殺害の日時・場所・方法の判示が概括的で実行行為者の判示が択一的であっても殺人罪の罪となるべき事実の判示として不十分とはいえないとされた事例
殺人、死体遺棄、現住建造物等放火、詐欺被告事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷決定/平成11年(あ)第423号
【判決日付】 平成13年4月11日
【判示事項】 一 殺害の日時・場所・方法の判示が概括的で実行行為者の判示が択一的であっても殺人罪の罪となるべき事実の判示として不十分とはいえないとされた事例
二 殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が明示された場合に訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することの適否
三 殺人罪の共同正犯の訴因において実行行為者が被告人と明示された場合に訴因変更手続を経ることなく実行行為者が共犯者又は被告人あるいはその両名であると択一的に認定したことに違法はないとされた事例
【参照条文】 刑法(平7法91号による改正前のもの)60
刑法(平7法91号による改正前のもの)199
刑事訴訟法256-3
刑事訴訟法335-1
刑事訴訟法312-1
刑事訴訟法312-2
【掲載誌】 最高裁判所刑事判例集55巻3号127頁
刑法
(共同正犯)
第六十条 二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
(殺人)
第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
第二百五十六条 公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。
② 起訴状には、左の事項を記載しなければならない。
一 被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項
二 公訴事実
三 罪名
③ 公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。
④ 罪名は、適用すべき罰条を示してこれを記載しなければならない。但し、罰条の記載の誤は、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞がない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼさない。
⑤ 数個の訴因及び罰条は、予備的に又は択一的にこれを記載することができる。
⑥ 起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。刑事訴訟法
第三百十二条 裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許さなければならない。
② 裁判所は、審理の経過に鑑み適当と認めるときは、訴因又は罰条を追加又は変更すべきことを命ずることができる。
③ 裁判所は、訴因又は罰条の追加、撤回又は変更があつたときは、速やかに追加、撤回又は変更された部分を被告人に通知しなければならない。
④ 裁判所は、訴因又は罰条の追加又は変更により被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞があると認めるときは、被告人又は弁護人の請求により、決定で、被告人に充分な防禦の準備をさせるため必要な期間公判手続を停止しなければならない。
第三百三十五条 有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。
② 法律上犯罪の成立を妨げる理由又は刑の加重減免の理由となる事実が主張されたときは、これに対する判断を示さなければならない。