債権譲渡担保権の実行中止命令は,民事再生法31条1,2項所定の各要件に欠ける無効なものであったから,民法467条所定の対抗要件具備のための通知として,有効なものであったと解するのが相当であるとした事例
東京高等裁判所判決/平成16年(ネ)第1828号
【判決日付】 平成18年8月30日
【判示事項】 中止命令は,民事再生法31条1,2項所定の各要件に欠ける無効なものであったから,民法467条所定の対抗要件具備のための通知として,有効なものであったと解するのが相当であるとした事例
【掲載誌】 金融・商事判例1277号21頁
【評釈論文】 金融・商事判例1286号166頁
民法
(債権の譲渡の対抗要件)
第四百六十七条 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。
民事再生法
(担保権の実行手続の中止命令)
第三十一条 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、再生債権者の一般の利益に適合し、かつ、競売申立人に不当な損害を及ぼすおそれがないものと認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、相当の期間を定めて、第五十三条第一項に規定する再生債務者の財産につき存する担保権の実行手続の中止を命ずることができる。ただし、その担保権によって担保される債権が共益債権又は一般優先債権であるときは、この限りでない。
2 裁判所は、前項の規定による中止の命令を発する場合には、競売申立人の意見を聴かなければならない。
3 裁判所は、第一項の規定による中止の命令を変更し、又は取り消すことができる。
4 第一項の規定による中止の命令及び前項の規定による変更の決定に対しては、競売申立人に限り、即時抗告をすることができる。
5 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
6 第四項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
主 文
1 原判決中被控訴人に関する部分を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、5億7760万0413円及びこれに対する平成14年5月24日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用(控訴人と被控訴人との間に生じた部分)は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。
4 この判決は、2項に限り、仮に執行することができる。
ただし、被控訴人において6億4500万円の担保を供するときは、その仮執行を免れることができる。
事実及び理由
第1 当事者の求める裁判
1 控訴の趣旨
(1)主文1~3項と同旨
(2)仮執行宣言
2 控訴の趣旨に対する答弁
(1)本件控訴を棄却する。
(2)控訴費用は控訴人の負担とする。
(3)担保を条件とする仮執行免脱宣言
第2 事案の概要
1 本件は、控訴人(旧商号・みずほアセット信託銀行株式会社、旧々商号・安田信託銀行)が、信販業務及びクレジット業務を営む被控訴人に対し、株式会社カリーノ(旧商号・株式会社壽屋。以下「壽屋」という。)と被控訴人との間の加盟店契約に係る立替金等請求権を壽屋から譲り受けたと主張して、その支払を請求したのに対し、被控訴人が、債務者対抗要件の欠缺及び相殺等を主張して支払を拒絶している事件である。本件訴訟提起後、控訴人の会社分割により、株式会社みずほアセットが本件請求債権を含む営業を承継したとして本件訴訟を引き受けたが、その後、控訴人が、合併により株式会社みずほアセットの権利義務を承継し、訴訟を承継した。