保護の可能性と刑法第二一八条一項後段の罪の成立。 保護者幼者遺棄致死 最高裁判決 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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保護の可能性と刑法第二一八条一項後段の罪の成立。

 

 

              保護者幼者遺棄致死

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和26年(あ)第2746号

【判決日付】      昭和27年12月9日

【判示事項】      保護の可能性と刑法第二一八条一項後段の罪の成立。

【判決要旨】      刑法二一八条一項後段の罪の成立するためには、常に必ず事実上保護することが可能であるにかかわらず保護しなかつたことを必要とする趣旨と解することはできない。

【参照条文】      刑法218

【掲載誌】        最高裁判所裁判集刑事70号285頁

 

 

刑法

(保護責任者遺棄等)

第二百十八条 老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。

 

 

 

 

       主   文

 

     本件上告を棄却する。

     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

 

       理   由

 

  被告本人の上告趣意及び弁護人岡村玄治の上告趣意は後記書面のとおりである。

  被告本人の上告組意は原判決の事実認定を争うのであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

  弁護人岡村玄治の上告趣意(一)の論旨は、原判決の判例違反を主張するのであるが、その引用にかかる各判例によつても、所論のように、刑法二一八条一項後段の罪の成立するためには、常に必ず事実上保護することが可能であるにかかわらず保護しなかつたことを必要とする趣旨と解することはできない。従つて右各判例は本件の場合に適切とはいえない。のみならず所論は、原判決の事実認定と異なる独自の推認に基くものであつて、結局事実誤認を主張するに帰し、いずれにしても理由がない。同(ニ)において所論の引用する大審院判例は、緊急避難行為者が刑事責任を免れても損害を蒙つた他人に対する民事上の賠償責任を負担するという趣旨であつて、所論についても適切でないばかりでなく、結局本件を目して緊急避難であるという独自の見解に立つて原判決の事実誤認を主張し、延いて量刑不当に及んでいるのであるから、論旨はとることはできない。

 その他記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

 よつて同四〇八条、一八一条により主文のとおり判決する。

 この判決は、裁判官全員一致の意見である。

   昭和二七年一二月九日

               最高裁判所第三小法廷