北方ジャーナル事件 損害賠償請求事件 最高裁判所大法廷判決 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

北方ジャーナル事件

 

 

              損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所大法廷判決/昭和56年(オ)第609号

【判決日付】      昭和61年6月11日

【判示事項】      1、出版物の印刷、製本、販売、頒布等の仮処分による事前差止めと憲法21条2項前段にいう「検閲」

             2、名誉侵害と侵害行為の差止請求権

             3、公務員または公職選挙の候補者に対する評価、批判等に関する出版物の印刷、製本、販売、頒布等の事前差止の許否

             4、公共の利害に関する事項についての表現行為の事前差止めを仮処分によって命ずる場合と口頭弁論または債務者の審尋

【判決要旨】      1、雑誌その他の出版物の印刷、製本、販売、頒布等の仮処分による事前差止めは、憲法21条2項前段にいう「検閲」には当たらない。

             2、名誉侵害の被害者は、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対して、現に行われている侵害行為を排除し、または将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができる。

             3、人格権としての名誉権に基づく出版物の印刷、製本、販売、頒布等の事前差止めは、右出版物が公務員または公職選挙の候補者に対する評価、批判等に関するものである場合には、原則として許されず、その表現内容が真実でないかまたはもっぱら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときに限り、例外的に許される。

             4、公共の利害に関する事項についての表現行為の事前差止めを仮処分によって命ずる場合には、原則として、口頭弁論または債務者の審尋を経ることを要するが、債権者の提出した資料によって、その表現内容が真実でないかまたはもっぱら公益を図る目的のものでないことが明白であり、かつ、債務者が重大にして著しく回復困難な損害を生ずる虞あると認められるときは、口頭弁論または債務者の審尋を経なくても、憲法21条の趣旨に反するものとはいえない。

【参照条文】      民事訴訟法760

             憲法21-2

             民法1の2

             民法198

             民法199

             民法709

             民法710

             刑法230の2

             憲法13

             憲法21

             民事訴訟法757-2

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集40巻4号872頁

 

 

憲法

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 

 

民事保全法

(仮処分命令の必要性等)

第二十三条 係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。

2 仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。

3 第二十条第二項の規定は、仮処分命令について準用する。

4 第二項の仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。ただし、その期日を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。

 

 

民法

(基本原則)

第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

3 権利の濫用は、これを許さない。

 

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(財産以外の損害の賠償)

第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

 

 

刑法

(公共の利害に関する場合の特例)

第二百三十条の二 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。

3 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。