公職選挙法第二二一条第一項第一号の金銭供与の幇助の訴因に対し共同正犯の事実を認定するには訴因変更 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属

公職選挙法第二二一条第一項第一号の金銭供与の幇助の訴因に対し共同正犯の事実を認定するには訴因変更手続を要するか

 

 

公職選挙法違反被告事件

【事件番号】      最高裁判所大法廷判決/昭和37年(あ)第3011号

【判決日付】      昭和40年4月28日

【判示事項】      一、公職選挙法第二二一条第一項第一号の金銭供与の幇助の訴因に対し共同正犯の事実を認定するには訴因変更手続を要するか

             二、訴因変更命令には、いわゆる形成的効力が認められるか

【判決要旨】      一、被告人は甲が立候補予定者に当選を得しめる目的で選挙人等に金銭を供与する際、その案内や、選挙人を紹介する等の行為をしてこれを幇助したという公職選挙法第二二一条第一項第一号違反の幇助の訴因に対し、右甲との同条項違反の共同正犯の事実を認するには訴因変更手続を経ることを要する。

             二、刑事訴訟法第三一二条第二項により裁判所が訴因変更命令を発しても、検察官がこれに応じて訴因変更手続をとらない限り、訴因は変更されないと解すべきである。

             (反対意見がある。)

【参照条文】      刑事訴訟法312

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集19巻3号270頁

 

 

公職選挙法

(買収及び利害誘導罪)

第二百二十一条 次の各号に掲げる行為をした者は、三年以下の懲役若しくは禁錮こ又は五十万円以下の罰金に処する。

一 当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み若しくは約束をし又は供応接待、その申込み若しくは約束をしたとき。

二 当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対しその者又はその者と関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の直接利害関係を利用して誘導をしたとき。

三 投票をし若しくはしないこと、選挙運動をし若しくはやめたこと又はその周旋勧誘をしたことの報酬とする目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し第一号に掲げる行為をしたとき。

四 第一号若しくは前号の供与、供応接待を受け若しくは要求し、第一号若しくは前号の申込みを承諾し又は第二号の誘導に応じ若しくはこれを促したとき。

五 第一号から第三号までに掲げる行為をさせる目的をもつて選挙運動者に対し金銭若しくは物品の交付、交付の申込み若しくは約束をし又は選挙運動者がその交付を受け、その交付を要求し若しくはその申込みを承諾したとき。

六 前各号に掲げる行為に関し周旋又は勧誘をしたとき。

2 中央選挙管理会の委員若しくは中央選挙管理会の庶務に従事する総務省の職員、参議院合同選挙区選挙管理委員会の委員若しくは職員、選挙管理委員会の委員若しくは職員、投票管理者、開票管理者、選挙長若しくは選挙分会長又は選挙事務に関係のある国若しくは地方公共団体の公務員が当該選挙に関し前項の罪を犯したときは、四年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。公安委員会の委員又は警察官がその関係区域内の選挙に関し同項の罪を犯したときも、また同様とする。

3 次の各号に掲げる者が第一項の罪を犯したときは、四年以下の懲役若しくは禁錮こ又は百万円以下の罰金に処する。

一 公職の候補者

二 選挙運動を総括主宰した者

三 出納責任者(公職の候補者又は出納責任者と意思を通じて当該公職の候補者のための選挙運動に関する支出の金額のうち第百九十六条の規定により告示された額の二分の一以上に相当する額を支出した者を含む。)

四 三以内に分けられた選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)の地域のうち一又は二の地域における選挙運動を主宰すべき者として第一号又は第二号に掲げる者から定められ、当該地域における選挙運動を主宰した者

 

 

刑事訴訟法

第三百十二条 裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許さなければならない。

② 裁判所は、審理の経過に鑑み適当と認めるときは、訴因又は罰条を追加又は変更すべきことを命ずることができる。

③ 裁判所は、訴因又は罰条の追加、撤回又は変更があつたときは、速やかに追加、撤回又は変更された部分を被告人に通知しなければならない。

④ 裁判所は、訴因又は罰条の追加又は変更により被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞があると認めるときは、被告人又は弁護人の請求により、決定で、被告人に充分な防禦の準備をさせるため必要な期間公判手続を停止しなければならない。