約の存続を困難とする重大な事由

 

(解除の効力)

第三十一条 損害保険契約の解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。

2 保険者は、次の各号に掲げる規定により損害保険契約の解除をした場合には、当該各号に定める損害をてん補する責任を負わない。

一 第二十八条第一項 解除がされた時までに発生した保険事故による損害。ただし、同項の事実に基づかずに発生した保険事故による損害については、この限りでない。

二 第二十九条第一項 解除に係る危険増加が生じた時から解除がされた時までに発生した保険事故による損害。ただし、当該危険増加をもたらした事由に基づかずに発生した保険事故による損害については、この限りでない。

三 前条 同条各号に掲げる事由が生じた時から解除がされた時までに発生した保険事故による損害

 

 

 

       主   文

 

 1 本件控訴を棄却する。

 2 控訴費用は控訴人の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。

2 被控訴人は、控訴人に対し、7321万7604円及びこれに対する平成28年7月9日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

3 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。

第2 事案の概要

1 要旨

 本件は、控訴人が、被控訴人との間で、控訴人名義の自動車(以下「本件車両」という。)につき自動車保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結し、また、被控訴人を保険者とする団体保険契約(以下「本件団体保険契約」という。)の被保険者とされていたところ、これらの保険期間中に、本件車両を運転中に起こした交通事故(以下「本件事故」という。)により受傷したなどと主張して、被控訴人に対し、本件保険契約に基づく人身傷害等の保険金(5680万7604円)及び本件団体保険契約の傷害補償特約等に基づく保険金(1641万円)の合計7321万7604円並びにこれらに対する平成28年7月9日(訴状送達日の翌日。ただし、上記請求額は平成29年10月11日付け訴えの変更申立書(同月17日被控訴人送達)による請求の趣旨の拡張により変更されたもの)から支払済みまで商事法定利率(平成29年法律第45号による削除前のもの)年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

 原審は、控訴人の請求をいずれも棄却したところ、控訴人がこれを不服として本件控訴を提起した。