商法626条3項にいう「倉庫業者ニ悪意アリタル場合」の「悪意」の意義 損害賠償請求事件 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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商法626条3項にいう「倉庫業者ニ悪意アリタル場合」の「悪意」の意義

 

 

損害賠償請求事件

【事件番号】      宮崎地方裁判所延岡支部判決/昭和46年(ワ)第114号

【判決日付】      昭和50年3月11日

【判示事項】      商法626条3項にいう「悪意アリタル場合」の意義

【参照条文】      商法626

             商法566

【掲載誌】        判例時報782号89頁

 

 

民法

(寄託者による損害賠償)

第六百六十一条 寄託者は、寄託物の性質又は瑕疵によって生じた損害を受寄者に賠償しなければならない。ただし、寄託者が過失なくその性質若しくは瑕疵を知らなかったとき、又は受寄者がこれを知っていたときは、この限りでない。

 

(損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限)

第六百六十四条の二 寄託物の一部滅失又は損傷によって生じた損害の賠償及び受寄者が支出した費用の償還は、寄託者が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。

2 前項の損害賠償の請求権については、寄託者が返還を受けた時から一年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

 

 

 

 

 

(1) 再抗弁一について、

 商法六二六条三項に規定する「倉庫業者ニ悪意アリタル場合」の「悪意」の意義については、同条が倉庫業者の責任について短期消滅時効を定めた趣旨を大量の寄託物を取扱う倉庫営業の性質に基づく証拠保全の困難の救済をはかり、もって倉庫業者の責任関係全体を速やかに解決せしめ、倉庫営業を保護することにあると理解されるべきことからすれば、この保護を奪う事由たる同条三項の「悪意」についてはなるべく制限的に解するのが相当というべく、倉庫業者又はその履行補助者が寄託物に故意に損害を生ぜしめ、あるいは損害を故意に隠蔽した場合をいうものと解するのが相当というべきである。もし損害を単に知っていたことをもって右悪意の意義を理解するならば、寄託物が全部滅失した場合においては倉庫業者は当然に損害発生を知っているのであるから常に悪意であることにならざるをえず、同条二項の規定はその意味を失うこととなるといわざるをえない。因みに、同法六二五条が運送人の責任の特別消滅事由に関する同法五八八条を倉庫営業者に準用し、同法五八九条が運送取扱人の責任の短期消滅時効に関する同法五六六条を運送人に準用していること、及び同法五六六条と同法六二六条とはその規定の仕方からもその目的とする趣旨からもほぼ同一の意義を有するものと理解されることから考えて同法五六六条三項に規定する「悪意」と同法六二六条三項に規定する「悪意」とは別異の意義に解釈すべき理由は見出せないというべきところ、同法五八八条二項及び同法五六六条三項にそれぞれ規定する「悪意」について運送人が運送品の毀損又は一部滅失のあることを知って引渡した場合をいうものと解する最判昭和四一年一二月二〇日民集二〇巻一〇号二一〇六頁が存する。従って同法六二六条三項に規定する「悪意」についても右判例と同様に解すべき余地がないとはいえないものの、当裁判所は前述した理由をもって右判例の立場に賛成しえない。

 そして本件全証拠によるも本件八朔みかんの毀損につき第一倉庫又はその履行補助者と認められるべき者が故意にそれを生ぜしめあるいは故意にそれを隠蔽した事実は認められない。

 よって被告の再抗弁一は理由がなく採用しない。